第13話 賠償金
ドワーフ達にちょっぴり恩を売ったが俺は全然安心してなかった。この世界に信用できるヤツは一人もいないのだ、魔王なんだが魔族も勿論信用してない。人間の俺なんか簡単に裏切って殺すだろうと思っていた。そこで今度はドワーフ族の隣に有る獣人たちが住んでる国と仲良くしようと画策していた。そうした矢先に賠償金の知らせが入って来た。
「魔王様、東の国から賠償の品が届いております。」
「へ~、見に行こう。」
賠償の品と言っても、向こうの国が払ったわけではない。バルトやオルカが東の国に攻め込んで国の宝物庫から強奪してきた物だ。敵の兵隊は総崩れになったので魔族軍を止める者は誰も居なかったのだ。軍隊のいない国なんてこんなもんだ。
「魔王様、ご覧ください。敵の宝物庫を空にしてやりましたぞ!」
「おお良くやったぞ、バルト、オルカ。」
2人の将軍が喜色満面で俺の前に居た。敵兵を蹴散らし敵本国までいって、敵の財宝を強奪してきたのだ、無意味な行動の様な気もするが豪胆な行動なのは間違いない。
「素晴らしい戦果だ、明日記念式典をする。お前たちはゆっくり休んでくれ。ご苦労だった。」
「はい魔王様、ありがとうございます。」
2人の将軍が捕って来たのは宝石とか金貨とか剣とか食えない物ばかりだった、俺はこんなものには興味が無いので4天王に配る事にした。
「オルフェイス、これの半分を4天王にやるから分けてくれ。残りは公共工事に使うからしまっておいてくれ。」
「えっ、我ら4天王に半分下さるのですか?」
「半分じゃ少なかったか?」
「いえ多すぎる位です、前魔王は全て人占めでした。」
「それじゃ、それで良いじゃないか。俺は独り占めなんかしないぞ。良い魔王だからな。」
「・・・良い魔王ですか、確かに気前は良いですな。」
魔族にも親切にして評判を良くしないといけない。俺はまだ信用できる人物も逃げ込める場所も持って無いのだ。最低でも逃げられる場所を2か所、出来れば3か所欲しかった。賢いキツネは巣穴を沢山持ってる物なのだ。それにこの宝物はあいつらが持ってきた物なので全部配っても俺の物じゃ無いので全然惜しくなかった。
「そう言えば西の国はどうなってる?」
「毎日シルフィーネがドラゴンで嫌がらせを行っています。」
西の国も魔族に戦争を仕掛けて来た国だ、国境沿いで迎撃したが俺は忘れた訳でも許した訳でも無かった。西の国は港を中心に交易と漁業で盛んな国だと言うので、シルフィーネのドラゴン部隊で交易船や漁船を毎日襲わせていた。その内音を上げて使者を寄越して来るだろう。このままでは国が傾くからな。そして使者が来たら、毎年魔族の国に上納金を払わせるつもりだ。断ればドラゴンが船を沈めて回るだけだ。そして国が亡ぶ訳だ。
「よしよし、さて幾らふんだくってやろうかな。へへへ。」
「流石は魔王様、容赦有りませんな。」
まあ俺としては金なんかより魚を貰いたかったのだ、畑の肥料にもなるし食料にもなるのだ。干せば結構日持ちもする優れものなのだ。まあ金も取って兵隊を雇えなくするつもりも有った。
「シルフィーネにジャンジャン船を沈めろって言っておけ!」
「はい、魔王様。」
「俺はこれから獣人国の調査に入る。邪魔をしないように。」
獣人の国の調査と言っても別に獣人の国に行くわけではなく、牛族のアルに話を聞くだけだ。ついでにサキュバスにも話を聞いてみる事にする。
「魔王様、お茶が入りました。」
「ありがとう、アル。一緒にお茶を飲もう。」
「駄目で御座います、魔王様。メイドを甘やかしては行けません。」
「サキちゃんも一緒にどうだ?」
「勿論頂きますわ。」
お茶を飲みながら獣人の国の事を色々聞いてみた。獣人の国には人族も住んでいるのだそうだ。獣人は人族が嫌いなのだが、獣人の国に住んでいる人たちは魔女や魔導士と言われる人間なのだそうだ。彼らは普通の人間から迫害を受けて獣人の国に逃げて来たらしい。
「獣人と魔女達は仲良くしてるのかい?」
「仲良くしてますよ、魔女さんや魔導士さんは不思議な力が有って、病気や怪我を治してくれたりするんですよ。」
「魔族と獣人って仲悪いのか?」
「別に悪くは無いですが、良くも無いです。魔族が獣人を使役しているのは昔からですから。」
「使役ってなんだ?」
「獣人国から毎年我が国に獣人が働きに来るのです。何年か働くとまた獣人の国に帰ります。その間の給金は殆ど有りません、食事や寝る所は面倒見ますが。」
「ここで仕事や字を覚えたりして国に帰るんです、私達獣人は頭を使うのが苦手なので魔族に色々教えて貰うのですよ。」
なるほど、それで俺が給料を払ったら喜んでいたのか。でも字を覚えたりするなら学校でも作れば良いんじゃないか?仕事もついでに学校でも作れば良いのと思うのだがどうなんだろう。
「学校とか無いのか?」
「無理ですよ魔王様、獣人は種族同士で仲が良かったり悪かったりして全然纏まらないんですから。魔族が指導するしか無いんですよ。」
「やっぱり犬族と猫族って仲悪いのか?」
「仲がいい者達もいますけど、大体仲が悪いです。一緒に仕事をするのは無理な種族です。」
獣人と仲良くしたいが、どうも種族毎に性格が違う様だ、全部と仲良くするのは無理なので一番正直で信頼のおける相手を教えて貰う事にした。
「人間と仲良くしたがるのは犬族が一番ですね。忠誠心も凄いです。」
「そうか、それじゃあ犬族に会いに行こう。」
俺はあまり犬が好きじゃないが仕方ない。色々な種族を見てればその内俺に協力的な種族も見つかるだろう。というか見つかってくれないと困るのだ。一人でサバイバルは面倒くさいのだ。こうして見るとサラリーマンは楽だったな~と思う。会社に行ってタイムカードを押すだけの簡単な作業で毎月給料を貰えたからな。あ~元の世界に帰りたい。