第35話 魔力変換
「魔王様、魔法が使える様になったッス!」
「マジか、流石勇者だな。」
「見るッス!光あれ!」
勇者の尻がぼんやり光っていた、なんだこれはギャクか?俺を笑わせようとしているのか?リッツやトランザムは露骨に勇者の尻を指さして笑っている、サキュバス達は微妙な顔をしていた。
「おい、尻が光ってるぞ。勇者!」
「蛍をイメージして見たっす。どうッスか?」
「ハッキリ言ってカッコ悪い。ロリっ子の尻が光るのは微笑ましいが、男の尻が光るのは気持ち悪い。」
「マジっすか、折角頑張って光らせたのに・・・」
蛍の尻が光るのは良いが、大人の男の尻が光るのは不気味だった。第一役に立たないと思うんだ、ダンジョンなんかで尻を光らせても前が見えないじゃないか。後ろ向きに移動するのか?
「そう言われて見ればそうですね、尻が光るのは不便っす。違うヤツをイメージしてみるッス。」
「提灯アンコウ何かどうだ?頭の前付近が光るぞ。」
「提灯アンコウ見た事ないから無理ッス。」
「自分でイメージしないといけないのか。まあ、頑張ってくれたまえ。」
勇者が頑張っているので小心者の俺も頑張る事にする。人が働いてると落ち着かないのだ、これが庶民って奴の特徴だな。でも俺は魔法も使えないし、頑張る事は一つだけだ。俺の世界からの取り寄せだ。まあこれも腕輪ちゃんがやってる事だから俺は魔力を集めるだけだけなんだけど。
「腕輪ちゃん、回復薬の時間だよ。」
「う~、それは苦いから嫌なのじゃ。」
「好き嫌い言ってはいけません。さあ全部飲むのです。」
「・・苦い・・不味い・・・」
「じゃあアイスを口直しに取り寄せて良いから頑張ってくれ。」
この魔女から買った魔力回復薬は相当に不味いらしくて、毎晩飲ませるのに苦労している。緑色のドロドロした液体で見た目も不味そうだった。値段は1本3000円位なのかな、少量生産なので高かった。
「お主も呑んでみろ、儂の苦労がわかるはずじゃ。」
「俺が飲んでも魔力が無いから意味がないだろ、それに結構高いんだぞソレ。」
魔王には給料が無いから俺は金には苦労していた。サキュバス達が沢山稼いで来てくれるのだが、その金はコロシアムの建設に全部つぎ込んでいたから俺は1円も使ってなかった。どうも女に貢がれるのは抵抗が有るのだ、そう俺は昭和生まれの頑固ジジイなのだ。
「魔王様、やったッス!今度は尻じゃなくて全身が光るッス。」
「器用だなお前、やっぱり本物の勇者なんじゃないのか?」
「本物だったら嫌っすね、スゲ~こき使われそうな気がするッス。」
「だよな~、目立つと碌な事がないんだよ。人生良い時より悪い時の方が長いからな。」
その後勇者にも魔力を分けて貰い、結構な魔力が溜まって来た。勇者はトランザム以上の魔力量を持っていた。こいつが真面目な勇者だったら結構強く成っていたのじゃないだろうか。
「結構魔力が溜まったぞ、何か欲しい物有るか?」
「パソコン欲しいッスね、2ちゃん見ないと落ち着かないッス。」
「パソコン有ってもここじゃネット無いから見れないぞ。それに発電機が無いとそもそも動かないぞ。」
「それじゃ魔力貯めて、発電機も取り寄せると良いッス。パソコン有ると色々便利っすよ。」
「確かにそうだな、パソコン・デジカメ・プリンターが有れば色々商売できそうだ。大会出用のパンフレットなんか作れば受けそうだしな。」
発電機はホン〇のボンベ式なら20キロ位だったはず、カセットボンベは軽いから取り寄せ易いし手軽だな、後はサキュバス達に協力してもらって頑張る事にしよう。幸いトイレットペーパーや石鹸なんかは1週間分程備蓄して有った。そして俺はリッツやトランザムに毎日引っ付いて魔力を分けて貰い、触りたくない勇者にも嫌々触って魔力を集めまくったのだ。そして止めでドラゴン族のシルフィーネにも頼みにいった。
「シルフィーネ居るかい?」
「どうしました、魔王様?」
「魔力をわけて貰いたいんだ。」
「それは良いですけど、何するんですか?」
「もう気が付いてると思うけど、俺は魔力を物に変換出来るんだ。魔力が多いほど色んな物が変換できるからシルフィーネに頼みに来たんだ。」
「成程それで魔王様の所のサキュバス達はあんな服着ていたんですね。魔族の街の何処を探しても有りませんでした。」
「協力してくれたらシルフィーネにも勿論お礼をするから、頼むよ。」
「サキュバス達が来ている服をくれるなら協力しますよ。」
俺が今までシルフィーネの所に来なかったのには訳が有った。魔族の連中は皆怖いのだが、其中でもシルフィーネはドラゴン族なので魔族最強と言われているのだ。見た目は凄い美人でスタイルも凄いのだが良く見ると、瞳が爬虫類ぽかったり、180センチ近い身長で俺よりデカかったりするのだ。早い話が俺はシルフィーネが恐かったのだ。
「え~言いにくいんだが、魔力を貰う時は相手の肌に直接触れないといけないんだが、良いか?」
「何処でも好きな所を触って下さい魔王様。私は気にしませんよ。」
「そんな事言うと俺は本当に触るぞ。オッサンだからな。」
「ふふ、どうぞ。」
服に手を突っ込んで胸を触ってやりたかったが、前に牛族のアルにやったら気絶する程殴られたので今回は自重して手を握っただけだった。本当は尻か太ももを触りたいが服を着ているので露出してなかったのだ。サキュバス達は全裸で抱き着いてくるが他の種族はそんな事はしてくれなかった。
「凄い魔力の量だな、一体何に使うんだ?」
「空を飛んだり、身体を強化するのに使いますよ。」
「そういえばシルフィーネは空を飛ぶんだったな、凄いよな。」
「魔王様は飛ばないんですか?」
「俺には無理だな。道具を使えば飛べるかも知れないけどね。」
シルフィーネの魔力は物凄かった、トランザムの10倍近い魔力を分けて貰った。何故10倍なのかと言うと、10分程手を握って話していたからだ、これでシルフィーネとはかなり仲良く成れた様な気がする、少なくとも怖くは無くなった。次の日にお礼のジャージとシャンプーを持って行ったら喜んでいた、そしてシルフィーネも俺に魔力をわけてくれる様になったのだ。
「お~い、勇者サトウ。パソコンを魔力変換したぞ。」
「本名は止めて欲しいッス、勇者の方がカッコ良くて気に入ってるッス。」
「そうか、じゃあ勇者。デジカメでサキュバス達撮影してくれ、その後はプリント頼むな。」
「サキュバス達の撮影会っすか、燃えるッス!魔王様の部下で良かったッス!」
「あんまりエロく撮影するなよ。後で売るかもしれないからな!」
「了解っす!」
まあどんな写真を撮るか知らないが、俺よりパソコンの扱いが上手いのは間違いないだろう。駄目なら俺が撮れば良いだけだしな。それに勇者とサキュバス達を仲良くさせるチャンスだからな。