表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぶ~外れです! 賞品は魔王です!  作者: ピッピ
第6章 魔王護衛をする
63/128

第63話 餌まき

 さてここで護衛の話を少ししよう。要人護衛ってのは難しい。ある程度の腕が有るプロが殺す気なら護衛は無理だ、これはテロも同様だな。しかし今回は誘拐目的の様なので難易度がかなり下がる、なにせ直接相手が手の届く範囲に来て犯行して逃げなくてはいけないからだ。要人が一応王族なので向こうもプロを出して来るだろうから更に難易度が下がるのだ、プロは大体やり方が読めるので対応しやすいって事だな。


「でもプロの方が守りに難く無いっすか?」

「腕は素人より上だが準備に時間が掛かるから対応しやすいんだ」

「準備っすか?」

「そう。プロは上手くやらないと報酬が貰えないから十分な下調べをするんだ。だって報酬を貰うのが目的だからな」


 俺は喫茶店の従業員達に丁寧に説明してゆく、要人警護なので俺一人では無理だからだ。全員の協力がないと24時間人を守るのは難しい。


「魔王様ならどのように誘拐しますか?」

「俺なら10人程度のチームを送り込むな。そして現場の偵察を最低2週間。実行犯は4人で逃走用車両やアジトの確保に4人って所かな、残りの2人は非常時のバックアップだ」

「魔王さんって元誘拐犯っすか?何か慣れ切ってるみたいッス」

「何言ってるんだ、俺はしがないサラリーマンだったんだぞ」

「怪しいッス、ヤクザの時も慣れ切ってったッス。絶対何か変な仕事してたハズっす」

「これは全部本で読んだ知識だ。俺は善良な庶民だからな」


 喫茶店の営業は通常営業だ、物凄く忙しいが皆で頑張ってやっている。お客さんが物凄く多いので安全なのだ。満員の店内で誘拐をする奴はいない。営業時間中は気を抜いて働けるので楽だった、王子も頑張って皿を洗っている、最近では勇者担当のカレーやパスタも上手く作れる様になって来た。やれば出来る子なのだ。


「どうだ魔王?カレーの盛り付けが上手くなったぞ」

「当たり前だ、ご飯にカレーを掛けるだけじゃないか。」

「ぬ~、皿を汚さない様にカレーを掛けるのが結構難しいのだ」

「魔王さん、サキュバスからの合図ッス」

「了解」


 店に怪しい人間が来たようだ、怪しい人間が来たら知らせる様に言っていたサキュバスからの合図が有った。俺は料理をカウンターに運ぶついでに店内を見て相手を特定する事にした。


「サトウ、3番テーブルの2人が偵察要員だ。顔を覚えとけ。絶対相手を直接見るなよ」

「分かったッス」


 見かけは物凄く普通の外国人だ、目立たない様に中肉中背、全く害がない様に見える外見と雰囲気。俺はあいつらがプロだって事に直ぐに気が付いた。それも結構腕利きだな、元は何処かの軍人かな?間違いなく犯罪組織の人間じゃ無いな。銃は持って無い様だ上着の着こなし方で分かるのだ、なろう作家は伊達じゃ無いのだよ。無駄に知識と経験は有るのだ。


「本当にあいつ等偵察要員っすか?何だか普通っす」

「間違いない、あいつ等サキュバスを全然見ない。厨房の小僧をチラ見してるからな」

「成程、変っすね」


 彼らの行動は彼らの国では目立たなかったかも知れないが、俺の店では反対に目立つのだ。この店のお客さんはサキュバス目当てで来ているのでサキュバスをチラチラ見たり、全身をガン見するのが普通なのだ。

それに男ならサキュバス4人を無視したりは絶対にしない。他にもっと重要な事が無い限り。

 問題の2人は30分程で普通に帰っていった。普通が物凄く怪しいとは思わないだろうな、可哀そうな奴らだ。他の国の他の店なら目立たなかったのにな。まあ実際可哀そうな奴らだった、魔王と勇者が厨房で料理してウエイトレスが全員サキュバスの店なんてこの世界にはここしか無いのだからな、運の悪い奴らだ。


