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ぶ~外れです! 賞品は魔王です!  作者: ピッピ
第6章 魔王護衛をする
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第66話 変装偵察員

 別荘の守りは万全だ。後は俺達がこっちで何気なく暮らせば良いだけだ。普通なら襲われる危険が有れば緊張して動きがぎこちなくなったりして監視者にバレるのだが、俺達には緊張感が全然無かった。なにせ俺達は魔族だから人間を恐れる事が無いのだ、勇者はこっちでは化け物並みに強いし俺はサキュバス4人に守られているしな、王子は馬鹿だから平気みたいだった。それどころか喫茶店の仕事を気に入って頑張っているのだ、王族の癖に働き者だった。


「忙しいのも慣れたッスね!」

「そうだな、何でも慣れるもんだな~。人間って凄いよな」

「この仕事は面白いのだ!お客さんも喜んでるからやりがいが有るのだ」


 メイド喫茶は毎日忙しかった、地上で一番綺麗でエロい美女が4人いるので当然なのだが。サキュバス達は紳士諸君が毎日大勢やって来るのでご機嫌だし、俺達は忙しいが週休2日で残業ナシなので平気だった。それに凄く儲かっていたのだ。


「そう言えば魔王さん、俺の給料多く無いっすか?」

「なんでだ?月20万だから普通だろ?」

「それは普通っすけど、家賃も食費も要らないから実質30万っすよね」

「良いんじゃないか、そんな細かい事気にするな。それに儲かってるからボーナス出すぞ!」

「うひゃ~!ボーナスって憧れるっす!人生初ボーナスッス!」


 この喫茶店元々の料金が普通の喫茶店の2倍の値段だから儲けが凄い事に成っていた、普通の喫茶店は原価率が3割だが俺の店は原価率が15%なので水商売並みに儲かるのだ。このまま儲けていると税金がガッポリ取られるので従業員に分けるのだ。ついでに税金対策で郊外に店を建てようかと思っている。こっちで借金をして税金対策するのだ。


「へ~、魔王さんって色々考えてるッスね。経営者って大変っす」

「まあな、社内留保なんかして従業員に配らないクソ企業が多いからな。人間達に対する嫌がらせみたいなもんだな、魔王の店は人間より気前が良いって笑えるだろ」

「いや~、俺は魔王さんの子分で良かったッス。儲かったら沢山給料くれるって素晴らしいッス」

「あ、サキュバスからの合図だ・・・」


 サキュバスからの不審者来店の合図が有ったので、料理をカウンターに出すついでに店内を見渡してみると又偵察員が来ていた、ご丁寧に眼鏡を掛けたり髪の毛の色を変えたりして変装しているが俺には通用しない。身体の骨格とバランスが普通の民間人とは違うから直ぐ分かるのだ。それに又サキュバスを無視して店内を観察してるから不自然なのだ。


「おい、サトウ、また来てるぞ。5番テーブルだ」

「了解っす、軽く見てみるッス」

「髪の毛の色と眼鏡で変装してるからな」

「マジっすか。結構芸が細かい連中っすね」

「・・・・?・・・」

「どうした?」

「全然見分けがつかないッス、つ~か前の姿も覚えてないッス」

「そうか・・まあそういう事もあるさ・・」


 この勇者は駄目駄目な奴だった。綺麗なお姉さんは直ぐ顔を覚えるのに男は全然覚えないのだ。まあ俺も他人の名前や顔を覚えないから強くは言えないがな。偵察員達は今回も30分程で自然に出て行った、前回と同じ時間だった。きっと計画に30分偵察とか予定を立てて行動してるのだろう、凄く几帳面な作戦参謀がいるみたいだな。その後は何事も無く何時もの様に閉店して皆でお茶を飲む時間になった。


「お疲れ、皆聞いてくれ!」

「昼間の連中のことですか?」

「そうだ、今回危険を承知でわざわざ来たのは最終確認だと思う」

「最終って事は・・つまりもう直ぐって事ッスか?」

「そうだ、今度の別荘行きが一番危ないと思う」

「俺は早く来て欲しいッスね!そろそろ頭に来たッス」


 前回の店への偵察は王子が本当に店に居るかどうかの確認だろうし、今回の偵察は王子がまだ居るかどうか、すり替えられていないかどうかの確認だと思う。つまり実行する直前の最終確認だって事だと思う。そこで従業員達に次の別荘では襲撃が有るつもりでいる様に注意した訳だ。


