第20話 温泉とスポーツ
東の国と南の国が戦争を始めたが俺は無視して温泉の整備に精を出していた。東も西も南も人間の国なんて俺にはどうでも良かった。俺は自分の秘密基地が立派になればそれで良いのだ。一体何が欲しくて戦争なんか始めるのか元サラリーマンの俺にはサッパリ分からなかった。ただ歴史上何度も火事場泥棒する国が有った事は知っていたので、こうなる事は予想の範疇だった。
「お~い、サキちゃん。温泉の方はどうだい?」
「魔王様、温泉の方は家具や寝具も揃って。石鹸等の備蓄も1か月分貯めました。」
「そうか、頑張ったもんな。ドワーフに家具の代金の酒と魚を持って行こう。」
秘密基地と言うからには俺が引き籠っても生活出来なくてはならない、つまり今のうちに運べるものは全て運ぶのだ。サキュバス達の頑張りで塩や砂糖、カレーのルウ等こちらで手に入らない物はかなり運び込んだ。今度は実際に暮らしてみて足りない物をピックアップするのだ。しかし、秘密基地だけに関わってると周りの目が煩いので、魔族の国の事も考える振りをしなくてはならなかった。
「オルフェイス、国境に造った3つの砦はどうだ?」
「現在完成して、人員の配置を行っています。我々4天王の部下を配置する予定です。シルフィーネの部隊は空から偵察してもらってますから除外する予定です。」
「よし、それで良い。必ず足が速いか者か、空を飛べる者を入れておけ。緊急時には早く知る必要が有る。」
「人員はどの位にいたしましょう?」
「魔族の国に入る関所みたいなものだから、10人位で良かろう。」
「了解いたしました。」
国境の砦と言っても大した事はなかった、田舎道に門と柵、兵隊が住む平屋の建物が有るだけだ。今まで自由に魔族領に人間が入っていたので、関所を造ったのだ。その気になればスパイが関所を迂回して入って来るだろう、だが関所を迂回すればそいつはスパイだという事だ。捕まえれば死刑だ。
この位働けば疑われないだろう。俺は更に難しい顔をして考える振りをしておいた、本当は温泉に持って行く娯楽用品について考えていたのだ。
「オルフェイス、では後の事は頼むぞ。俺は1週間程姿を消す。」
「どういう事でしょうか?魔王様。」
「ふふ、秘密だ。」
「魔王様が秘密にされる位ですからさぞかし凄い事なのでしょうね?」
「ふふ、知れば驚くだろうな。」
俺がサキュバス達と別荘に行くと知っても驚かないだろうが、その別荘は俺が魔族から逃げる為に必死に造った物と知ったら凄く怒るだろう。
「ハハハ~、フハハハハハ~!」
「魔王様楽しそうですね。」
「ああ楽しいぞ!綺麗なお姉さんたちと1週間の温泉旅行だからな!ハハハハハ~!」
俺は今ケルベロス犬車の中に10人の美人達に囲まれて高笑いしていた。皆美人でプリンプリンなのだ!だが皆サキュバスなので精力を吸われれば俺は干からびて死んでしまうのだ。フグみたいなもんだな、美味いけど危険なのだ。安全なのは獣人族のアルちゃんだけだが、尻を撫でたら牛族の力を見せられて酷い目に会ったので自重するのだ。
「あっそうだ、アルちゃん森の中で食い物探して行こう。」
「森の食べ物ですか?狩の道具は持って来てませんよ。」
「狩じゃなくて、拾って行こう。楽だから。」
「果物とかキノコですね?」
「それにドングリとかも取ろうぜ。アルちゃんなら美味しいドングリ分かるだろ?」
「渋くないドングリの事ですか?」
「それそれ、ドングリラーメンやドングリコーヒー、ドングリ料理を作るぞ。」
「それじゃあ魔王様、私たちは果物とキノコを集めますね。」
