第18話 ドワーフ族
東の国の兵士をぶち殺して国の財宝を奪った為に俺は東の国の人間からは悪魔と呼ばれているらしい。まあ魔王と悪魔がどう違うのか知らないが凄く嫌われている事は良く分かった。そして今度は西の国の交易船をドラゴンで沈めまくり、交易破壊で西の国を脅して毎年金と物を脅し取る事に成功してからは、俺は西の国の人間からも物凄く嫌われる様になったそうだ。
俺から言わせると、東も西も俺達の国を攻めて来た侵略者なので迎撃しただけなのだ。金や財宝を奪ったのも迎撃に金が掛った分と賠償金を取っただけなのでごく普通の事だ。相手国の人間を虐殺したり奴隷にするのが通常のこの世界では、俺のやり方は極めてスマートなのだが人間達は評価してくれなかった。
「え~、俺そんなに東と西から嫌われてるの。」
「勿論です魔王様、人間に嫌われ恐れられるのは魔族には名誉な事です。」
「攻めて来た兵隊しか殺してないし、金と物しか取らなかったんだから感謝して欲しい位だけどな。」
「流石は魔王様。敵に感謝しろとは素晴らしいお考えです。このオルフェイス考えが甘かった様です。」
「まあいいや、オルフェイス。東と西はちゃんと監視しといてくれよ、復讐とか言い出す馬鹿が必ず出て来るからな。」
「分かりました、シルフィーネの監視部隊に伝えておきます。」
俺は戦争が終わってからもシルフィーネの部隊には空からの監視活動を続けさしていた。国境沿いに監視用の砦も現在造ってる最中だ、勿論その金は東と西から分捕った金だ。そして魔族領に住んでいた獣人達を雇って砦を作らせているので獣人達は俺に感謝していた。言うなれば公共事業だな。そして金を稼いだ獣人は魔族内で金を使ってくれるので魔族領はとても景気が良く成っていた。
「それじゃ俺はドワーフの所に行って来るから、後の事は頼むよオルフェイス。」
「行ってらっしゃいませ魔王様。今度はドワーフ族を従えるおつもりですか?」
「いや、仲良くしたいだけだ。敵は人間だけで十分だ。」
東と西の国に嫌われた俺は早く逃げ場を探す必要が有った。頭のおかしい奴が暗殺しに来るかもしれないからだ。人間なんて簡単に死ぬから油断は出来なかった。ドワーフ族は人間が住んでないし、見た目ですぐ分かるので人間から隠れるのに都合が良いのだ。
「サキ、アル、ドワーフ族の所に行くぞ。」
サキュバスの族長サキちゃんは石鹸とシャンプーと美味しい食べ物のせいですっかり俺の味方になっていた、俺が死んだら石鹸もシャンプーも手に入らなくなるので、サキュバス族全員で俺を守るつもりだった、牛人族のアルも、俺が公共工事で牛人族を優先して雇ったので牛人族から大事にされて。俺を命に代えても守る様に族長から言われたそうだ。そんな訳で俺は彼女達を一応信頼していた。
「お土産はこれでよろしいですか?」
「ドワーフ族は食い物を欲しがるからこれで良いんじゃないかな?」
「西の国から分捕った魚と魔族領で出来た果物、それと召喚した酒ですか。」
「うん、見事に金が掛ってないな。」
「召喚した酒はウオッカだった。重量制限が有るのでアルコール度数が高くて美味しい酒となるとこれが一番好きなのだ、バーボンやテキーラより寒い所で飲むと美味いのだ。」
そして何時もの様にケルベロスの犬車に乗って国境沿いの畑に3時間程の小旅行だ。今回は馬車に荷物を満載しているので、ケルベロスも少し疲れた様だ。いつもこき使って可哀そうなので積荷の魚をやったら喜んで食っていた。どうやら何でも食べる様だ。
「魔王様こんにちは、視察ですか?」
「ドワーフの姫様に送り物を持って来たんだ。」
「ありがとうございます。姫様は川向うの畑におります。」
「そうか、行って見るよ。魚持ってきたから後で分けて貰うと良いよ。」
「ありがとうございます。魔王様。」
ドワーフ達が掛けた橋を渡ってドワーフ領に入る。橋の長さは30メートル位だ、ドワーフは金属加工をしているので木工は楽勝の様だ。木で出来た立派な橋だった。畑を造っている大勢の中にドワーフ族の姫様がいた、小柄なので作業はしていないが指揮を執っている様だ。
「姫様こんにちは。」
「魔王様お久しぶりです。」
「今日はお土産を持ってきましたよ。」
姫様にお土産を渡したらその場で皆で魚を食べる事に成った。日持ちしないから早く食べた方が良いのだが本人が直ぐに食べたがっていた様な気がしたのは気のせいかも知れない。川向うで作業していたドワーフも呼んだので全部で40人程の宴会だ。森で狩った鳥を焼いたり、スープを作ったりと大忙しだ。持ってきた魚と果物も食べていた。だが一番好評だったのはやはりウオッカだった。3本しかないので一人にはわずかの量しか無かったが皆気に入ったらしい。
「いや~海の魚も美味かったが、この酒は素晴らしいな。金なら幾らでも払うから売って欲しい。」
「これは売るほどないんだ、滅多に手に入らないもんだからな。」
「そうか、残念だ。」
「手に入ったら又持ってくるよ。姫様。」
「今度はドワーフの国に遊びに来てくれ魔王、歓迎したい。」
「ああまた来るよ、それより俺が気になるのは山の煙なんだが、あれは湯煙か?それとも噴煙か?」
「ああ、あれはお湯が出る場所だ、手足を洗うのに重宝している。」
「成程温泉か。」
「魔王様、温泉って何なのですか?」
「サキちゃん、温泉に入ると肌が綺麗に成るぞ。」
「何ですって、今すぐに行きましょう魔王様。」
サキュバス族は見かけを物凄く大事にするのだ、なにせ魅力はは彼女達の生命線なのだ。美貌の為なら何でもするのがサキュバス族だ。
「温泉ってそんなものだったのか。」
「ドワーフ族は温泉に入らないのか?」
「我々はお湯に浸かる習慣はないな。」
「そうか、じゃああの温泉の権利をさっきの酒10本で売ってくれないか?」
「良いぞ、我々は手足を洗うだけだからな。」
俺はドワーフの姫様に温泉の権利を売って貰った、ウオッカ10本で。肌が綺麗になるのでウオッカの取り寄せにサキュバス達も協力してくれるはずだ。あそこに風呂を造って、ついでに隠れ家も建てれば俺の秘密基地になるに違いない。温泉に入って隠れるとは何て素敵な秘密基地だろう。
俺は姫様の気が変わらない内に現地に行って、露天風呂と小さな家を建てて貰う事にした。代金は魚とウオッカで良いそうだ。魚は西の国からただで毎月手に入るし、ウオッカはサキュバスの魔力で交換出来るので良く考えたらタダで秘密の温泉基地が出来た訳だ。城に帰った俺は毎晩サキュバス達から魔力を吸い取ってせっせとウオッカとシャンプーと石鹸なんかを交換した。サキュバス達は毎晩ヘロヘロになりながらも俺の肌が綺麗になる、つるつるの肌になると言う言葉を信じて頑張っていた。
毎晩やつれていくサキュバス達を見て魔族領の者達は、俺の事を絶倫魔王と言って恐れていた。女の魔族や獣人の女は近づくと妊娠すると言って俺を避ける様になった。とうとう魔族や獣人からもバイキンの様に思われる様になったが俺は全然気にしなかった。俺は秘密基地が有れば生きていけるのだ。