第61話 大繁盛
昨日の忙しさの原因はツイッターやネットだったらしい。午前中に信用金庫にお金を預けに行ったら担当の人が教えてくれた。絶世の美女が4人いる喫茶店という事でかなり拡散されたのだそうだ。自分達は宣伝してないのに勝手に噂が広がるっていうのも凄いな。マスコミの存在意義が無くなったって事だよな。個人の発信力が史上最高になった時代なんだな~等と個人的に感動してみたりする。まあ自分に関係ない事がどうなろうがどうでも良いんですけどね。
「昨日の混雑はツイッターやネットが原因だってさ」
「納得っす、それで今日も店の前に行列が出来てるんですね」
「はあ~、今日も忙しそうだな」
「頑張りますね、魔王様!今日はメイクもばっちりです!」
開店2日目、店の外には大きなお友達達が行列を作っていた。ネットの拡散力は凄まじいものだな。俺と勇者はそれを見てげんなりしていたが、サキュバス達は俄然やる気を出していた。昨夜は口紅を塗っては見せに来たり、パンツを履いては見せに来たりして大変だったのだ。彼女達は今日の綺麗に塗った口紅や新しく買ったパンツを見せたくてしょうがないのだ。
「じゃあ行くか勇者!」
「うッス!行きましょう魔王さん!」
「戦闘開始だ!喫茶魔王開店!サキュバス隊出撃!」
「「「「は~い!」」」」
ご機嫌のサキュバス達が昨日より胸を揺らしながら、大きなお友達を出迎える。余りの美貌と色気に驚いているお友達が大勢いた。ネットの画像を加工した画像と思っていた様だ。本物のサキュバスは画像の10倍エロいのだよお友達諸君。その日は開店から閉店まで忙しかった、魔王喫茶は大きなお友達が集まる激戦区となってしまったのだ。だが俺は魔王だ大きなお友達に負ける訳にはいかんのだ!傍には共に戦う勇者もいる。そして最前線のサキュバスは大きなお友達にチラチラ見られてご機嫌で胸を揺らしまくっている。
「ふ~やっと終わったか。今日も疲れたっす」
「本当にな、当分こんなのが続くんだろうな」
「その内下火になると思うッス。大きなお友達は飽きっぽいっすから」
「魔王様、私たち飽きられない様に頑張りますわ!」
「頑張らなくて良いよ気楽にやってくれ。お客さん多すぎだから」
その時入り口のドアが開いて人相の悪い男が3人程入って来た。
「そりゃあ儲かって結構な事だな」
人相の悪い男の一人が俺に言った。まあ見たらわかるが暴力団かそれに近い連中だな、何もしてなくてもこの手の連中は見たら分かるのだ。なにせ昔は組長からスカウトされたことも有るからな(笑い)。
「今日は閉店ですよ、お客さん」
「客じゃねーんだよ、ねーちゃん」
「おお!みかじめ料の集金だな!」
「分かってるじゃねーか、おっさん」
地回りが俺の店にみかじめ料を集金に来たようだ、実は俺はこれを待っていたのだ。メイド喫茶に綺麗なお姉さんを置いているのでストーカーや面倒な客が来た時に俺や勇者がボコる訳には行かないからこまっていたのだ。
「ちょうど良い、待ってたんだよ。幾らだ?」
「月に5万」
「良し月20万払おう、その代り分からない様に始末してくれよ」
「お・・おう」
折角怖い顔をして、部下を連れて来たのに怖がってないし、偉く話が分かるのに戸惑っている様だが気にしない。魔族達と一緒に暮らして来た俺や勇者にとってこいつらが幾らすごんでも子犬が吠えているのと変わらないのだ。
「俺の店は客商売だから、なるたけ店内には入らないでくれ。トラブルがあったら電話するから直ぐに来てくれよ」
「お・おう、偉く慣れてる様だが。もしかして同業者か?」
「いやいや、俺は真面目な庶民だ。勿論前科なんかも無いぞ」
「どうもな・・あんたはヤバい感じがするんだがな・・」
なかなかカンの良い奴みたいだが俺に関わったのが間違いだ。せいぜい利用させて貰おう、お前らは死ぬか役割が終わるまで俺に尽くすのだ。
「キャ!」
「へへへ、良いじゃねーか。減るもんじゃなし」
手下の一人が俺のサキュバスの胸に触った様だ、サキュバスが怒って睨んでいた。やれやれ馬鹿は金玉で物を考えるから面倒だ。
「おい!お前!」
「あ~ん、文句あるのか!」
格闘技の経験が全くない様な体型のチンピラが俺の方を向いた。サキュバスを見る目がイヤらしい。当然の様に俺は攻撃を開始する。下に垂らした手からの裏手刀、ノーモーションからの首筋への攻撃。そして喉を抑えて下を向いた顔への髪を掴んでからの顔面への膝蹴り。10年以上やっていた唐手の攻撃、勝手に身体が反応するので危険すぎて辞めた唐手だが頭に血が登ると勝手に身体が動くのだ。
「て!てめ~!」
相方が瞬殺されて驚いた片割れがスタンガンを取り出して俺に向ける。ふ~ん最近のヤクザはドスからスタンガンに代わったのか。しかしな、魔王に武器を向けるとどうなるか分かってるのか?
「ぐわ!・・・」
「うわ!やめろ!俺は関係な・・・・」
俺に武器を向けた瞬間に戦闘モードに入ったサキュバスがチンピラの脊椎にナイフを突き立てた。2人のサキュバスは出入り口を封鎖していた、手にはいつの間にかステーキナイフが握られている。武器を向けると言うのはこういう事だ、攻撃の意思が有ると思われると殺されるのだ。日本人は考えが甘すぎる様だが魔族は違う。サキュバスは魔族の中では弱いが人間で言えば特殊部隊の戦闘員程度には強いのだ。
「あっちゃ~、俺が活躍出来なかったッス」
「お前は鈍いんだよ!勝手に身体が動くようにしないと死ぬぞ」
「そうっすね、俺はまだまだ甘いッス」
折角利用しようと思ってたのにゴミになってしまった。捨てに行くのが面倒だなと思っていたら、勇者が魔法で3人を消滅させ、床の血だまりも浄化魔法で綺麗にしてくれた。勇者ってスゲ~便利。店の前に連中が載って来た車が有ったので捨てに行く。Nシステムに引っかからない様に裏道ばかり走ったので面倒くさかった。
まあこんな風にしてのどかに喫茶店をしていた訳だ、他にもサキュバス達の身分証明書を作ったり、勇者が海外に口座を作りに行ったりして平和で忙しい毎日だった。因みにサキュバスの身分証明書は戸籍に住民票などちゃんとした本物だ、役所の職員が作ったから間違いない。サキュバスにかかればこんなもんだ。そしてちゃんとした身分が出来た彼女達にはちゃんと給料が払われて、保険や税金ががっつり引かれる事になった訳だ。インフラにただ乗りってのは乞食と同じなのでちゃんと税金を払って貢献する立派な魔族の誕生だな。