第19話 温泉
あれから俺はサキュバス達と毎晩頑張って石鹸・シャンプー・ウオッカを貯めまくった。そして魔族の領内で買える物はアルと一緒に買いまくった。保存食料や食器などだ。魔力での召喚は兎に角燃費が悪い、サキュバス20人分の魔力で5キロ程なのだ。こちらで買える物は買った方が良い。
ウオッカ20本とシャンプー石鹸等を貯めこんだ俺はドワーフ族の温泉に行く事にした。今回も俺とアルとサキの3人での小旅行だ、今回は向こうで1泊する予定なのだ、サキュバス達全員が付いて来たがったが、家が出来ているかどうか分からないので今回は我慢して貰った。
「それじゃサキュバス達、留守番頼むぞ。」
「ついて行きたいですわ。」
「早く帰って来て下さいね、魔王様。」
「うむ、ちゃんと魔力を貯めておくのだぞ。」
こちらに来て3週間、戦争上手の絶倫魔王と呼ばれる様になった俺はケルベロス犬車でドワーフの温泉に向けて出発した。今回は前回よりも更に荷物が多かった。ドワーフ達に支払うウオッカや魚の他にも自分たちで使う日用品を積んでいるためだ、いわばプチ引っ越しだった。俺はその内魔族から逃げ出して温泉に住む予定だったからあっちも快適に住める様にするのだ。
「こんにちはドワーフの皆さん、お疲れ様です。」
「魔王様いらっしゃいませ、露天風呂は出来ていますが家はもう少しかかりますよ。」
「露天風呂を見ても良いですか?」
「どうぞ、我らドワーフの自信作です。」
ドワーフ族の山の中にある露天風呂は石で出来た立派なものだった。浴槽が2つ有り1つが6畳程の広さの物が2つ並んでいた。1度に20人は入れる感じだ。そして湯船の周りはこれまた石で出来た立派な床になっていた。そして露天風呂の周りは木の壁が作られて周りからは見えない様になっていた。
「素晴らしいですね、浴槽が2つ有るのは男湯と女湯ですか?」
「そうです、間に仕切りを付ける予定です。」
「いりませんわ。」
「要らない?」
「一緒に入りますから、要りませんわ。魔族の決まりです。」
「え~と、そんな決まりが有ったのか?サキちゃん。」
「いま作りました。私裸には自信がありますの、見られて恥ずかしい事は有りませんわ。」
「そうか、じゃあ要らないな。」
ドワーフ達は驚いていたが俺にはサキちゃんの気持ちが分かった。彼女達は毎日物凄い努力をして体を維持しているのだ。毎日4時間のトレーニングと料理や裁縫や礼儀作法等、彼女は男に好かれるために日々戦っているのだ、そして彼女達の身体は鍛え上げられた武器なのだ。それを誇りに思っているのだろうと俺は思った事にした。ぶっちゃけ俺は彼女達と一緒に露天風呂に入りたかったのだ。
「魔王殿、久しぶりです。」
「やあミーシャ、久しぶり。代金のウオッカが集まったから持ってきたよ。魚も有るよ。」
「何だと早いな、では早速宴会だな。」
俺は見た、ウオッカ3本を自分のカバンにしまう所を、彼女はかなりの酒好きの様だ。俺の家を建ててくれているドワーフ達10人と今度は宴会だ。俺は晩飯に持って来た肉と野菜を焼いてバーベキュー大会を始めた。
「うお~!!!美味い!!」
「何だこの味!最高だ!」
「この酒うめ~!!」
俺は今回焼き肉のたれを持って来たのだ、塩味しか知らないドワーフには驚きの味だろう。家のサキとアルも黙々と食っていた。何か言えよ、俺が寂しいじゃないか。
「魔王殿、このタレを売ってくれ!金なら幾らでも払う!あとウオッカも頼む。」
「これも中々手に入らないんだ、手に入ったら持ってくるよ。あ、それからウオッカは凍るほど冷やして氷と一緒に飲むと美味いぞ。」
「サキちゃん、氷頼む。」
