第124話 ドワーフの国2
朝からいい匂いが辺に漂っていた、焼きたてのパンの匂いだ。
「おはようサキュバス達、パン焼いてるのか?」
「おはようございます魔王様、朝食用のパンを焼いています」
「魔王おはよう、私はスープを作っているぞ」
「私はフライドポテトなのじゃ」
うむ、魔王になって一番嬉しい朝かもしれん。俺の女共が俺様の為に朝飯を作っているのだ。昨日は温泉で色々なサービスをしてもらい。夜はミーシャにたっぷりとサービスをしてもらって、朝はこれだ。魔王って良い仕事かもしれんな。
いそいそとパンを焼いてハンバーガーを造ってるサキュバス達とスープを作っている第1婦人のマーガレット。ドワーフの国の特産品となりつつ有るフライドポテトを揚げているドワーフの王女で俺の第2婦人のミーシャを見て俺はそう思った。ふむふむ可愛い奴らだ、俺をもっと甘やかすのだ。
「じゃあ、俺はコーヒー入れるね。今日はキリマンね」
貧乏性の俺は嫁やサキュバス達が働いている時にふんぞり返って見ている様な事は出来ないので。早速人数分のコーヒーを入れ始めるのだった。そして手元を隠して見えなくしているとサキュバス達が寄ってきて手元を見ようとするので胸が当たって楽しいのだ。「わははは~苦しゅうない。ちこう寄れなのだ!」
皆で朝食を食べているのだが、ハンバーガーにコーヒー。そして7人の美女達はジャージの上下、勿論俺も黒のジャージの上下なので周りから見ればここが異世界だとは見えないだろう。そして美人に囲まれて食べる食事は5割増で美味しいのだ。
「魔王、今日は何をするのだ?」
「今日は、船の推進装置の実験だな。ちゃんと動くかどうか実験する」
「ちゃんと動くのは間違いない、何度も試してみた」
「ドワーフは4人居るのか?」
「4人どころかウジャウジャ居るぞ、新しい物の実験なので皆興味深々なのじゃ」
朝食を食べて、実験する為に川のほとりに来ている。流れが緩やかで少し広くなってる場所だ、既に大勢のドワーフが集まって来て船の調整をしているようだ。
用意してもらった船は2隻、スクリュー装備の船。もう1隻は普通の手漕ぎだ。
「「「「「「魔王様、おはようございます」」」」」
「おう!皆おはよう!早速始めよう、川に並べて船に乗り込んでくれ」
長さ5m位の小型の船に乗り込んでもらう、同じくらいの力の者を選んで貰っているので条件は同じになるはずだ。ドワーフは力が強いので多分両人ともに1馬力は軽くある。1隻は人力でスクリューを回す船、自転車を漕ぐとスクリューが回転する様にしている。そしてもう1隻は手漕ぎの船だ。
「よ~し、実験開始!」
「両名とも!死ぬ気で漕ぐのじゃ!」
王女の命令に従ってドワーフ2名は顔を真っ赤にして船を漕ぎ出した。川の上流に向かって漕いでいるのにやたら速い。手漕ぎボートも想像以上に早かったが、スクリュー装備の船はキャビテーションを起こすくらいの回転速度で船首に白波が立っていた。
「「「「うわ~!すげ~!なんちゅう速度だ」」」」
「ほ~、凄い物じゃの~!」
俺達全員で川の上流に向かって走っている。手漕ぎの船は俺達の歩く速度位、スクリュー船の方は俺達が走る位の速度が出ていた。川の上流に向かって進んでいるので実際の速度はそれプラス川の流れの速度に成るわけだ。
「どうだミーシャ、凄いだろう」
「凄いのう!これは売れるのじゃ!」
この後ドワーフ達は入れ替わり立ち代りスクリュー船を漕いで実験していた。長時間運転試験になって丁度良いのでそのままにして壊れるまで遊んでもらう事にした。
「魔王!凄いのじゃ。流石我が夫だけの事はある!」
「「「「「「魔王様ばんざ~い!!!!」」」」」