「お疲れでした~魔王様」

「おう、お疲れ」

「魔王さん、昼間の連中なんですか?」

「ああ、それか。それじゃあCTRとFOVの標準的なやり方について教えとくわ」

「CTR?・・・FOV・・・?」


 仕事が終わって皆でお茶を飲む時間に成ったので昼間の偵察員の行動や、今後の彼らの行動の予測を伝える事にした。昼間の偵察員はバリバリの現役要員みたいなので奇策は使わないだろうと思う。安全で確実な方法を取るはずなので解説がしやすかった。


「CTRって言うのは近接偵察って言って、相手のすぐ近くで偵察する行動の事だ。直接自分の目で見て色々な情報を得る為にするんだ。昼間に来た2人がそれだな」

「CTRは分かったッス、FOVって言うのは何ですか?」

「FOVはCTRをしやすい場所に着くる拠点の事だ、あいつらの拠点は斜め前にあるマンションの5階だな」

「なんでそんな事が分かるんですか?魔王様、魔法ですか?」

「いや、魔法は使ってない」


 前のマンションの5階は以前から空室だった、窓にカーテンが無く物干しざおも無かったのだ。しかし3日ほど前からカーテン掛かったのだが、物干しざおは無かった。また朝も夜もカーテンが閉まったままで明かりも付けないのだ。だがカーテンが少し揺れているので中に人が居るのは間違いない。多分あそこで交代で此処を監視してるはずだ。


「成るほど、魔王さんって色々見てるんですね、関心するッス」

「ふっふっふ、俺はチラ見でも完全に覚える事が出来るんだ」

「変な特技っすね!」

「変じゃないぞ、戦闘機パイロットには必須の能力なんだけどな・・」


 それから俺達は何時ものように買い物をして、何時もの様にご飯を食べて、そして何時もの様に寝た。これはハッキリ言ってわざとやってるのだ。そもそもCTRって言うのは相手の動きや人数を確認する為にやっている、狙われている場合は同じ道や同じ場所にはいかない様にするのが鉄則なのだが、今回はわざと同じ行動をして相手を油断させているのだ。彼らの事がばれていない事とこっちが阿呆な素人って印象を持って貰っているのだ。そして油断した相手は叩きやすいのだ。


「それじゃ明日は別荘に行くぞ」

「おお、アレっすか。凄い山奥ッスよ」

「まあ、愉しみですわ」


 メイド喫茶が物凄く儲かったので中古車を買ったのだ、7人乗りの大きい車だ。本来この手の車は嫌いだが人数が多いのでしょうがない。店から3時間程の山の中の別荘に行って皆で週末を過ごすのだ。山の中の1軒やだが電気も水道もちゃんと有る所が日本の凄い所だな、携帯だってちゃんとつながるのだ。コンビニは車で40分の所に有るので不便だがとても静かで落ち着ける場所だった。襲撃するには最適の場所だ、近くに人が居ないのでやり放題なのだ。


「凄く静かっすね」

「山の中ってこんなもんだぞ」

「魔王様、私たちここが気に入りましたわ。とても落ち着きます」

「そうか、ゆっくりしてくれ。沢山働いてるから週末は皆の憩いの時間にしような」


 都会に住んでいるとハッキリ言って物凄く煩いのだ。慣れてしまって気が付かないだけで騒音だけでも凄いストレスが掛かっているのだ、それで知らず知らずのうちに田舎や旅行に行きたがる人間が多いのだ。

 1週間の内5日間は喫茶店をして、休みの2日間は山の中の別荘という生活を俺達は始めた。サキュバス達のストレス解消にも都合が良いようなので安心した。


「何時頃仕掛けて来るんスカね?」

「近いうちに動くと思うぞ。わざわざ同じ行動をしてるからな」

「やっぱりここで仕掛けて来るっすか?」

「そりゃそうだろ。周りに人が居ないから好き放題に出来るぞ」

「でもそれって、こっちも好き放題に出来るって事っすよね!」

「良く分かってるじゃねーか(笑い)」


人里離れた山の中に美女4人と、馬鹿な男が2人。そして王子が1人という美味しそうな餌を用意した俺はひたすら襲撃者を待っていたのだ。魔族からの応援もそろそろ呼ぶ頃合いだな。俺の楽しそうな笑いを勇者は気味悪がっていたが、サキュバス達はニコニコして見ていた、楽しい宴が始まりそうなのを気が付いている様だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