「しかし、変装されると分からないモノっすね」

「そうだな、目立たないのが一番だが、逆に目立つ部位を作って他を誤魔化す方法もあるな」

「目立つ所を作って誤魔化す?」

「お前が直ぐに引っかかる方法が有るだろう?胸を強調してそこだけ見せて顔を見ない様にするとか、色々なアクセサリーを付けて他の所から視線を外すとかだ」

「成程、女が良く使う方法っすね!あれは色々と騙されるッスよ(笑い)」


 直ぐに女に騙されそうな勇者はやっと変装や擬態について納得したようだ。サキュバス達は当然そんな事は知っていた。王子は何やらメモをして暗記してる様だった。


「もしもし。男爵。今良いか?」

「どうぞ魔王様、今ネットを見ていた所です」

「今日偵察員が店に来た、襲撃は近いと思う。警戒を厳にしてくれ」

「了解しました、今晩から24時間体制をとります」

「頼んだぞ男爵」

「あっ魔王様。ブックマーク付けときましたから」

「うえ~!何で知ってるんだ?俺だけの秘密なのに!」


 サキュバスと風呂に入るのも、魔族や人間に罵られるのも平気だったが、小説を読まれるのは恥ずかしかった。大体小説って言うのは文学でもナロウでも全部作者の妄想なのだ、ノンフィクションって言っても作者フィルターが掛かってるので厳密には違うのだ。事実だけを乗せてるのは小説ではなくて実験データ位なものなのだな。だから小説を読むと作者の知能レベルが直ぐに分かってしまうのだ。俺が馬鹿なのがバレたかも知れないがここは一発誤魔化すしかあるまい。


「で・どうだったかね?誤字脱字が多いのは置いといてだな・・」

「そうですね、悪人が直ぐ居なくなる所が魔王様らしい話ですな。敵対すると死が待っていますよね、わざわざボウフラが蚊になるのを待って無い所が魔王様らしいです」

「そ・・そうか・・貴重な意見ありがとう」


 言われて見ればその通りだった、自分で書いた小説なのに中身は全然覚えてないが、俺の小説に出て来る悪役は直ぐに退場するのだ。俺は武器を向けて脅したりはしないのだ、武器を抜いたら即攻撃なのだ。でもな~やっぱり小説的には悪役が生き残ってドンドン悪い事をして見方を殺しまくってくれた方が盛り上がるよな~、でもそれって主人公が馬鹿なだけだしな~。まあ趣味で書いてるだけだから良いかな、どうせ底辺作家モドキだしな。


「どうしたんですか?難しい顔して?」

「うむ、何でもない。決して小説の事なんか考えてないから」

「おう、魔王さんの小説って呼んでみたいっすね!意外と真面目な奴とかじゃ無いっすか?」

「私はメルヘンチックなファンタジーだと思いますわ!」

「私はロボット物のSFだと思うのだ!」


 小説の事を言われると恥ずかしいので飯を作って誤魔化す事にする。こいつらは胃袋に支配されているので食い物で誤魔化すのが一番なのだ。


「さて今日は特別料理でも作ろうかな~、明日は襲撃が来そうだしな」

「特別料理って何ですか?新しい奴ですか?」

「お前らが好きな揚げ物だ。そしてサキュバスが好きな酸っぱい感じの物だな」

「お~!分かったッス!酢豚っすね」

「惜しい!チキン南蛮だ」


 それから俺は小説から話を逸らすべくチキン南蛮作りに精をだした。特性のタレだけでは面白く無いのでタルタルソースも作ってみた。何時もとり天なので偶には違った味付けも良いだろう。


「美味しいです、魔王様。ちょっと酸っぱい所が素敵です」

「美味いッスね!タルタルソースもいけるッスよ。これを喫茶店のメニューにしたら売れるッス!」

「嫌だ!」

「え~、何でですか?」


 揚げ物は冬は良いが、夏は暑いから嫌いなのだ。いくら冷房が有るとはいえ厨房で揚げ物すると暑いのだそして俺は暑いのは嫌いなのだ。


「も~、わがままッスね!こんなに美味しいのに」

「当たり前だ俺は魔王だぞ、わがままの塊だぞ」


 さてさて飯も食ったし後は山の別荘に行って迎撃の準備をするだけだな。迎撃するだけなら簡単だな、男爵と勇者がいれば特殊部隊上がりの人間など何人いても関係ないな。


「おい勇者、明日は働いてもらうぞ」

「任せて欲しいっす、ボーナス出るなら幾らでも消してやるッス、何なら今からあいつ等全員消しましょうか?」

「消すだけじゃ駄目なんだよ、代わりが来るだけだからな」

「ややこしいっすね、俺ならあいつ等すぐ消せるのに・・」


 




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