第73話 王子の冒険2
昨日は大雨警報やら避難勧告とか携帯やパソコンに出て気味が悪かったです。
ネットでは話題になってませんが雷が凄かったんですよ、夕方から夜まで空が光り輝いてました。まあ私の住んでるところは何も無かったですが、自然が牙を剥くと人間は無力ですね。
次の日は王子に街の外を見せる事にした。お供はケロちゃんだ。久し振りのケロべロス犬車に王子とサキュバスの族長サキちゃん護衛にトランザムを連れてこの世界を案内する。俺が黒のジャージ、王子は白、サキュバスは赤、トランザムは青のジャージを着ている。それぞれが好きな色を着てるのだが、記念撮影をしながら俺は思ったのだ、黄色が足らない・・カレーを食う黄色が居ないとバランスが取れない気がする。まあ実際には緑とピンクも居ないのでバランスは悪いのだが、シルフィーネに激辛カレーを食わせるからと言って無理に護衛をさせる事にした。何時もは赤いジャージだが今日は黄色のジャージを用意してプレゼントしたら喜んでいた。これで戦隊ものみたいになった、後は悪の組織が出てくれば良いのだが無理だな、何せ俺達こそが魔族で悪役っぽいからな。
「ケロちゃん、ゴー!コロシアムまで頼む」
「バオン!ガオン!グオン!」
久しぶりの運動を喜んでいるケロべロスに犬車を引いてもらいコロシアムを見学に行く、俺が金儲けして更に周りの国と友好関係を築く為に建てた物だ。
「魔王、この馬車浮いているぞ!何故だ?」
「知らん!多分魔法じゃないか?」
この王子は詰まらない事ばっかり気にするのだ、浮いてる物は浮いてるのだ、気にしてもしょうがないではないか、太陽が明るいからと言って気にしてどうなるものでも無いのだ、有るがままに受け入れるのが大人って奴だ。
「あれがコロシアムだ、1万人収容できるんだ。周りが宿泊施設や食堂だ」
「ほう、あれが競技場か、あれで儲けたり、国民に娯楽を与えたりするのだな」
「そうだ、予想以上に儲かったし俺の評判も良くなったぞ、アレは王子の国にもお勧めのアイデアだと思う。次行くぞ、ケロちゃん次はドワーフの国に頼む」
時速80キロ程でケロべロスが疾走している、俺達5人を乗せた犬車を曳いているのに素晴らしいスピードだ流石幻獣化け物じみた力と持久力だ。ケロべロス単体なら200キロ位出そうな感じだ。宙に浮いてるがフワフワしている訳ではない、ホバークラフトや飛行機みたいに結構ゴツゴツした乗り心地なのだ、まあエンジンが無いから静かで快適なのだが。
「次は何を見せてくれてるのだ魔王?」
「次はドワーフの国だ、俺が初めて仲良くなった連中だ、食料に困ってたから俺の領地を貸して食料を生産してるんだ。」
「ほう、食料支援による友好関係かそれは結構強力な関係だな」
「そうだな、最初はそうだったが今ではすっかり仲良くなって友達みたいなもんだな」
「魔王様の番ですよ」
「パス1」
「ズルいぞ魔王、パスしたら私が負けるではないか」
「ふん、何とでも言え雑魚めが」
犬車の中は広いので5人でトランプをしてるのだ、今やってるのは7並べだ。ドワーフ達にトランプやオセロを渡しているのでドワーフの国ではトランプが盛んに行われている。簡単に負けたりするとカッコ悪いので今練習してる所だ。あの国に行くと必ず王女のミーシャに勝負を挑まれる事になっている。もはや歓迎会の一部になってるのだ。この世界は娯楽が少ないのでこういう遊びは瞬く間に広がって行く、そしてドワーフや魔族なんかは頭が良いから直ぐに強くなってゆく、そのうち俺のアドバンテージも無くなって負けだすだろう。
「ほれ着いたぞ、ここが俺の別荘だ。まあ温泉旅館だけどな」
「なんだ小さいな、普通の家ではないか」
「魔王城みたいにデカいと階段上がるだけで疲れるじゃないか、2階建位が一番良いんだよ」