ドワーフ達の賞賛を浴びていい気分だ。どうやら俺が飯を作るのが上手いだけのオッサンじゃ無い事が解った様だ。そうだ俺様を崇めて甘やかすのだ!さすれば貴様らに英知を与えてやろう。
「ワハハハ~!!!!我を崇めよ~!!!!」
ーーーーーー魔王!魔王!魔王!魔王!ーーーーーーー
「相変わらず絶好調だな。ウチの魔王」
「魔王様は凄いですからね、色々と・・・」
「そうだな、何をやらせても規格外だからな」
「うむ、想像の斜め上や真下をやらかすからな」
「私達がしっかりしないといけませんね。マーガレット様とミーシャ様は頑張ってくださいね」
「うむ、調子に乗るからのう・・・少しは自重してくれると助かるのじゃがのう」
すげ~気分の良くなった俺はドワーフ全員の前で講義を行った。動力部の耐久試験のやり方や自転車のペダル部分を連結する方法等だ。教える度に賞賛を浴びて益々調子に乗った俺は、魔力変換で扇風機のファンを色々出して皆に見せたら大受けした。
「ワハハハ~、これを金属で造って船に付けるのだ。大きさは漕ぎ手の人数に合わせて調節するのだ!」
「うお~スゲ~!3枚羽、4枚羽、5枚羽だぜ!カッコイイぜ!」
十分賞賛を受けた俺は満足したのでドワーフ達と宴会を始める事にした。丁度川原に居たのでいそいそとバーベキューの支度を始めるドワーフ達。俺が来ると必ずバーベキューと相撲が始まるのでちゃんと用意してきた様だ。そう言えばこいつらとの付き合いは結構長いな。
そしてドワーフから上がる第絶賛!今日一番賞賛を受けた様な気がするのは多分気のせいだ。
「ウオッカだぞ~!貴様ら飲め!」
「うわ~!待ってました!」
「玉屋~!」
興奮して走り回る奴、涙を流して喜ぶ奴、大声を上げて感動している奴。ドワーフがこの世で一番愛している酒ウオッカ。気分が良いので今日は10本出してやったが多分一瞬で無くなるのだろうな。
そして何時もの様にバーベキューを食べて大いに盛り上がった。酒盛りをしている間に2隻の船は川に流されて無くなってしまったので後で大騒ぎになった。
「ミーシャ、後は頼んだぞ」
「うむ、任せるのじゃ。これだけ指示してもらえば大丈夫じゃ」
「じゃあ俺は西の国の王様に会って来るからな。あそこを母港にする予定だ」
「頼むぞ魔王、愛しておるぞ」
「ハハハ、現金な奴だな!」
ミーシャにはスクリュー船の動力部、10人でスクリューを回す推進装置を2機付けた実験船の設計図を渡していた。帆船のマストや帆、手漕ぎのオール部分が無いので軽くて低重心の船だ。船を造る木材は以前森を切り開いた時の木が丁度乾燥が済んで大量に有ったので有効利用する事にした。金属加工から比べると木材の加工は楽なのでドワーフ達なら何とかするだろう。
俺がドワーフの国から離れた日から船の制作は始まった。全長25mの2軸スクリュー船の制作開始だ「クイーン・ミーシャ1世号」と名付けられた船はこうして生まれることになった。
「あっ俺!久しぶり」
「おう、魔王か?久しいの」
「今度新型の船作るから港使わせてくれないか?」
「そりゃあ構わんぞ。使用料は格安にするぞ」
「ありがとう。所で共同事業の屋台はどうだい?」
「儲かってるぞ!ウハウハじゃ。今度は4店舗目を新しく出すぞ」
「へ~、俺の国とドワーフの国にも出してくれよ。うどん食いたいぞ」
「任せろ!麺は上手く出来る様になったからな。楽しみにしておくが良い」
西の国の王様と俺は以前の闘技大会から共同事業で麺の制作をしていたのだ。そして西の国はうどんのチェーン店を始めて儲けていた。俺の国にはラーメン用の麺を卸してもらっていた、南の国にも卸している様で馬鹿に成らない売上に成ってるそうだ。早い話俺は南や西の人族の王様とも仲が良かったのだ、港の使用なんかもトップ外交で一瞬で決まるのだ。まあ俺に逆らうとドラゴンが飛んで行くから誰も断れないのだがな。