表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぶ~外れです! 賞品は魔王です!  作者: ピッピ
第7章 魔王冒険編
78/128

第78話 驢馬の旅

 クエストを受注したのは良かったが、何処に行けば良いか分からない。ラノベの主人公たちは道に迷ったりしないのが凄いのだが、俺はアリアに簡単な地図を描いてもらったが目的地に着ける気が全くしなかった、何せ地図には方位が書いてないのだ、西も東も全く無いから方向が分からない適当な地図だった。距離は歩いて5日なのだそうだ、俺と勇者なら4日位で着くだろうが、どっちに行けば良いんだ?


「じゃあ行きましょうか?魔王さん」

「おう、でもどっちに行ったら良いんだ?俺は方向音痴だぞ」

「俺も分からないっす。誰かに聞きながら行けばその内着くんじゃないッスかね?」

「そうだな、ギルドの受付に聞いてから行って見ようか」


 俺と勇者が背嚢を背負って出かけようとしていたら、アリアとココも大きな袋を担いでついて来た。一緒に行く気なのか?


「お前らも行くのか?」

「ああ、私たちも一緒に行く」

「危険なんだろう?」

「それでも一緒に行く!」


 昨日は危険だからこのクエストは受けないって言ってたんだがな、2人は戦力になりそうにないから別に居なくても構わないのだが。


「なんで?」

「あんた達と居ると儲かりそうだからね。あいつ等売った金で来月分の家賃も払えたから、このクエストが失敗しても平気なんだよ」

「そうか、お前らが来ると勇者がやる気を出すから丁度良いけどな」

「へへ、その通りっす。アリアやココが応援してくれるならオークは瞬殺っす」


 アリアが方向を知っているので付いて行く事にする。俺は方向音痴だし、勇者はいい加減な男なのでアリア達が居てくれると助かる。道々色々話していたら、今回着いて来たのは自分達を試す意味も有った様だ。今までの様に安いクエストをこなして生きていても、ただ年を取って行くだけなのに気が付いたのだそうだ、良い暮らしをしたければ何処かで大きな事をやるしかないって気に成ったらしい。


「魔王さん、嫌そうな顔してるッスね」

「ああ、背中が蒸れて気持ち悪い。背嚢背負って歩くのダルイ」

「仕方ないっすよ、ここにはケロちゃんが居ないっすから」

「馬車買おうぜ、馬車」


 重くて暑いのに嫌気がさした俺は馬車を買う気に成った、幾らするか知らないが安い奴なら買えるかもしれないのだ、聞いてみるだけならタダだからな。それに乗れなくても荷物だけでも積めれば相当旅が楽になるはずだ。リアカーみたいな奴無いのかな?


「馬車なんて買える訳ないよ、それに馬は凄く金が掛るんだ」

「そうなの?じゃあロバが曳く奴とか犬が曳く奴無いのかな?」

「なんかドンドン小さく成ってるっすね。可愛い大八車に成りそうっす」

「リアカー買ったらお前が曳けよ、勇者だから馬よりパワーがあるだろ?」

「そりゃあ曳けるっすけど、かっこ悪いッスよ」

「くそ!馬車曳くのが趣味の動物とか居たら良いのにな!」

「お~、あの鳥型の魔物っすね!たしか名前が・・・」

「こら黙れ!それ以上喋るな!不味い事になる」

「誰も読んでないから平気っすよ(笑い)」


 馬車を喜んで曳いてくれる魔獣は居ないのでアリアに聞いて荷台を売っている店に行って見た、この世界の事は何も知らないのでアリア達がナビ替わりなのだ。そして連れて行かれた店は雑貨屋みたいな所だった。色々な物が乱雑に置いてあった。店に入って店員さんに聞いてみる。


「人間が引っ張れる馬車有る?」

「人間の曳く馬車?荷車の事か?」

「荷車が何か知らないけど、馬が曳くより小さい奴が欲しいんだ。背中の荷物4人分乗せられるヤツ」

「ふ~ん、冒険者なんだな」


 この店はドワーフがやってる雑貨屋だった。ドワーフは力が強くて手先が器用なので鍛冶屋とか雑貨屋とかをしてる人たちが多いのだ。ドワーフは背が低いので馬鹿にする人間達も居たが、俺はドワーフ達が好きだった、凄い働き者で手先が器用なのだ。それに俺はドワーフ族の女王のミーシャとはマブダチなのだ。


