第116話 魔王の部屋
「ワハハハハ~!おい魔王!何だコイツは!」
今日も朝からテンションの高いマーガレットの高笑いで起こされた。俺の城にやってきてもテンションが高いままなのだ、普通なら魔族に怯えるはずなのに一向に気にしてないのだ。それどころか魔族に気がついてないのかも知れんな。
「何だよ朝っぱらから?」
「何か変な馬が居るのだ!頭が3個も有るのだ!」
「あ~、それ馬じゃないから。犬だからな、俺の愛犬のケロちゃんだ」
俺の宝物庫を守ってる地獄の番犬ケルベロスを見つけた様だ。一応俺の知り合いを攻撃することは無いのだが恐ろしく無いのか?馬並みの大きさを誇る神獣なんだがな、普通の魔族でも恐るくらいの戦闘力が有るんだが・・まあ古龍から比べたらタダの犬だけどな、あいつも感覚がおかしくなってる様だ。
「なあ魔王、これくれ!」
「やめろよケロちゃんが怖がってるだろ。絶対にやらんからな!」
マーガレットはケロちゃんを撫で回し頭をバシバシ叩いていた。怖いもの知らずの俺の嫁にケロちゃんはじっとして耐えていた。犬は序列を大事にするって聞いたことがある、もしかして俺より嫁の方が序列が上と思ってるのかケロちゃん。
「ケロちゃんは凄く役に立つんだぞ」
「これに乗ってみたい、私の愛馬にぴったりだ。鞍は無いのか?」
「有るけど・・・」
嫁がケロちゃんの背中をバンバン叩いて鞍を催促している。これはもう鞍を付けるまで叩き続けるつもりだし、俺の言うことなんか聞かないつもりだな。渋々鞍を載せたら、高笑いしながら何処かに行ってしまった。まあ女が言いだしたら抵抗するだけ無駄だからしょうがないな。
「ハイヨ~!シルバー!」
なぜその台詞を知っているのか謎だが、ケロちゃんは賢いから何とかするだろう。最高速度が馬の3倍位出るけどあいつは体が丈夫だから平気なはずだ。
「魔王様、朝食の用意が出来ました」
サキュバス達が朝飯の用意をしてくれたようだ、彼女達は女子力が最高に高くて見かけも完璧なのだ。これで精力を吸わなければ男にとっては完璧な女なんだがな~、でも死んじゃうのは嫌だよな。
朝は塩鯖と豆腐の味噌汁、そして甘い卵焼きだった。俺が作った料理の完全コピー板だった、段々俺の存在意義が減ってきてる気がする。
「あれ?ミーシャとトランザムが居ないな」
「ミーシャ様とトランザムは国に帰りましたよ。シルフィーネ様は4天王会議だそうです」
そう言えば俺の嫁たちはキャリアウーマンばかりだった、色々な仕事が有るから忙しいのだ。暇なのは腕輪ちゃん位だったな。サキちゃんもサキュバス族の族長さんだからサキュバス達の面倒を見るので忙しいのだ。腕輪ちゃんは魔力を集めにどっかに行ってる様だな、今は俺の周りに嫁が居ない状態なのだ。まあ良いか、サキュバス見てたら飽きないしな、というよりも久しぶりに見るサキュバスは綺麗だった。
「魔王様、今日のご予定は?」
「何も無いな、明日はドワーフに国。明後日は魔道士の国って決まってるんだが、今日は何も無い」
「では魔王様、向こうの大陸でのお話を聞かせて下さい」
「いいぞ」
暇のせいか歳のせいなのか分からないが、俺は冒険について大げさに盛って話しまくった。もしかしたらサキュバス達にいい格好をしたかったのかも知れない。普段は後から反撃しやすいように控えめにしているのだが綺麗なお姉さん達に囲まれて気が緩んでたんだな、そして人間って奴はこういう時は失敗して痛い目に会うのだ。
「サキュバス君、朝風呂でもどうかね?」
「良いですわね~」
そしてサキュバス達と朝風呂に入っている時に、全裸のシルフィーネが入ってきた、ドラゴン族だけの事は有りサキュバスより筋肉質でスタイルが素晴らしかった。例えるならば完璧なスタイルの彫像って感じだな。そして表情のないシルフィーネに睨まれて風呂場の温度が急に下がったような気がしたな。勿論シルフィーネの金色の瞳に射すくめられた俺とサキュバス達は動けなかった蛇の前のカエルみたいなものだな。
「魔王様・・・これ以上嫁を増やされると私怒りますわよ」
「・・すいません、調子に乗ってました」
そしてサキュバス達は大急ぎで風呂から出ていった。俺はシルフィーネに背中を流してもらったが余り嬉しくなかった。
「ワハハ~、ここに居たのか魔王!探したぞ」
今度はマーガレットの乱入だ。ケロベロスと遊ぶのに飽きて帰って来たのだろう。こいつも全裸でどこも隠さずに入って来るのだ。実に堂々とした入り方だった。
「おお!シルフィーネ殿はいい体をしておるな~!羨ましいぞ!」
「マーガレットの胸も中々のものですわ」
「こんなものは揺れるだけで邪魔なのだ、まったくもって役に立たんな。魔王の股についてる奴と替えてもらいたい位だ。あれは小便の時に役に立つからな!」
「まあ、まあ」
俺のエクスカリバーは、とうとう小便専用の道具にされた様だ。そう言えば最近全然使ってないな・・俺のエクスカリバー・・・
「どうしたマーガレット?テンション高すぎだぞ」
「実は相談が有るのだ、私の騎士団はケロベロス騎士団にしようと思うのだが・・」
「良いんじゃないか。イザベラの所はグリフォン騎士団って言ってたから丁度良い」
「おお~何と気前が良い旦那様だ!愛しているぞ!」
イザベラの所のグリフォン騎士団はグリフォンが1匹も居ないのにグリフォン騎士団って名乗っているからマーガレットの所もケロベロス騎士団って名乗るだけかと思ったら、俺のケロちゃんを分捕って乗る気満々の様だ。そりゃあ本物のケルベロスが居る騎士団は凄いだろうが有名に成りすぎるし、俺の足が無くなるので困るのだ。宝物庫の番もいなくなるしな。
「シルフィーネ、人が乗れて結構強い幻獣って居ないのかな?」
「幻獣って数が少ないから難しいですね」
仕方無いので、たまにケロベロスをマーガレットに貸すことでその場は何とか落ち着いた。マーガレットがケロベロスに乗って走り回ると多分イザベラの胃が又痛くなるかも知れないが慣れて貰うしか無いな。