第27話 情報網
「魔王様何してるんですか?」
「コーヒー豆を挽いてるんだ。」
「良い匂いですね。」
俺は今部屋でコーヒー豆を挽いている。女が10人ほどいるので部屋が女臭いのだ、サキュバス達はフェロモンの塊みたいなものだから落ち着かないのだ。それに最近サキュバスの人数が減って魔力の返還が減ると思っていたら、魔女のトランザムの魔力量が凄くて以前より多くの物が取り寄せられる様になったなったのも大きかった。彼女一人でサキュバス20人分位の魔力が有ったのだ、一流の魔女と言うのは本当の様だった、彼女のお陰で今の最大取り寄せ重量は7キロ位になったのでコーヒー豆を取り寄せてみたのだ。
「魔王、私にもくれ。」
「全員分あるぞ。クッキーでも皿に盛っておけ。」
「アル、ミルクと砂糖を用意しろ。」
コーヒーは苦いのでミルクと砂糖を用意する、トランザム何かは一気に飲んで吐き出していた。馬鹿だあいつは。そもそも見るからに怪しげなキノコなんかも平気で食うのだ、見た目は凄い美人なんだが、野生化している残念美人なのだ。
「うわ!苦い!」
「馬鹿、吐き出すな。これは一気に飲むもんじゃないぞ、香りを楽しむもんだ。」
サキュバス達は優雅に香りを楽しみながらチビチビ飲んでいた。ミルクと砂糖を入れてやると更に優雅に飲みだした。やはり慣れないと苦くてきついのだろう。因みに魔族の水は美味しかった、工場も無いし自然が豊かなので湧き水がとても綺麗でコーヒーにも良く合った。一応沸かして飲んでいたがそのままでも十分飲める水だった。
「魔王様、セイロン男爵から通信です。」
「ありがとう、直ぐ行く。」
魔導士の長に貰った通信玉が大活躍だ。これは魔力を流せば話が出来る凄い魔道具だ、勿論俺は魔力ゼロだから使えないのだが、サキュバス達が交代で通信玉を見ていてくれるのだ、話すときも俺の代わりに魔力を流してくれるのでとても助かっている。
「セイロン男爵、こちら魔王だ。」
「こちらセイロンです。勇者の追加情報でございます。」
「待っていたぞ、報告頼む。」
「勇者は一人、仲間が3人いる模様です。この4人がチームを組んで魔族と戦うそうです。」
「ふ~ん、全員召喚者なのか?」
「まだそこまでは分かっておりません。王家に保護されていますので情報が得にくくなっております。」
「そうか、無理はするなよ。バレない様に情報を集めてくれ。」
実際に見てみたいが俺が人間の街に行ったら大騒ぎになりそうだ。俺の世界からの召喚者なら多分何とかなるが俺の知らない未来から来たとかだったら困った事になる、過去から来られても困る。何故なら考えがまるで読めないからだ、予測不能の相手は怖いのだ。
「お~い、サキちゃん。勇者って良くこの世界に現れるのか?」
「たまに来るみたいです、最も魔王と戦う勇者はいませんね。ハーレム作って遊んでる馬鹿ばっかりですね。魔族と戦うと危ないから嫌みたいですよ。」
「そりゃあ俺が勇者で召喚されたら、上手い事言って逃げ出すよな。わざわざ魔王と戦おうとは思わんぞ、大体勇者って勇気がある者の事だよな。俺なら逃げ出す勇気を持つな。」
「ハハハ、魔王が勇者だったら恐ろしいな、いつの間にかやられてしまいそうだ。」
まあ勇者だから俺を殺しに来ると決まった訳でも無いので監視するだけにしておこう、本来なら少しでも危険があるなら即排除するのが正しいとは思うが、同郷の人間を虫けらの様に殺すのは流石に嫌だった。ただしこちらに害が有れば話は別だ、眉1つ動かさずに殺すと思う。
まあラノベの召喚者達も真面目に魔王を討伐するやつはいないし、そもそも現代人が他人の為に苦しい事なんかする訳ないから、少し安心していた。
「それでは今日は何をしますの?」
「今日は、ドワーフ族の所で新しい冷蔵庫の発注だ。」
「冷蔵庫って、魔王様の厨房に有る箱ですよね?」
「あれの改良型をドワーフに作って貰うんだ、今度はもっと長い時間魚や肉が冷やせると思う。」
トランザムのお陰で氷が手に入るので、箱に氷を詰めて魚や肉を保管していたが、やはり長持ちしなかったので、2重構造にして間に断熱材代わりに適当な詰め物をした箱をドワーフに作ってもらいに行った。
「どうだ?こんな2重構造の箱が出来るか?」
「何に使うのだ?魔王。」
「魚や肉を冷やす箱だ、普通の箱より長く冷やせるんだ。」
「面白い、早速作ってみよう、温泉にでも入っておけ。」
ドワーフ達は山の洞窟に住んでいるので、深くて冷えた場所に食料の保管場所を持っていた。冬に運んで置いた氷が夏まで持つ程の深い洞窟が有るそうだ。アンモニアでも作れれば自然気化の冷蔵庫が出来るんだが生成の仕方を知らないから無理だった。この世界だったら素焼きの入れ物で風を当てて冷やす位なのか?まあ魔法を使えば済む問題なのだが。
「魔王様、久しぶりに魔王様の料理が食べたいです。」
「そんじゃ、作るか。」
ドワーフの温泉は山の中なので山菜が豊富だ、それに川が有るので川魚も捕れるのだ。木の芽って天ぷらにすると意外と美味しいのだ、キノコ何かもそうだな。小麦粉と水と卵で衣を作って油で揚げる。つゆは自作のつゆだ、醤油とみりんと水で簡単に美味しい天つゆが出来るのだ。因みに1:1:2の割合で鍋で人にたちするだけ、これに大根おろしとショウガを加えると店と同じ様な天つゆになる。
「熱いうちに食えよ。」
「あち!」
「そこまで急いで食うなよ、トランザム。」
「ほう、タラの芽を食べてるのか。旨そうだな。」
「ミーシャも食べるか?」
「勿論だ。木の芽は私たちも良く食べるのだ。余り美味しくないがな。」
当然のようにミーシャは天ぷらが気に入った様だ。お好み焼きと一緒に温泉食堂で出して欲しいそうだ。油と醤油とみりんが要るので高くなると言ったのだが、構わないらしいので。天ぷらは1000円で売ることに成った。冷蔵庫は中々良く出来ていたので、沢山作って獣人や魔導士の街に売る事になった。儲けの半分は俺にくれるらしい。
「そろそろ金についても考えないといけないな。」
「金?」
「俺達魔族の国とドワーフと獣人の国は使ってる金が違うから商売しにくいんだ、3つの国で金の価値を統一出来たら商売しやすいだろ。物々交換ばかりじゃ売りにくいし買いにくい。」
「そうだな、今度獣人の国の王も入れて3人で話すか?3つの国の銀貨の価値を決めると商売しやすくなるだろう。」
俺の商売が国をまたいでするようになったので、物々交換では困る様に成って来たのだ、どの国も銀貨を使っているので、銀の含有量で価値を統一すると商売がしやすくなるはずだ。そうすれば俺は逃げ出すときも便利良くなるはずなので面倒だが頑張る事にしたのだ。