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ぶ~外れです! 賞品は魔王です!  作者: ピッピ
第1章 新魔王
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第4話 魔族防衛作戦


 戦争なんてものは勝てば良いのだ、どんな汚い手を使っても勝てば正義で負ければ悪なのだ。事実や史実なんてものは幾らでも書き換えられるし事実が無ければでっち上げれば良いだけだ。勝ってから大声で正義を連呼すれば良い事を俺は知っていた。

 そこで今回の心構えを魔族共を集めて大声で叩き込んだ。


 「お前ら良く聞け。今回の戦いは防衛線だ、我々は安全な城壁の中から出ない!」


 「・・なんか消極的ですな・・魔王様」


 「馬鹿野郎戦争には大義名分ってヤツがいるんだよ!先に相手に仕掛けさせてこちらが防衛したら被害者のフリが出来るんだよ!たとえこちらが先に挑発しててもな!平和を愛する魔族がいきなり人族に侵略された様に見せるんだよ!」


 「えっ、事実と違ってもですか?」


 「そうだ、勝てば誰も勝った方に文句を言わないからな。だから勝たねばならんのだ!」


 今回の戦争はこちらの全魔王が出鱈目な事や要求をしまくったせいで起こった事を幹部連中は知っていたので微妙な顔をしていたが、俺は戦争で負けて生贄で殺されるのは嫌なのでドンドン対策と戦術を指示していった。


 「防衛線では出来るだけ即死を避けろ!腰から下の重傷が最も好ましい!」


 「はあ!何ですと!人間を殺すなと言うのですか魔王様!」


 ブウゥ~!!!!!魔族連中から盛大なブーイングが起こる。


 「黙れ馬鹿共!怪我をして動けなくなれば戦争の役にはたたん、役に立たないヤツでも飯は一人前食うし動けないから世話をする奴が2人位要るのだ!つまり死んだ奴より生きている重傷者は俺達の役に立つのだ!分かったか!」


 「でも魔王様、怪我した兵士なんか見捨てれば良いだけでしょう?我々魔族はそうしますが?」


 「人間はな、怪我したら見捨てられるのが分かったら戦わなくなるんだよ!怪我するのが怖くなって戦ってる振りだけするようになるんだ。やる気がなくなるんだ。」


 「何と情けない!我々は最後まで戦いますぞ!」


 「黙れ!最後まで戦われると迷惑なんだよ!皆殺しにしないといけないだろうが。」


 「・・・・・・」


 この世界の連中は馬鹿だった、戦争や戦いが名誉な事とか思ってる様だ、戦争は殺し合いで勝った方が負けた方に自分たちの意思を押し付ける手段にすぎない事を理解していない様だ。戦争で功績を上げた者を国が持ち上げるのは国にとって都合が良いだけだからだ。


 「さ・・・流石は魔王様、恐ろしい考えでございます。」


 「何でお前が嫌な顔をするんだ?オルフェイス。お前が望んだことだぞ。」


 「私が望んだのですか?」


 「俺は魔王だ、魔族の中で一番残忍で一番卑怯なのだ!」


 「流石は魔王様。そう言い切れる精神力!素晴らしいです。」


 俺は魔王をやると決めたからには最後まで演じ切る事にした。要は転職したと思えば良いのだ、転職の極意は役造りだ、転職先の業種を上手く演じれば出世も速いし上手く行くのだ。人間は皆役者なのだ、上手くその業種を演じられるか、演じられないで次の役を求めるかだけだ。


 「風のシルフィーネを呼べ!奴には特別な任務がある。それと、お前もだオルフェイス。」


 なんだか乗って来た、俺は魔王を演じて生き延びるのだ。失敗して死ぬにしても全力で演じて死んでやるのだ。今までもそうだしこれからもそうだ、死ぬこと自体は嫌だが全然怖いと思ったことは無かった、皆何時かは死ぬのに恐れてどうするんだ?


 「オルフェイス、夜の隠密活動に長けたやつを50人俺に寄越せ。お前は闇を名乗る位だから部下に居るだろう?」


 「はい、勿論居りますが・・どうされるのです?」


 「防衛だけでは戦争に勝てないから、そいつらを使って反撃する・・いや、嫌がらせする!」


 「たった50人で良いのですか?沢山居りますが?」


 「少ない方がやり易いんだ、それにお前には防衛線もあるだろう。」


 「分かりました、1時間で選抜します。」


 「戦闘力より隠密性で選べよ。」


 闇将軍・オルフェイスは頭を振りながら走って行った。戦闘力が余りない魔族の使い方が理解出来ないのだろう。今まで正面攻撃しかしてこなかったから仕方ない。戦争には正規戦と非正規戦がある事も知らないのだろう。平和で結構な事だ。


 「風のシルフィーネ、お前の所は空を飛ぶ連中がいるな。」


 「はい、ウチは数は少ないですが皆空を飛べます。」


 「偵察部隊を12個作れ、そして東西南北に放ち24時間体制で周りの状況を探れ。編成は偵察要員2護衛2の複数体制だ。分かったか!」


 「はい、直ちに編成します。・・しかし何処まで偵察したら宜しいのでしょう?」


 「出来れば、この大陸全部だ。出来ないなら魔王城から周りの国の半分の距離まででいい。」


 「周りの国がここに攻めて来るとお考えですか?」


 「当たり前だ、弱った所を叩くのは基本だぞ。」


 どうやら魔族は漁夫の利なんかは使わないらしい、道理でじり貧になるはずだ。これでは人間に良い様にやられる訳だ。こいつら強いくせに戦い方が下手なのだ、多分個人が強すぎるんだろうな。個人技が通用するのはスポーツだけだ、戦争は1対1じゃないからな、囲んで叩いて終わりだ。

 こうして俺は魔王を演じていた。勇者より制約が少なくて楽だった、汚い手が幾らでも使える悪役だからな。



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