第64話 魔王国へ帰る
十分餌を巻いたので俺は国に帰って来た。そろそろ連中が動く頃合いなのだ、そこで今回の荒事に使う魔族が必要に成って来たので帰還したのだ。
「う~す!男爵。そっちはどうだ?」
「お久しぶりです。魔王様。こっちは暇すぎて退屈です」
「ふっふっふ、面白い仕事が有るのだが・・興味は有るかね?」
「異世界がらみですね・・魔王様」
「その通り。直ぐに王都に来てくれ」
セイロン男爵は頭が良いので話が早くて助かる、おまけに見た目も人間と変わらないので俺の世界でも通用する。ただし戦闘力は魔族の中では低いらしいので、戦闘員も2人程欲しい所だ。シルフィーネとかの戦闘力は物凄いがあまり周りを破壊されても困るし連れて行くなら軽い方が良い。そこで俺は武闘大会で活躍した昆虫族の戦士2人を連れて行く事にした。彼らは軽量だが外骨格なので非常に強くて頑丈なのだ。
「お呼びですか魔王様」
「ああ、ちょっと手伝って欲しい事が有るんだ。人間相手の戦闘なんだが」
「魔王様のご命令なら何処でも何時でも参ります」
「おう・・ありがとう」
魔族は上下関係がハッキリし過ぎているのが困った所なのだ。魔族は魔王の命令には絶対服従なのだ、俺はこれが嫌なのだ。嫌なら嫌で良いのだ興味が有る他の者を連れて行けば良いだけだからな。
「何か欲しい物は無いかな?協力してくれたお礼で融通するんだが?」
「我らは昆虫族ですから、欲しい物は一つだけです。魔王様」
「え・・・もしかして樹液とかスイカとか砂糖水とかかな?」
「砂糖水をくれるなら我らは死ぬまで戦うでしょう!」
「そ・・そうか・・砂糖水やハチミツなら幾らでもやるから、死ぬまで頑張らなくても良いからな」
昆虫族は凄く安上がりな種族だった。角砂糖をあげると喜んで働くのだ。砂糖水を作るためにコップをあげたら宝物の様にしまいこんでた。これに水を入れて角砂糖を溶かせば何時でも好きな時に砂糖水を飲めるのだ。ただし彼らは表情が変わらないので見た目では喜怒哀楽が全く分からない、目も複眼だから何処を見てるのか分からないのだ。
「ところでお前達名前は?」
「我々には名前はありません、匂いで判別しますから」
「へ~、フェロモンってやつか?確か簡単な情報も伝えられるんだよな」
「はい、魔王様」
この2人名前が無いと分かりずらいのだ、身長は170センチ位で人型なのだが外骨格なので甲冑みたいに見えるのだ。良く見ると一人は黒くてピカピカしていて、もう一人はやや茶色っぽい感じだった。そこで黒い方はクワちゃん、茶色が入ってる方はカブちゃんと呼ぶことにした。まあクワガタとカブトムシをイメージしただけだ。
「それじゃ君がクワちゃんで、そっちがカブちゃんね」
「おお~!魔王様に名前を頂けるとは光栄であります」
2人の強さは大会で見てたので知っていた、凄く動きが早くてパワフルなのだ。そして外骨格はかなり頑丈で大剣を弾く位の硬さが有った。彼らの弱点は火と冷気なので今回は大丈夫そうだった。それに今回は山の中の森林地帯なので彼らは更に有利そうだ、木の上や林の中に潜むのは彼らの得意技なのだ。それに彼らは何だかカッコイイのだ、生き物なのだがロボットのようにもアンドロイドの様にも見えるのだ。多分車を持ち上げる位のパワーは有るので、機械と言っても俺達の世界の人間は信じるだろう、むしろ昆虫族と言うより真実味が有るだろうな。
「久しぶりだな魔王!」
「おう、トランザムか。久しぶりだな。また胸が大きくなったんじゃないか!へっへっへ」
「おう、旨い物ばっかり食べてたからな。ブラジャーが合わなくなったぞ」
「そりゃ太ったんじゃないのか?」
「魔王が居なくなったから皆ダラケテ太っているのだ」
そう言えば何時もならサキュバス達が迎えてくれるのに今日は誰も来てないな。忙しいのかな?
