第53話 こっちの世界
小説書き始めて半年経ちました、全然進歩しない所が自分でも凄いと思います。果たして進化するのかそれともオタマジャクシのままなのか?まあオタマジャクシの方がカエルより個人的に好きですが・・・
「魔王様朝ご飯ですよ~」
「すぐ行く」
わずか2日でサキちゃんは俺の家に馴染んでしまった、物凄い適応力だ。これで日本語が話せれば俺の嫁として世間に認められそうだ。家の家電も簡単に使い方を覚えたみたいだしな、まあ家電って簡単に使える様に出来ているから当然なのかな。
「今日は何しますか?」
「今日は家の中に居ようと思う、昨日は目立ち過ぎたからな」
「目立つと悪いのか?」
「悪いな、この世界の身分証明書を持って無いからな。最悪の場合捕まるな」
「儂らが、人間なんぞにつかまる訳無かろう」
「止めてくれ、俺がこっちに居られなくなるから!」
不法滞在とか密入国とかでサキちゃんや腕輪ちゃんが捕まる可能性は確実に有ると思う。普通にしてれば問題無いが2人は特に目立つので可能性は非常に高い。その内何とかして住民票や戸籍等を作る予定だが、今の時点では持って無いから困るのだ。いざという時はあっちの世界に転移すれば良いのだが、こっちで追いかけられるのは面倒なのだ。
「こっちで暴れると買い物出来なくなるからな!」
「それは困りますわ、もっと服が欲しいですもの」
「儂も色々食いたいぞ」
サキュバスは魔族の中では弱い方だが、人間なんかに敵う相手じゃ無いのだ。彼女がその気になれば人間の男を洗脳したり魅了したりして簡単に支配してしまうだろうし、精力を吸い取ってミイラにすことも可能なのだ。腕輪ちゃんに至っては魔力で何をしでかすか分からない、転移が出来る位だから他の魔法も使えるハズだ。例えば俺のコロシアムを吹き飛ばしかけた魔法なんかだ。
「頼むから大人しくしておいてくれ、その内身分証明書を作って自由に動ける様にするから」
「分かりましたわ魔王様」
「うむ、仕方ないの。お前の頼みなら聞いてやろう」
家の家電やパソコンの使い方、日本語の勉強等をしていたが案の定2人がソワソワしだした。外の様子が気になる様だ、まあ当然だな。仕方ないので外に連れ出す事にする、ただし行先は俺の友人の所だ。人混みには連れていけないからな。外に行くと知ったら2人とも凄く喜んでいたドライブが楽しいらしい、俺は毎日通勤で運転してるから面倒なだけなんだがな。友達は車で30分の所に住んでいるので電話して遊びに行く事にした。
「と言う訳で遊びに来たんだ」
「ふ~ん」
当たり前だが俺が魔王になったとか、この2人が向こうの世界の者とかは信用していない様だ。まあ俺でも信じないな、呆けたと思うだけだろうな。
「腕輪ちゃん、元に戻ってくれ。オッサンが信じてないみたいだからな」
「了解じゃ!」
目の前に居た美人が姿を消して俺の右腕に装着されると、いままでのんびりしていた俺の友達がビックリして目を見開いた。
「え~!!!」
「信じるか?」
「・いや・・信じない・・ちょっと疲れが出た様だ・・」
俺の友達は俺と違って慎重だった、常識が邪魔をして見た事を必死で否定している様だ。もう一度腕輪ちゃんを出すと渋々俺の言った事を信じた様だ。
「やっと信じてくれたか、疑り深いな。大体そんな事でもなけりゃ、こんな美人が2人も居る訳無いだろ」
「それもそうだな、で、名前はなんて言うんだ?」
「こっちの金髪美人がサキちゃん、黒髪美人が腕輪ちゃんだ」
「ハジメマシテ」
「宜しくな」
2人の名前は俺が適当に名付けたと言ったら怒られた、俺はいい加減だから良く友達に怒られるのだ。ついでにここに来た目的も話しておく事にした。別に美人を見せに来たわけでは無いのだ。俺に何か有ってこっちの世界に帰ってこれなくなった時に財産を処分してもらおうと思って来たのだ、俺は天涯孤独な人間だから家や貯金が国に取られてしまうのだ、委任状を渡しておけば財産が友達の所に行くので安心だ。