今回はサキュバス達が沢山居るので食料も沢山要るのだ。昔から興味のあったドングリ料理を1週間で極める事にする。とは言っても俺はドングリに詳しく無いからアルに聞くことにしたのだ、アル達牛人族は食い物が無い時にドングリや草を食べてたらしい。
流石は手付かず森、1時間ほどでドングリ2キロと沢山キノコが採れた。サキュバス達は料理上手なのでキノコの種類もちゃんと知っていた様だ。サキュバスが精力さえ吸わなければ良い嫁になるんだがな~。美人で料理上手、そして夜は最高。死なないなら嫁に欲しいぞ。
「魔王様いらっしゃいませ。」
「おう、1週間世話になるぞ。」
俺の露天風呂は既にサキュバス達に乗っ取られていた。肌に効果が有る事が分かったら、サキュバス達は交代で露天風呂に泊まりに来ていたのだ。そして俺の別荘はサキュバス達の旅館となっていた。俺の秘密基地のはずがサキュバス達の保養所となったのだ。もう秘密でも何でも無いな、しかし世間を誤魔化すには都合が良い。ここはサキュバス達の温泉って事にしておこう、俺が隠れやすくなるはずだ。
「魔王殿、一体何を食べてるのかな?」
「お~、ミーシャいらっしゃい。ドングリ料理だ。」
「ドングリラーメン、ドングリコーヒー、ドングリお好み焼き。苦労して俺達が作った料理だ。」
「私にも頂けるか?」
「良いぞ、でも味は余り期待しないでくれ。」
俺達は頑張ってドングリの灰汁抜きをしたり、炒ってすりつぶしたりして粉にした物を使って色々作ってみた。普通の小麦粉に混ぜて使ってみたので普通に食べられたが、別段美味しいものでは無かった。でも食えるのである程度は集めておいても損は無いだろう。
「おいしいじゃないか!私たちのドングリ料理とは比べ物にならないぞ。」
「え、ドワーフ達もドングリ食べるの?」
「食べるぞ、貴重な食料源だ。これは小麦に混ぜて使ってるな、量が増えて腹が膨れる。」
「じゃあ飲むか?ドングリコーヒー蜂蜜入り。」
「飲む。」
ドワーフの姫にはドングリ料理は好評だった、日頃から食ってるらしい。ドングリコーヒーなんかは全然コーヒーじゃ無いけど、蜂蜜入りの暖かい飲み物として好評だった。早速ドワーフ達も真似して作るそうだ。
「所で、あっちでサキュバス達がしてるのは何じゃな?」
「あれか、あれはドッチボールって遊びだ。」
「面白そうだな。」
毎日サキュバスと温泉に入ったり、料理を作ったりするのは楽しかったがそればかりでは飽きるのだ、皆で遊べるスポーツをやろうと思って考えたのが、俺が小学生の頃昼休みに流行ってたこれだ。今なら何故流行ったか良くわかる。ボール一つで遊べるからだ。おまけにルールも簡単だ、今はサキュバス達が5対5で遊んでいる。美女10人が薄い服でドッチボールをするのは素晴らしい、俺はこれを魔族の正式競技にしようと本気で思っている。服装はテニスみたいなミニスカが良いな。男は気持ち悪いから出場禁止な。
「どりゃ!」
「きゃ~!!」
ドワーフ族の女王が力一杯ボールを投げている、流石ドワーフ凄い力だ。身体は小さいのにバレーボールを100キロ以上のスピードで投げている。しかし、うちのサキュバス達は運動神経も見た目も最高なのだ上手くかわして反撃している、見ていて結構面白い。
「いや~、男爵、面白かった。ドワーフ族を今度集めるから試合しないか。」
「面白そうだな、一番強いチームにはウオッカでも出すか?」
「ならばドワーフ族は珍しい宝石を出すぞ。」
「試合の後は皆で温泉に入って、バーベキュー大会だな。祭りみたいなもんだな。」
ドワーフ達は飯を食うのも遊ぶのも大好きな様だ、これなら俺と上手くやれそうだ。一緒に遊んで親睦を深める事にしよう。