第29話 魔王愚痴る
え~と、勇者を睡眠薬で眠らせて捕まえて、殺してしまうと死に戻りされる危険が有ったのでアンデッドにして勇者を召喚した国に捨ててきたら俺の評判が大変な事になってしまった。魔族での俺の評判はうなぎのぼりだ、鬼畜とか外道とか色々な誉め言葉で語られている。そして人間界でも鬼畜とか外道とか色々な悪評が広まっていた。やっぱアンデットがまずかった様だ、腐れかけた勇者は評判が悪かった。
「魔王様、今回の件で人間共が怒り狂っております。素晴らしい挑発でした。」
「なんで怒るのかな~、俺が大人しく勇者が育つまで待つと思ったのかな~、馬鹿だろあいつ等。」
「全くでございます、力も知力も無い虫けら共です。数だけが取り柄の阿呆共ですな。」
「本当にな、きっと又召喚すると思うぞ。あいつら馬鹿だから。」
しかし酷い奴らもいたもんだ、自分たちが勝てないから違う世界から関係ない人間を連れて来て戦わせるとか鬼畜としか思えないな。やはり召喚に関係系した人たちには責任を取って貰わなければいけないな。俺があの世に召喚してやろう、これで異世界からの召喚者が助かるのだから俺は正義だな。
「お~い、オルフェイス。勇者を召喚した連中をぶち殺してこい。召喚した連中はセイロン男爵に聞けば分かるはずだ。」
「仰せのままに魔王様。」
「ふふ、正義は気持ち良いな。」
「・・・その通りでございます・魔王様。」
どうやら俺の人間界での評判は更に悪くなった様だ、つまり俺はドワーフや獣人や魔導士達と今まで以上に仲良くしないといけなくなったのだ。これ以上敵を増やしたく無いからな。人間に嫌われること自体は全然気にしていなかった、俺も人間達は嫌いなのでお互い様って奴だった。嫌いなら無視してくれれば良いのに俺にちょっかいを掛けて来るから反撃するのだ。
「それじゃあ俺はドワーフの所に行って来るから、宜しく。」
おれはドワーフの所に行ってミーシャに愚痴を吐きまくった。俺が平和的な魔王だから人間はまだ生きていられるのに感謝しないから気に食わないのだ。人間を絶滅される方法くらい幾らでも知っているが、やらないだけなのだ。俺は良い魔王だからな。
「成程魔王も苦労しておるのじゃな。」
「そうなんだ、俺は何もしてないのに人間が俺に嫌がらせするんだ。酷いだろ?」
「仲良く成れば色々便利良くていい奴なのにな。」
俺はお好み焼きをつつきながらウオッカを飲んでドワーフのミーシャに愚痴をこぼしていた。
「まあ人間に好かれても意味無いぞ、都合が悪くなると手のひらを反す連中だからな。」
「それもそうだな、取り合わないのが一番だな。時間がもったいない。」
一通り愚痴をこぼしたので次は魔導士の街だ。魔導士は人間を嫌ってるので俺の愚痴を聞いてくれるはずだ。俺はとても傷ついているのだ。
「何と人間共がそんな事を・・・」
「そうなんだ酷いだろ。俺は傷ついたんだ。」
今度は魔導士の長と串焼きを食いながら愚痴をこぼしている。いや分かってる、愚痴をこぼしても意味のない事は。でもな、意味が無くても気分転換にはなるんだよ。ただ口に出すと段々腹が立ってくるから普段は余りやらないんだがな。
「では私たちが嫌がらせをいたしましょう。」
「何すんの?」
「人間共の作物を呪いをかけて枯らしてしまいましょう。」
「バレたら人間が煩いぞ。」
「な~に、呪いを掛けなくても不作の時は何時も我々のせいにするので一緒です。」
「何だ日ごろから悪く言われてるのか。災難だな。」
人間から嫌われている者同士で話が盛り上がり、冷蔵庫とかの件で氷魔導士の立場が良くなった事などで感謝されてしまった。そして沢山のお土産を貰って俺は又魔王城に帰って来た。
「あれ、オルフェイスは?どこ行った?」
「オルフェイスは召喚者達を成敗に人間の国に行っております。」
「ふ~ん、それでオルカが留守番なのか、珍しいな。」
「何か困った事とかないか?有ったら直ぐに言えよ。」
人間に嫌われまくってるので俺は魔王城ではいい人アピールに余念がない。人間に今更良い人アピールしても無駄だからだ。もうこうなったらとことん魔王として頑張ってやろうかと思う。俺は結構ナイーブだった様だ初めて知った。
「魔王様顔が恐いです、どうかいたしましたか?」
「何でもない不愉快な事を思い出しただけだ。」
気分を落ち着ける為に部屋に帰って楽器を弾くことにする、気分を落ち着けるのに楽器は最適なのだ。俺が優雅にギターを弾いているとサキュバス達が寄って来てうっとりとして俺のギター演奏を・・・聞いたりしなかった。そうだ、俺は下手なのだ幾ら練習しても上手く成らないスキル持ちなのだ。
「魔王様、上達しませんね。」
「ああ、知ってる。何年練習しても、ギターを5本買い替えても上手く成らなかったからな。」
「ギターが好きなんですね。」
「最初は腹が立ったが全然上達しないから、何時弾いても新鮮でな。1周回って面白いのだ。」
俺はちっとも上手くならないギターをサキュバスに渡して調理場に行く。後ろでは僅か1週間で俺より上手くなったサキュバスがギターを弾いていた。ギターは何年やっても上手くならなかったが料理は別だ、料理はそこらの喫茶店など問題にしないし、チェーン店のレストラン程度は不味く感じる程の料理が出来るのだ。理由は簡単、基本レシピを暗記して何年も少しずつ改良しているからだ。料理も結局の所暗記力なのだ。
「お~い、飯出来たぞ。」
「「「「は~い。」」」」
なんだかんだ有っても俺はこの世界に馴染んできた様だ、最初は怖かった魔族達も毎日見てたら慣れて来た。尻尾が生えてる奴や羽の有る奴なんか見てて飽きないし、何より考え方がシンプルで分かりやすい。王政ってのは民主主義より俺に向いてるのかも知れないな。