別荘に着いたらドワーフ族の女王おのミーシャが待ち構えていた。久し振りなのでここまで会いに来ていた様だ。
「久しぶりじゃ魔王、元気そうで何よりだ」
「おうミーシャ久しぶり。元気そうだな」
「どの位元気か勝負してみるか?」
「いや、負けるから嫌だ」
「つれないのう・・」
ミーシャが悲しそうな顔をするのでしょうがないから相手をしてやった。ドワーフに相撲を教えたのは俺だがミーシャにも他のドワーフにも一度も勝った事が無いのだ。ドワーフは背が低いが力が強くて重心が低いので物凄く相撲が強いのだ。ミーシャに一度も勝てずにボロボロにされたので仕返しにシルフィーネを出場させる。
「シルフィーネ、遊んでやれ」
「はい、魔王さま」
土俵中央にシルフィーネが腕組みして立っている。あれが王者の雰囲気って奴なのか、周りのドワーフ達が一歩も動けない。痺れを切らしたミーシャが命令してドワーフ親衛隊のドワーフがシルフィーネに向かって行ったが、顔を鷲掴みにされて地面に叩きつけられて気絶してしまった。
「さてミーシャ、宴会やろうぜ」
「うむ、そうじゃな。魔王の畑で採れたジャガイモが沢山有るのだ」
「そうか、それじゃ俺がジャガイモ料理を作ってやろう」
取れたてのジャガイモが有ると言うので俺の出番だ、相撲は駄目だが料理ならば負けないのだ。トランザムやサキちゃんに手伝って貰ってドンドン皮をむいて行く、最初はフライドポテトだ。
「ミーシャの所はソーセージが有るよな?」
「うむ、うちの腸詰は美味いぞ、持って来ておるぞ」
「よし、それでジャーマンポテトを作ってやろう。ビールに良く合うぞ」
フライドポテトを2人に任せ、王子とシルフィーネに手伝わせ今度はジャーマンポテトだ、ビールに合うと言ったのでミーシャは料理を覚えたい様だ。ドワーフ達は酒好きが多いからな。どっさり作ったフライドポテトとジャーマンポテトで宴会開始だ、魔王と王女の宴会としては変だが、俺とミーシャはこんな付き合い方なのだ。
「さあ食えミーシャ」
「美味いの~、簡単で美味い!ビールや酒にぴったりだ!」
ドワーフ達との宴会は大いに盛り上がった、そして俺の土地で出来たジャガイモは美味かった。このジャガイモのお陰で今年の冬はドワーフ族は豊かに越せるのだそうだ。ミーシャから凄く感謝されてお土産に宝石を色々貰ってしまった。
「魔王の外交って凄いな」
「そうか?飯食ってるだけだぞ」
「王自ら食事を作ってもてなすのは異例だが、効果的だと思う」
「そう言われると、そんな気もするな」
「料理外交、私も帰ったらやってみよう。幸いメイド喫茶で練習させてもらったからな」
その後魔導士の街に行って竜の魔石を一つ長老に分けてやり。獣人の国では闘技大会の時のDVDをあげたりして両方からとても喜ばれた。
「成程、相手によって色々と変化を付けて外交してるのだな、魔王は」
「そりゃそうだ、相手の興味の無い物持ってても喜ばないだろ」
この王子はとても真面目だった様だ、帝王学を俺から学んでいる様だった。王子の国は人口100万程度のちっぽけな国なので、周りの国と上手くやらないと色々不味いのだ。おまけに王位継承争いまで起こったから政治的に今は不安定なのだろうな。
「色々勉強したようだな王子」
「うむ、学ばせて貰った。ありがとう魔王」
「じゃあ一番大事な事を教えよう。これだけは忘れるなよ」
「一番大事な事?信頼とかか?」
「武力だ!その気になれば周りを殲滅出来るだけの力が必要だ」
「夢がないな・・魔王」
「夢は食えないからな」
そして王子は元の世界に帰って行った、王子は真面目で頭が良いから良い国を作りそうだ。駄目な時は俺の所に逃げてくれば良いのだ。「気楽に頑張れ!」と言って国に送ってやった。