第21話 ドワーフと遊ぶ
気軽な気持ちでドッチボールをして遊んでたんだが、ドワーフ達はそうは思わなかった様だ。次の日に大勢のドワーフ達が俺の屋敷の周りに集まって周りを整地し始めたのだ。
「なあミーシャ、何やってるんだ?」
「ドッチボールをする広場を造っておる。4面程作る予定だ。因みに我らも真似してボールとやらを造って見たのだ、見てくれ。」
「これは・・駄目だぞ。固くて重すぎるだろ。」
ドワーフ達の作ったボールは革製で中に何か詰まっていた、多分3キロ位有る感じだった。こんなものをぶつけられたら骨が折れてしまう。スポーツじゃない格闘技になりそうだ。
「駄目か・・頑張って作ったのだがな~」
「俺が用意するから気にするな。これは危険だ。怪我すると面白くないぞ。とりあえず予備のボールを貸すから遊んでろよ。」
この世界は娯楽が少ないので、ドッチボールでも楽しんでいる様だった。ドワーフ達は整地をして綺麗にならした所に線を引いて遊んでいた。ボールが足りない分は自作のボールで遊んでいたが物凄いスピードで球を投げあっていた。俺がドワーフ達と遊ぶのは無理だ。体力が違い過ぎる。
「魔王殿。他にも面白い遊びを知っておるのではないか?」
「道具無しで遊べるヤツだよな・・・・相撲?」
「何だそれは?」
「こうやって円を描いてだな、この円から外に出たり、足の裏以外が地面に着いたら負けって遊びだ。」
「そうか、じゃあやるぞ魔王殿。」
「え~、お前女じゃん。ちっさいジャン。」
「ドワーフを舐めるなよ魔王殿。」
小学生位の女の子に本気を出すわけにもいかないので俺はゆっくりと相手を捕まえに行ったのだが、それは大きな間違いだった。
「ぐは~!!」
体当たりされた俺は一撃で円の外に放り出されてしまった。この小娘は見た目よりずっと重い様だ、なにせ80キロ有る俺を簡単に円の外に吹き飛ばすのだから。
「ふ、私の勝だな。魔王殿。」
「もう一度だ、ミーシャ。」
「よかろう。来るが良い。」
「どわ~!!」
俺が悲鳴を上げていたのでドワーフ達が集まって来ていた。皆に見られていたので本気を出したのだが全然勝てない。この小娘は異常に力が強かったのだ、組んだ瞬間に強い事が分かったがここまで強いとは思わなかった。一応柔道や空手はしてたんだがな。
「アル、行け!俺の敵を取るのだ。」
「はい、魔王様。」
アルは牛族なので物凄く力が強い、俺を片手で持ち上げる位のパワーが有る。負けて悔しかったので僕を使って勝つのだ。どうだ魔王らしいだろ?
「うおぉ~!!」
「ぐぬㇴ~!!」
身長160センチ、バスト100センチの牛族のアルと、身長140センチ、ツルペタのミーシャが土俵で組み合っている。力は互角の様だ。周りのドワーフ達も何故か盛り上がって声援を送っている。そういえばミーシャってドワーフ族の姫様だったよな、ちょっと不味かったかな?
勝負の方は牛族のアルが牛らしくジリジリと土俵際に押し込んでいた、ミーシャも顔を真っ赤にして押し返しているが体重差でアルの方が有利だ。
「どりゃ!」
「わ!」
ミーシャがそり投げを打って、アルが見事に引っかかっていた。アルは格闘技の経験が無いので技の受け方を知らないのだ。ミーシャが技まで使うとは思わなかった。
「なんだミーシャって格闘出来たのか?」
「当然じゃな、これでもドワーフ族の長だからな。」
「魔王様すいません負けました。」
「いいさ、投げや返しを知らないと簡単に負けるのはしょうがない。今度教えてやるよ。」
ドワーフ達は姫様が勝ったので盛り上がっていた。男達も沢山円を書いて早速始めていた。背は低いが肩幅や腕の太さを見ると相当な力が有る様だ。姫様であれだけ強いのだから、男たちはどれだけ強いか分からない。体を使った遊びでは俺達に勝ち目はなさそうだ。
「悔しいですわ魔王様。」
「そうか?」
「悔しくないんですか?、魔王様?」
「ちょっと悔しいが、体力に差が有るから仕方ないないな。別の所で勝つことにしようサキちゃん。」
ドワーフ達は背は低いが力が強くて持久力も凄いから身体を使った競技で勝つのは無理だ。無理な事に時間を割くのは馬鹿らしいので自分達の方が有利な事で勝負すれば良いのだ。身体で勝てないなら頭で勝負する事にする。
その日の夜はサキュバス達から沢山魔力を集めてゲームを手に入れた。ゲームなら体力は要らない、頭で遊ぶのだ。
「魔王様、何ですかこれ?」
「オセロとトランプだ。使い方を教えるぞ。」
オセロは簡単なので、サキュバス達は直ぐに覚えた。トランプも簡単な7並べやババ抜きから教えていくと段々分かって来た様だ。
「魔王様、もう一度お願いします!」
「もう眠いんだが・・」
「負けたら脱ぎますからお願いします!」
「良し!かかって来いサキュバス共。」
やればやるだけ面白く成って行くのでサキュバス達は中々止めてくれなかった。夜に弱い俺はもうヘロヘロだ、サキュバス達は夜に異常に強いので裸にする前に俺の方が裸にされてしまった。どうやら俺は運が無いのでゲームでも負ける様だ。
そして次の日、午前中にドワーフ達とドッチボールと相撲をしてぼろ負けした俺達は、午後からオセロとトランプを引っ張り出し、何も知らないドワーフ達をイジメてやったのだ。しかし、ドッチボールや相撲が偉く気に入ったドワーフ達は俺達の色んな物をお土産にくれた。
「魔王殿、これはドワーフ族からの送り物だ。また面白い遊びが有ったら教えてくれ。」
「こんなに貰って良いのか?くれなくても教えるぞ。」
「借りっぱなしは気持ち悪い。何時でも遊びに来てくれ魔王どの。我々ドワーフ族は皆で歓迎する。」
どうやら俺はドワーフ達に気に入られたらしい。やっと逃げ込む先が出来そうだ。苦労した甲斐が有った・・・って全然苦労してないな、サキュバス達と温泉に入って遊んだだけだった。まあ、運が良かったんだろうな。