第119話 魔道士の国のお好み焼き
さて今日は魔道士の国。トランザムの生まれ故郷だ、あいつは魔女始まって以来の出世頭の貴族だから盛大にお祝いされているらしい。無表情な魔道士や魔女達がお祝いっていうのも興味が有るな。無表情な顔で祝うのかな?まあトランザムは感情の起伏の激しい奴だったから全員が無表情で暗いって訳じゃないのだろうがな。
「魔王様、ようこそおいで下さいました。魔道士一同歓迎いたします」
「やあ長老さんお久しぶり」
「魔王様、トランザムから聞きましたよ、隣の帝国を平らげたそうで。流石は魔王様、単身帝国を滅ぼすとは恐ろしいお方でございます。我らの神にふさわしいお方です」
「え~と、トランザムは何処かな・・・説教しないといけないようだな」
「おっと失礼いたしました、極秘事項でございましたか・・ニヤリ」
物凄く機嫌の良い魔道士の長老と魔女の長老がいた。こんなにニコニコしている2人を見るのは初めてだトランザムが相当話を盛ってるのは間違いない。嘘の特盛を毎日配達してるようだ。魔道士たちは人間嫌いで閉鎖的なので基本的に人に騙されやすいのだ、トランザムが大げさに話をしても信じてしまう様なチョロい人達だからこれ以上話を広められると俺がまた悪人にされてしまう、折角善人のフリをしているのが水泡に帰してしまうのだ。早くあの馬鹿を止めなくてはヤヤコシイ事になるような気がする。
「そちらの女性はどちら様でしょう?」
「私はマーガレット、魔王の第1婦人だ。よろしく頼む」
「お~あなた様が神の第1婦人にして帝国男爵!トランザムを貴族に任命された女神様でしたか!」
何で俺の嫁が女神とかになってるんだ?頭が沸いてるんじゃないのかこのジジイ。オマケに俺が神だと?魔王だぞ俺は。その後魔道士や魔女がワラワラ寄ってきてマーガレットが連れて行かれてしまった。
「女神さまを神殿にお連れするのじゃ!」
「うお~!女神様!女神様!女神様!」
「どうなってるんだろうな?シルフィーネ」
「私にもさっぱりです、魔王様。元々変な人達でしたし・・・」
魔道士達を追いかけて話をするのも何となく嫌だったので別荘に行く事にした。マーガレットも女神とか言われている位だから危害は加えられないだろう、せいぜい魔女達の玩具にされる位だろうと思う。
ここの別荘は普通の建物で1回が店舗で2階が住むところになっている。そして1階ではお好み焼きを売っているのだ、店員はサキュバス達がやっていた。ここは森の中なので森林浴をするのだそうだ。お好み焼きは魔道士の長老のリクエストで売っている、お好み焼きのソースと胡椒が魔道士と魔女の大好物なので毎日大繁盛なのだ。
「シルフィーネお好み焼き食うか?」
「いただきますわ」
「う~す!サキュバス達、今日は俺が焼くからな、よく見とけよ」
「「「きゃ~!魔王様お久しぶりです!久々に魔王様の作ったものが頂けるんですね」」」
俺は一応サキュバス達の料理の師匠なんだな。それに俺は平気でズルをするからサキュバス達より美味しい料理が出来るのだ。
「ふっふっふ、任せておけ!我が真のお好み焼きという物を見せてやろう」
俺は直ぐに魔力変換でズルを始めた。お好み焼きを美味しくする揚げ玉や紅しょうが、鰹節に青のり、そしてすり込む山芋と隠し味兼香り付のカレー粉等をどんどん出してゆく。ここの世界のお好み焼きとは文字通り次元が違う味になるのだ。
ーージュ~!!ーーー
ドワーフに頼んで造って貰った特別製の厚さ1センチの大型鉄板、やはりお好み焼きや焼きそばは厚い鉄板で焼いた方が美味い気がするのだ、具材を入れても温度が下がらない所が良いって言う建前やプロっぽい感じが良いのだ。
「どうだサキュバス達、旨そうだろ?」
「中身が凄いです!エビやイカやまで入ってます」
「そうだろう、そうだろう。お好み焼きは中に好きなものを入れて良いのだ。今日は特別に上にとろけるチーズも載せてやろう」
「「きゃ~!魔王様カッコイイ!!」」
褒められると調子にのる俺はサキュバス達が喜ぶので中身をドンドン追加して1玉2000円位の材料費が掛かるお好み焼きを作ってやった。仕上げにおた◎くソースを掛けて出来上がりだ。勿論マヨネーズも綺麗な縞模様に成るようにかけている。
「ほい!出来上がり」
「魔王様のお好み焼き、凄く綺麗でいい匂いです」
「「「「おいし~!!!私たちのお好み焼きと全然ちがいます!!」」」
「ハッハッハ、我を崇めよ!」
当たり前だがズルして美味しいものや、美味しくなる調味料を入れてるのでドングリの粉を使ってキャベツと豚肉しか使ってないお好み焼きよりも遥かに美味しいのだ。まあこの材料を使えば誰が作っても美味しくなるのは秘密だけどな。でも美味しくなるように、揚げ玉と隠し味のカレー粉は大量に出してサキュバス達にあげたのでこの店の評判は更に上がるはずだ。
「魔王ずるいぞ!私にもくれ!」
マーガレットが真っ白になって帰ってきた。帰って来たのか匂いに釣られてきたのか分からないが、見た目が変だ。
「何だお前、真っ白だぞ」
「お~これは旨いな!・・白いのは型どりされたのだ・・・もぐもぐ・・・」
「型どりって何だよ?」
「マヨネ~ズが掛かってる方が美味いな!・・・もぐもぐ・・・うむ・・紅しょうがいい味を・・もぐもぐ・・・」
お好み焼きを3枚食べて落ち着いたマーガレットが言うには、銅像だか彫像の形を取るのに特別な白い粉を掛けられて何やら色々されたらしい。話によると俺の銅像も有るって話だ。
「魔道士達は魔王様の偉大さが分かって来たようですわね。良いことです」
「俺は嫌だぞ!偶像崇拝なんて!」
「魔族の国の公園にも欲しいですわね」
「だから嫌だって、気持ち悪い!」
「シルフィーネ様、小さな魔王像を屋台で売ってはいかがでしょう?金運上昇、厄払いの効果が有る様な気がします」
「素晴らしい考えですわ!流石はサキュバス。早速4天王会議で量産計画を発表します」
「販売は魔王神社を作りますので我々サキュバスにお任せ下さい。魔王の巫女として独占販売いたします」
「分かりました、サキュバスなら魔王様の巫女に最適ですね。文句はありませんね魔王様!」
「・・・はい・・・」
シルフィーネにじろりと睨まれた俺は思わず返事をしてしまった。俺抜きで話が進むのはよくある事だ、まあそれでサキュバスが喜んだり儲かるなら良い事だからな。それに多分原因は俺だもの。
俺が来てからサキュバス達は変わったのだ。以前は色気だけで男を誑かしていたのだが、俺が商売に投入したり教育したりしていたので頭が良くなって金儲けに興味を持つようになったのだ。そして彼女達は働き者で金儲けが抜群に上手かった。