第37話 勇者干からびる
人間の国3国に送った招待状の返事が届いた様だ、東の国は3か月前の戦争でボコボコにしてやったし、西の国も船を沈め捲くって通商破壊してやったから余り期待はしていなかったが、西の国と南の国は武闘大会に出場するとの事だ。東の国は丁寧に断ってきた。
「西の国と南の国は参加するんだな、普通の人間が政治をしてる様だな。」
「普通ですか?」
「折角魔族の戦闘力や街の事を公式に調べられるのだから普通は参加するぞ。東の国は全く余裕がないか馬鹿が政治をしてるのか、その両方かな。」
「つまり西と南の国は要注意と言う事ですか?」
「そう、だけど馬鹿でないなら交渉する余地は有るから、共存は可能だな。東の国は取りあえず無視しとけ。」
武闘大会は魔族の娯楽の意味もあるし、俺の貴重な収入源にするつもりなのだが、それ以外にも魔族の強さを他の国に知らせる意味も持っていた。3か月前みたいに戦争を起こされると迷惑なのでここで魔族の力を見せるのだ。だが興行として面白くしないと金にならないのでどう両立させるかが腕の見せ所だった。
「人間や他の国の代表者や参加者には丁寧にしろよオルフェイス。あいつらは大事なお客さんだからな。毎年きてもらわなくてはいけないからな。」
「ふふふ、流石です魔王様。毎年魔族の国に娯楽と金を落とさせるおつもりですね?」
「勿論だ、卵を産む鳥は大事にしないとな。」
「フハハハハハ、魔王様にとって人間族は敵ですらない鳥ですか!このオルフェイス一生魔王様に付いていきます。」
あ~あ又俺が悪く言われるんだろうな~とか思いながらオルフェイスとの話し合いは終わった。これから各国に配るパンフレットを作らなくてはならない。A4のコピー用紙にカラー印刷で作成した画像も入れて各国に配れば、魔族の技術レベルに各国とも驚嘆するだろう。そして必ず魔族の技術に興味を持って客が増えるはずだ。参加選手の写真とか高く売れそうな気がする、元は魔力だからタダだしな。
「へへへへ~、有り金残らず巻き上げてやるぞ~!!」
「魔王様、声に出ています。」
「え、そうか。聞かなかった事にしてくれ。」
俺はなるたけ見栄えの良いパンフレットを作るべく頑張った。闘技大会のルールもなるべく人間に有利になる様に操作した。例えば武器無しで1対1で戦うと人間はとても弱いので、相手の体重に合わせた装備や人数で対戦出来るようにしたのだ。例えば魔族が300キロの巨体の選手が出たとすると、人間は100キロの選手3人で戦えるようにしたのだ。これなら体重差によるハンデはかなり減らせるはずだ。まあ余り強い選手は出さない様にするつもりだ。ただ一人を除いて。
「魔王様、お仕事中でしたか?」
「どうした?シルフィーネが俺の部屋に来るのは珍しいな。」
「魔王様、サキの持ってる姿絵なんですが。私にも1枚もらえませんでしょうか。」
「いいよ。幾らでもでもあげる。ただし頼みが有るんだ。」
「頼みですか?魔王様の命令なら何でもしたがますが・・・」
「いや命令じゃなくて、お願い。今度の武闘大会に出て欲しいんだ、魔族代表としてね。」
「私が魔族代表・・・喜んで出場いたします!」
俺の計画は武闘大会を盛り上げる事、そして魔族の強さを見せる事の2つだ。盛り上がれば俺の懐に入って来る金が増えるうえに民衆が喜んでくれる。そして魔族の強さを見せれば、人間共が魔族の国と戦争をする時に少しは考える様に成るだろうという事。その為には見た目が美人のシルフィーネは最高の選手なのだ身長180センチ・プラチナブロンド、金色の瞳、推定98・58・95のナイスボディーのお姉さんだ。
「シルフィーネって強いんだよな?」
「ドラゴン族ですので、古龍以外には負けません。」
「うふ~!最高!シルフィーネ頼んだぞ、試合を盛り上げて優勝してくれ。魔族の強さを見せるのだ。」
「お任せください魔王様、名誉な役を頂きありがとう御座います。」
その後色々なポーズをとって貰って撮影をバシバシ行った。シルフィーネも最初は恥ずかしがっていたが最後の方はノリノリだ。この中からカッコイイ奴を選んでパンフレットに乗せるのだ。表紙にしても良いかもしれないな、美人が露出の多い恰好をしているのだ。男なら金を出してでも買うだろうな。まてよ、ついでにサービスでサキュバス達の画像も乗せれば売り上げ倍増だよな。ついでに俺の書いた小説を連載して・いやいや流石にそれは浅ましいだろ。
「魔王様、大変です。勇者が・・・」
「勇者がどうした?鼻血でも出したか。」
「それがその・・・」
勇者が変だと言うので見に行ったら、干からびて床に倒れていた。これから考えられるのはただ一つだけだった。
「おい!サトウ。お前やったんか?」
「すんません・・・我慢でき無かったッス・・・・」
「まあ、気持ちは分かるがな。俺が若かったら多分同じ目に会ってただろうからな。」
「・・たすけて・・魔王様・・・」
多分サキュバス達の画像を見てたら我慢できなく成ったんだろうな。彼女居ないって言ってたから、女に対する耐性がゼロっぽい奴だし。俺は急いでリッツを探して勇者の治療をしてもらった。精力を奪われると生命力が極端に低くなるので病気にかかりやすくなって、風邪位でも簡単に死ぬらしい。
「ほら、うどんだ。食えよ。」
「すんません・・・」
「回復には時間が掛かるらしいぞ。しかし、良く死ななかったな。流石勇者って所だな。」
「衰弱って怖いッス。何か全部どうでも良く成るッスよ。でも彼女が出来るまでは死にたくないので頑張ったス。」
「女で死にかけたのに、女の為に頑張ったのか。すげ~欲望だな。」
「彼女が出来るまで絶対死なないッス!」
勇者はそれから僅か3日で回復して歩けるようになった。流石に勇者は頑丈だ。でもリッツの治療魔法と俺が飯を食わせてやったお陰なのだ。サキュバスが直ぐに知らせてくれなかったら勇者は今頃死んでただろう。あいつもサキュバスはもう懲り懲りだって言ってたが、隠れてサキュバスの写真を見ているのを俺は知っていた。多分またあいつは干からびて床に倒れるだろう、何度でもやりそうな奴だった。