「要件は分かった、委任状が出来たら預かる」
「すまんが宜しく頼む、国に取られるのは嫌だ」
「腹減ったから飯行こう」
「良いぞ」
4人で飯を食いに行く事になった、目立ちたく無いので近所の台湾料理の店だ。ここは中国人や台湾人が良く来る店なので外人が居ても目立たないのだ。そしてサキちゃんには俺の友人の相手をしてもらう。さりげなく腕を組んで胸を相手の腕に押し付けるサキちゃん。俺の友達は鼻を膨らませて頑張っている、胸をガン見したいのを我慢してる様だ、やれやれ紳士って奴も大変だな。
「魔王は儂がエスコートしてやろう」
「おう、頼むぜ腕輪ちゃん」
腕輪ちゃんも俺の腕を取って見事な胸を押し付けて来た、うむ、中々の弾力だ、残念ながら毎日触ってるので何とも思わないがな。この店は台湾料理の店なのだが、実際に台湾出身の人がやってるので量が物凄く多いのだ。日本人のやってる店ならラーメンのセットのチャーハンは半分以下の量になるのだがこの店では普通にチャーハンが付いてくる。それに普通の量の鶏のから揚げや吸い物等が付いてくるので定食を頼むと3人前位有るのだ、それでいて値段は普通に880円とかなので気に入って来るのだ。味はソコソコだが気概が気に入ってるのだ。昭和の時代にはこういう店も結構有ったのだが、平成になってセコイ日本人が増えてこういう店が無くなったのは悲しい事だった。
「魔王よ中々美味いな、量も丁度良いぞ」
「オイシイです」
「なあ、この子達にスナックとかやらせたら儲かりそうだと思わないか?」
「絶対儲かるよ、俺も常連になる」
「その内色々やるかも知れんから宜しく」
「分かった」
友達にも事情を説明できたので安心した俺は自宅に帰ってきた。まだまだやる事は多いのだ、日本語を教える教材やここの暮らしに役立ちそうなものをネットでドンドン落として行くのだ。そして向こうの世界のサキュバス達に教えるのだ、サキュバス達の準備が終わったらこっちの世界で商売をしてこの世界を裏から支配するのも面白いかもしれん。・・・いやダルイだけだな・・適当に儲けて適当に遊ぼう。
ピンポ~ン!
「魔王さん、帰って来たッス!」
「魔王って言うな!馬鹿!」
「あっ!しまったッス。・・名前知らないッスよ・・」
そう言えば俺の名前を教えて無かったな、あっちじゃ魔王って呼ばれてたからな。サトウには俺が小説サイトで使ってるハンドルネームを教えた。
「アパートや仕事の方は片付いたのか?」
「アパート引き払って道具は全部売って来たッス。バイトも辞めて来たッス」
勇者はサッパリした顔をしていた、こちらの世界に全く未練が無いようだ。俺は色々未練が有るがこっちの世界でホワイト企業に勤めていなかったら、やっぱりサトウみたいに魔族の国に帰りたいと思うかも知れないな。あっちじゃパソコンとプリンターを使えたら大金持ちに成れるからな、綺麗なお姉さんも沢山居るしな。サトウが早く魔族の国に帰りたがって煩いので一旦帰る事にする。まあサキちゃんにこの世界を見せて、俺の友達に事情を話したから目的は果たしたし、俺も魔族の皆に会いたいので帰る事にする。
「そんじゃ未練は無いな、サトウ」
「こんな所クソっす!サキュバスは居ないし、会社はブラックしかねーッス!魔族最高っす!」
「そうか・・それじゃ帰るか。腕輪ちゃん頼む!」
サキちゃんはこっちで買った物を大事そうに持っていた。腕輪ちゃんは俺の秘蔵の酒をバックに詰め込んでいる。俺はメモリーや予備のパソコンを抱えていた。さて帰るか・・いや・・行くのかな?どっちが自分の国か区別がつかなくなった魔王が居た。