サキュバスのサキちゃんも簡単な水魔法や氷魔法が使えたのでコップに氷を造って貰った。
「ほれ、飲んでみろよミーシャ。」
「うむ、頂こう。」
「お~、更に甘みが増すな!」
バーベキュー大会が終わった後、俺達は露天風呂に入ってのんびりした。何故か酔っぱらったミーシャまで風呂に来たので一緒に入った。サキちゃんが石鹸やシャンプーの事を教えてやると興奮していた。
「魔王殿、これ売ってくれ!金なら幾らでも払う!」
「じゃあ、家の中に家具作ってくれ、代わりに石鹸とシャンプー持ってくるよ。」
「そんな事で良いのか任せておけ。しかし、風呂とは良いものだな。ドワーフ用の露天風呂も作るか。」
「それじゃ、一緒に経営しようぜ、食い物なんか出すとお客さんが来るぞ。」
「あのタレが有れば、毎日食いに来たいな。」
「あれも中々手に入らないからな~。魔力がいっぱい有れば良いんだがな。」
「ドワーフは魔力が殆ど無いから期待しないでくれ。」
こうして俺は露天風呂付の別荘を手に入れた。バーベキューとウオッカを奢ってやったドワーフ達は予定では平屋の建物だったハズなのに、2階建ての立派なログハウスを建ててくれた。1階が4部屋で2階も2部屋有る立派やつだった。部屋の広さは一部屋10畳程だ、俺は2階を一部屋確保した。何故か他の部屋はサキュバス達の物になっていた。まあ彼女達は非常に優秀なメイドだし、彼女達の協力が無ければ石鹸もシャンプーも手に入らないから別に構わないけどね。アルは2階の俺の隣の部屋をサキと一緒に使う様だ。
「フハハハハハ、やっと別荘を手に入れたぞ~!」
「良かったですね魔王様。」
「これでツルツルの肌が手に入りますわ。」
俺は魔王城に帰って又もや毎日サキュバス達から魔力を吸い取り色んなものを取り寄せていた。俺があんまりドワーフ領に行くと怪しまれるので。石鹸やシャンプー日用品などはサキュバス達に交代で持って行って貰った。温泉の効果は絶大でサキュバス達は喜んで俺の運び屋となっていた。毎日サキュバス達をこき使っていたので、俺は絶倫魔王から鬼畜絶倫魔王へと称号が変化していた。。魔族や獣人は俺と目を合わせない様になっていた。勿論俺は全然気にしない、怖いから元々目を合わせない様にしてたからな。
「魔王様、一大事で御座います。」
「どうした、オルフェウス?」
「南の国が東の国に攻め込みました。いかがいたしますか?」
「どうもしない。」
「しかし、これでは南の国が強くなってしまいますぞ。」
「南が強くなるのは何年も後の話だオルフェウス。」
「どうしてですか?人間が増えて領地も増えますが?」
「東の国は俺達がボコボコにしたから、兵士も食料も財宝も無いだろ。そこを取っても食料支援や治安の維持とかで南の国から持ち出しが多くなって両方の国が貧乏になるんだ。回復するのに多分5年以上掛かると思うぞ。」
「ほ~、ではそれまでは魔族は安泰ですな。」
「まあ、強くなりそうなら内部からズタズタにすれば良いだけだ。簡単だろう?」
「なるほど魔王様は恐ろしいお方ですな。私如きの及ぶところでは有りませんでした。」
「まあ、南と東に入り込む部隊を今から作っておいた方が良いな。誰か気が長くて目立たないやつが居るかな?」
「潜入用の魔族ですな、適任者が一人居ります。セイロン男爵という者を向かわせましょう。彼なら目立たず情報収集してくれるでしょう。」
「任せるぞ、オルフェウス。」
人間共は必ず東の国に食いつくと思っていた俺は驚かなかった。戦争で弱った所を火事場泥棒する国は多いのだ。人間は口では綺麗事を言っても強欲な連中ばかりなのだ。人間も俺を見習って欲が無ければ幸せになれるんだがな~等と鬼畜絶倫魔王は思った。