「これ位が良いと思うぞ、ロバが曳くタイプの奴だ。金は有るのか?」

「へ~、結構大きいな。幾らだ?」

「荷車が40万、ロバは別売りで10万だ」

「買った!」

「ちょっと待ちなよ!いきなり何買ってるんだい!」

「?・・・」

「値切りなよ!言い値で買う馬鹿は居ないよ!」

「いいさ、ドワーフは正直な奴らなんだ」

「ほう、分かってるじゃねーか。気に入った。40万でロバと餌もやるよ」


 俺とドワーフの親父はガッチリと握手をして代金を支払った。良い奴ってのは黙っていても負けてくれるのだ、値切らないと負けない奴は悪い奴なので次から買わないだけだ。これが昭和の時代の商売のやり方なのだ、物だけでは無く信用も同時に売っていたから日本は発展したのだよ。今の詐欺商法とは次元が違う商売の仕方なのだが今の連中には分からないだろうな。


「なんか、この驢馬カッコ良いッス!」

「うむ、無駄にカッコ良いロバだな」


 ドワーフの親父がおまけにくれた驢馬は凄くかっこ良いロバだった。毛が長くて純白なのだ、角を付けたらユニコーンって言っても通用しそうな位カッコ良い。俺はロバは小さいのかと思ってたらそうでも無いようだ、馬より小さいが大人2人位乗せられそうな程の大きさだった。まあそれでも驢馬だから何でも食べるし、馬より遥かに頑丈なはずだ。荷車は幅1.7メートル長さが3メートル程だったので俺達4人の荷物を積んでも余裕が有った、疲れた時は2人位は楽に乗れるサイズなのだ。


「ありがとう、良い買い物が出来たよ」

「あんたみたいな気持ちの良い客なら大歓迎だ」


 ドワーフの親父に金貨4枚を渡して取引成立だ。親父は機嫌よく俺の背中をバンバン叩いていた、凄く痛いが我慢した。おまけに岩塩とか水樽とかをくれたから愛想良くしたのだ。

 ロバに荷車を曳いて貰って旅を続ける、背嚢が無い度はとても楽だ。最初は文句を言っていたアリアも今ではご機嫌だ。疲れたら荷車に乗って休めるからだ。


「凄く快適だね、荷車って便利良いんだね」

「これのお陰で楽出来るし、金目の物を見つけたら積めるからな。元は十分取れると思うぞ」

「私は少し怖い」


 ココは驢馬と相性が悪い様だった、馬は人を見るから、自分より下と思うという事を聞かなくなるのだ。ここら辺が牛と違って誰にでも世話が出来ない原因だな。頑丈な驢馬君だったが流石に俺達4人が乗ると重すぎるのか歩かなくなった、女が2人乗る分には平気で歩くので、俺と勇者は歩きっぱなしだった。俺の歩く速度は時速5キロなので一日の移動距離は40キロだ、普通の旅人は荷物を背負っているので一日30キロ程度だから3日で目的地に着く予定だった。


「おい、幌馬車にしようぜ」

「どうやって?」

「ワンタッチテントを荷台に乗せたら成るんじゃないかな」

「載せてみるッス」


 荷台に載せていた荷物を全部下してテントを広げてみた、3人用の小型テントなので丁度荷台にのるサイズだ。中に荷物を載せて風で飛ばない様にしたら幌馬車の出来上がりだ。中は狭いので2人寝れば一杯になるが雨露がしのげて虫も入らないので快適だ。


「お~豪華になったッスね」

「これ付けて売ったら儲かりそうだな、売らないけど」

「良し、今日はここで野営だな、見張りと休憩を交代でやろうぜ」


 驢馬のお陰で距離を稼いだ俺達は、道から少し外れた場所で野営をする事にした。驢馬はそこら辺の草を食べるので放しておく。後は岩塩と水をやっとけば平気な様だ。勇者とココに晩飯を狩に行かせて、俺は竈を作って晩飯の用意をした。アリアは薪を集めに行っている。宿屋に泊まれない時はこんな感じだが、勇者のお陰で水や獲物には困らないし、驢馬のお陰で旅が劇的に楽になった。アリアやココはこういう生活は苦にならないみたいだし、以前より楽で快適なんだそうだ。この世界の女は逞しくて素晴らしい。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