第12話 戦後処理とドワーフ
やはりと言うか当然と言うか俺が魔王の土地をドワーフに貸し出した事に意義を唱える魔族が多数出た。魔族にとって領地と言う物は神聖なものらしい。まああいつらは領地の収入で暮らしているから領地は絶対に死守するものと思ってるのだろう。
「魔王様、今回の件は私も納得出来ませんぞ。」
珍しくオルフェウスが怒ってる様だ、俺に甘いオルフェウスが怒ってるって事は深刻な問題って事だな。上手く誤魔化さなくてはならない様だ。
「何を勘違いしているオルフェウス、あの土地はなドワーフ族が俺に作物を貢ぐためにわざわざ山から下りて来て耕しているのだぞ。」
「何ですと!あの誇り高いドワーフ族が魔王様の為に畑を耕しているのですか?」
「そうだ、素晴らしい忠義であるから俺は彼らに出来た作物を沢山与える事にしたのだ。」
「そうでしたか、このオルフェウス考えがいたりませんでした。お恥ずかしい話です。早速皆に知らせます。」
「知らせる必要は無い。文句のある奴には言わせておけ。反乱分子は早めに見つけておきたいからな。」
「・・・・・」
自分の言動が反乱分子だと言われてオルフェウスは青くなっていた。魔王の政策に反対したのだから当然反乱分子なのだ。問答無用で処罰できるが面倒なのでする気はない。でもこれでオルフェウスは急いで事態の沈下を図るはずだ、自分の身は誰だって可愛いからな。
ドワーフ族から貰った金は売り払って現金に替えた。そして俺の城に働いている者達に給料として渡した。初めて貰う給料に皆喜んでいた。今までは無給の奉仕活動だった様だ。
「魔王様、給金ありがとう御座います。」
「少なくて悪いな、今はこれで精一杯なんだ。前の魔王が使い込んだからね。」
「いえ十分です。私達牛族の1年分の給金です。」
今回城にいた食事係や掃除をしてくれる人達皆に1ヶ月分の給料として5万ゴールド渡したのだ。全部で30人居たから150万ゴールド掛かった。屋台の串焼きが1本100ゴールドだったから日本円で5~10万円位なので心苦しかったのだが、ここではマシな方らしい。そして街には色んな店や種族が居た、人族は単一種族で固まって住んでいるが魔族は色々な種族と交じり合って生活してる様だった。ある意味昭和の様なフリーダムな感じの活気のある街だった。
「アル、今度ドワーフが畑を造ってる所に行って見ないか?何作ってるか興味が有るんだ。」
「何処にでもお供いたします魔王様。」
魔王城に有った魔王専用の馬車に乗って俺達はドワーフ達が畑を作ってる所に視察に行く事にした。後の事は全部オルフェウスに任せる。一時戦争も無いだろうから俺が居る必要もないはずだ。と言うのは建前で俺は魔族以外の者と仲良くしたかったのだ、魔王とか言っても所詮俺は人間だから何時裏切られても不思議は無い。実力でも有れば別だが無理やり魔王にされただけだからな。裏切られた時に逃げ込める場所を確保する為にドワーフと仲良くするのだ。人間と仲良くしたいが、今回の戦争で酷い目に合わせてやったから断念した。
「凄い馬車だな?馬じゃなくてケルベロスが引いてるから犬車か?」
「ケルベロスはとても頼りになりますよ、賢くて強いんです。」
「そりゃあ強いだろうな、馬並みの大きさの犬だからな。」
馬位の大きさの地獄の番犬ケルベロスが魔王の馬車を曳いていた、俺はこいつが怖かったが、アルは気にしていなかった。獣人は動物タイプの魔物と仲が良いのだそうだ。馬車の中は広くて快適だった、3畳ほどの広さが有り魔力か魔術か知らないが少し浮いてる様だった。少し浮いてる馬車をケルベロスが時速60キロ程で引っ張っているので、ドワーフの居る所まで3時間で着いた。
「着きましたよ、魔王様。」
「早かったな、ケルベロスって凄いな。」
ドワーフ達が木を切り倒して開墾している場所に着いた。ケルベロスを見てドワーフは臨戦態勢だ、俺は馬車を止めてアルと一緒に直ぐ降りた。ケルベロスは放して好きにさせる。水と食べ物は自分で捕るだろう、飯を食ったらここに帰る様に言ったら頷いていたから言葉が分かる様だ。
「やあドワーフの諸君、俺は魔王だ。宜しくな。」
「なんと、王がわざわざこんな所に来るとは。一体どうされました?」
「畑を見に来たんだ、まだ当分かかりそうだな。」
「まず木を切って根を掘りおこさなくては成りませんからな、かなり時間が掛かります。ですが我々の食料不足を解消する為ですからやりがいも有ります。」
ドワーフ族は山岳民族なので山に住んでいる、大概洞窟の中に住んでるそうだ。山は平地が無いので食料生産のは向いてないので山羊や少ない畑で食料を賄ってるのだそうだ、食料が少ないので人口も全部で10万人いるかどうかと言う規模の国らしい。
「川の向こう側も畑にすれば結構広い畑になるな。芋でも小麦でも好きな物植えてくれ。」
「ありがとう御座います。この木はどういたしましょう?魔王様の木ですが。」
「川に橋でもかけたらどうだ?いちいち船で渡るのは面倒だろ?」
ここは丁度魔族の国とドワーフの国の国境沿いだ、川が国境を分けている割とありふれた場所だった。仲が悪いと国境沿いには重要な施設は置けないのだが、ドワーフは何としても食料が欲しい様だ。川の傍は畑には最適だから絶対に欲しいはずだ、水が確保出来るのは絶対の強みなのだ。
それからもドワーフ達と色々話し合って、畑が完成したら俺に知らせるって事になった。完成予定は1か月後だった。何とかドワーフと仲良くして俺の避難場所を確保するのだ。