第60話 メイド喫茶開店
開店初日、良い天気だ。人生初の自営業はどうなるだろうかな?戦力としては4人のサキュバスを抱えているので問題ない。商売とは戦いなのだ、周りの勢力に勝たねば負けて消滅する。とは言え俺のメイド喫茶は昼の12時開店なのでのんびりしたもんだった、楽して生きるのが俺のモットーだからな。さて俺達の戦いを始めよう。
「勇者、準備は良いか?手をちゃんと洗ったか?」
「手を洗ってアルコールで消毒。マスクとキャップも装着したッス」
「良し、サキュバス達。店を開けろ!戦闘開始だ」
俺の戦力であるサキュバスは4人居るが身長は175~155センチ、金髪、銀髪、黒髪、赤毛と見事にバラバラだ。2人は映画女優を10倍美人にした感じで、もう一人は国民的なアイドル、もう一人はロり巨乳って感じだった。男ならどれかが好みに成るはずだ。
カラン・カラーン。第一お客さんが来たようだ。初物好きは何処にでも居るからな。
「「「「いらっしゃいませ~!先生」」」」
「???先生?・・ご主人様じゃなかったっけ?」
店内を覗いて見たら何の事は無い友達が記念すべきお客さん第一号だった、心配して見に来たのが半分で残りの半分はサキュバス達に会いに来たんだと思う。バンド仲間を連れて4人で来ていた、サキュバス達に親し気に席に案内されて仲間にどや顔をしていた、鼻を膨らませているから間違いない。他にもチラホラとお客さんがやって来ていた。
「ステーキ定食4つ入ります!」
「へいへい!」
「カレー3つとスパ4です!」
「了解っす!」
俺の友達は売り上げに貢献するべく一番高いのを頼んだ様だ、そんなに気を使わなくても良いのにと思いながら俺と勇者は注文の料理を全力でつくる、食い物屋は時間との勝負なのだ。皆腹を減らせているので時間が掛かると怒りっぽくなるのだ。注文を受けたら10分以内に料理を出す事を心掛けている。
「うお~!!!負けるか!」
「どりゃあ~!!」
俺と勇者は厨房の中で絶叫を上げながら頑張っている。サキュバス達は優雅にカウンターでコーヒーや水を用意して店内をにこやかに巡回していた。料理をカウンターに運ぶ時に店内をチラ見してみたら、やはり男どもはサキュバスをチラチラ見ていた。揺れる胸や弾むお尻が気になる様だ。美人過ぎてガン見出来ない所が日本人らしくて良い所だな、ワビサビとはそういうものだ。
「なんすか!忙しすぎっす!」
「だよな、宣伝してないのに客多すぎだろ?やっぱメイド喫茶がここ一軒だけって言うのが悪いのか?」
「え!この県ってメイド喫茶無いっすか?」
「うむ、田舎県なので無いのだ。デリヘルは沢山有るのだがな(笑い)」
「道理で客が多いハズっすね」
俺はアニメやラノベでメイド喫茶と言うのを知って、ネットで調べてみたが無かったのだ。隣の県には有るのに俺の県に無いのにガッカリしたのだ。流石に隣の県まで行くのはためらわれたのだ、それにメイドさんの画像が載っていたが、正直ガッカリして興味が無くなったのは内緒だ。
「撮影入ります!」
「うお~!行って来るッス」
サキュバスの撮影が入ったので勇者が厨房から飛び出して行った。撮影とプリントアウトは勇者の担当なのだ。意外とハードな仕事だなフライパンを振る手がダルイ、だが俺は負けん。魔王に敗北は許されないのだ。
「腕輪ちゃん、助けて~俺もう限界」
「なんじゃ、もう駄目なのか?情けないのう」
仕事の多さに負けた俺は腕輪ちゃんに助けを求めた。なんだかんだ言いながらも腕輪ちゃんは良い女だから手伝ってくれるのだ。俺は体力が無いから長時間労働は出来ないのだ・・まあ嘘だけど。
「儂が料理を作るから、お主は皿を洗っておくのだ」
「はい、頑張ります。腕輪様」
ひっきりなしにお客さんが来るので厨房は最前線になってしまった。料理を作るだけでも大変なのに後かたずけの皿や食器洗いから乾燥まで有るのだ。3人が必死に頑張って店を回している状態だった。うむ、喫茶店とはやはり戦いだったのだな。自分の店じゃ無かったら明日からバックレる所だな、忙しすぎなのだ。
「うう・・休憩したいッス」
「甘えるな勇者!倒れるまで働くのだ」
「サキュバス達が頑張っているのだ、俺達だけ休むわけにはいかんぞ」
昼を過ぎても夕方になっても客足は落ちることなく大繁盛だった。そして気が付くと閉店時間になっていた。余りの忙しさに時間が経つのが早かったのだ。
「お疲れ様」
「やっと終わったッス」
「凄く繁盛したな」
店を閉めて皆で休憩だ、今日は一日中忙しかったので休憩も満足に取れなかったのでクタクタだ。全員で冷たい物を飲みながらクールダウンすろ。
「サキュバスちゃん達大丈夫か?疲れただろう」
「この位平気ですわ、沢山見られて楽しかったです」
「お客さんが多くて面白かったですね~沢山お話しました」
サキュバスちゃん達は平気な様だ、元々接待上手な種族だから当然だな。俺と勇者は引き籠り族だから結構大変だったな。
「魔王さん、見て下さい!売り上げが凄いッスよ!」
「おお~!こんなに儲かるのか。サキュバスの威力はすげえな」
「魔王様、写真のお金もこっちに有りますわ」
レジの中に入りきらない売り上げはスポーツバッグに入れられていた。サキュバス達の2ショット写真の売り上げは500円玉と千円札ばかり何故かザルに入れられていた。店の売り上げは色々な払いに必要なので明日信用金庫に入金する事にして、サキュバス達が稼いだ写真代は彼女達の好きに使って貰う事にした。
「写真の売りあげは好きに使うと良いよ、服とか化粧品とかね」
「ありがとうございます魔王様。私達明日も頑張りますわ」
思えばこれが悪かったのかも知れない、やる気を出したサキュバスは写真の売り上げを上げようとしてチラ見せをするようになったのだ。写真の売り上げが上がるのは結構だが店が混雑しすぎて困ってしまう事になるのだった。
「お買い物に連れて行って下さい。魔王様」
「それじゃ行くか、明日の食材も要るしな!」
1週間分の食材を一日で使い果たしたので全員で深夜営業の大型店に出撃だ。サキュバス達は口紅や下着を買っていた。明日はあれを装備して働くのだろう、俺と勇者は食材を大量に買い込んで車に運ぶ。成功しすぎるって言うのはキツイのだ、程々に流行ってくれれば良いんだがな~等と、贅沢な悩みを抱えて家に帰るのだった。