「そう言えばサキュバスが一人も居ないじゃないか。何処かに行ってるのか?」
「魔王が帰って来たから急いでダイエットに行ったぞ」
「そんなに太ったのか?たった2か月だぞ」
「大した事無いと思うのだがな、サキュバス達には耐えられないらしい」
その日の夜には汗びっしょりになったサキュバス達が俺の部屋に集まって来た。確かに皆ふっくらしてるな。引き締まった体とは言えないな、俺の世界の普通の可愛い女みたいだ。
「魔王様申し訳ございません、ちょっと気を抜いたらこんな姿になってしまいました」
「まあ良いんじゃないか、ぽっちゃり系って奴だな」
サキュバスは男が居ないと直ぐに駄目になる種族だった様だ、彼女達は男から見られると頑張るのだ、そしてもっと見られようと努力する様だった。俺と勇者が居なくなってからは自堕落な生活をしてた様だ。そこで俺は向こうの世界で頑張っているサキュバス達の画像を見せる事にした。あと一か月もしたら交代要員を送るつもりなのだ。
「サキュバス全員集合~!」
「「「は~い!!!」」」
「今から向こうの世界で頑張っている皆さんの仲間の画像を見せます」
「お~向こうの画像とは珍しいですわ。アニメとは違うのですね」
「これがメイド喫茶です、サキュバス達は沢山の紳士に毎日見られながら頑張ってますよ~」
サキュバス達にメイド喫茶の画像を見せて解説する。俺の店は毎日大繁盛なのだ、当然毎日お客さんに見られ捲くっている。最近では貢物を持ってくる紳士達も大勢いたのだ。サキュバス達は毎日見られることにより以前より一層綺麗になっていた。
「まあ!彼女達綺麗になってます!」
「口紅や服装が毎日違ってます!」
「負けられませんわ!」
向こうで綺麗になって行く仲間を見てやる気を出したサキュバス達はそれからはハードなトレーニングを開始した、涙ぐましい努力でダイエットを始めたのだ。しかし俺としてはプリプリしてるサキュバスも好きなので程々にして欲しいところだな。ふわふわの胸やムチムチの太腿も良いと思うんだがな~。
「お前ら程々にしとけよ、ムチムチが好きな紳士も多いからな。特に俺は痩せた奴よりフックラの方が好きなのだ」
「早く向こうに行きたいです!紳士達を悩殺したいですわ!」
「あと一月で交代だから日本語の練習なんかもしとけよ」
サキュバス達に付き合ってサウナやダイエット食を食べている所に男爵が現れた。こちらも汗びっしょりで帰って来た。物凄く急いで帰って来た様だ、よっぽど暇を持て余していたのだろう。丁度良いのでカブちゃん達3人に状況を説明する。今から行く俺の世界の事や、作戦は山の中で行われる事。最大で10人程の敵がいる事、相手は人間だがこちらの人間よりも危険な武器を持ってる可能性がある事等だ。
「成程、こちらの人間よりも危険なのですね?」
「そうだ。武器が無ければこちらの人間よりも弱いが武器が強力なんだ。ドワーフの大盾を壊す武器が簡単に手に入る世界だからな」
「つまり武器を使う前に片付ければ良いのですね?」
「そういう事だ、隠密行動が必要だ。それに同時に無力化が好ましい」
「むふ~、やりがいが有りますな!魔王様」
「面白そうだろ?男爵」
男爵が楽しそうに笑っていた、中々邪悪な笑いだった、敵に回すと魔族って怖いなって思ったのだが、俺の方がもっと邪悪で怖かったってサキュバス達が言っていたので俺はショックを受けたのだった。