第104話 魔王の笑い
「説明してもらおうか!」
宴会の次の日俺は古龍のジジババとシルフィーネ達に今までのいきさつを説明する様に求められていた。そこで俺は包み隠さず今までの事を話してみた。魔族の国から家出してから今までの事を細かく3時間くらいかけて・・・話を聞いていたジジババや女達は面白がって笑っていたな・・俺は話が受けたので少し嬉しかった。でも女共の機嫌が悪くなって言われたのがこの台詞だ。
「ふ~ん、そこの女は嫁なのだな!」
「ああ、間違いなく嫁だ。宜しくな!」
はははは、物凄い目つきで睨まれてしまった。周りの温度が氷点下になるくらいの感じだ、強い奴の殺気って凄いもんだな。古龍のジジババは第2回の修羅場を期待してこっちをチラチラ見ていた。龍のくせに人間の修羅場って面白いのだろうか?
「主よ、この美人たちは何なのだ?」
「この人達は魔族の国で俺を世話してくれた人達だ」
「そうか、嫁ではないのか?王なんだから嫁の100人や200人居るだろう?」
「居ないぞ、メンドくさい」
「ちょっとマーガレットさんこっちに来てくださいな」
俺の嫁が5人組に連れて行かれてしまった。まさかいきなり始末することは無いと思うが怪しい。俺は着いていこうとしたが古龍達に捕まってしまった。どうもこいつら修羅場を期待してる様だ。
10分程たってニコニコした顔の嫁と女共が帰ってきた、いつの間にか俺の腕から離れていた腕輪ちゃんまで向こうに居たのはビックリだ。古龍のジジババは明らかに詰まらなさそうな顔をしていた、こいつらどんだけ修羅場好きなんだ。
「魔王、喜べ!話はついたぞ」
「え~と、何の事でしょう?」
「私が正妻で良いそうだ、つまり私が第1婦人だな!」BYマーガレット
「第2婦人は私じゃ!一応王女だからな」BYミーシャ
「私が第3婦人じゃ、戦闘力はシルフィーネより上だからな」BY腕輪ちゃん
「いや一体何の話だ、何でそうなるんだ?」
「私が第4婦人です、宜しくお願いします。魔王様」BYシルフィーネ
「アタイが第5婦人だから宜しく!」BYトランザム
「私が第6婦人です。末永くお願いいたします」BYサキちゃん
「・・・・・・」
話をまとめてみよう。マーガレットは結婚を認めさせた功労者なので第1婦人なのだそうだ。そしてミーシャが第2婦人、これは彼女が王女で一番身分が高いからなのだそうだ。そしてその後は戦闘力が高い順に順位が付いたのだそうだ。でも待ってくれ、俺はミーシャやトランザムやシルフィーネに手を出した事は無いのだ潔白なのだ。怖くて手が出せなかったのだ、だって古龍と互角に喧嘩する化物なんだぞこいつ等。
「おめでとうっす!魔王さんなら10人くらい楽勝っすよ」
「「めでたいの~!!」」
「さて祝いじゃ!魔王!食物と酒を出せ!」
これが外堀を埋められるって奴なのか。俺の意思とは関係なく物事が決まって行っている、俺の事なのに俺に選択権は無いらしい。古龍たちは面白ければそれで良いって考えだし、勇者まで面白がっている。
釈然としないがマーガレットが無事だったので良い事にしよう、これ以上もめると酷いことに成りそうな事はいくら俺が馬鹿でも分かったからな。
「わははは~、しかし凄い美人の嫁だな!私も鼻が高いぞ。魔王!」
第1婦人のマーガレットが酒を飲んで大声で笑っていた。こいつは中身が男なので女が好きなのかも知れないな、俺の事を嫁とか言ってたし。しかし不思議なのはミーシャだ。何で俺の嫁になるんだ?
「おいミーシャ、何で俺の嫁になるんだ?」
「そんな事もわからんのか。お前は馬鹿じゃの~」
「まあ半分馬鹿だけどな」
「良いか私はドワーフの国の王女なのじゃ、つまりドワーフの国が良くなる相手を探さねばならんのだ。ここまでは良いか?」
「ああ」
「そこでドワーフの国を良い方向に持っていける男を探していたのじゃが全然おらんのじゃ。このままでは行かず後家になりそうだからお主の嫁になるのじゃ。お主は馬鹿だが金儲けは天才的に上手いからな」
「うへ~、政略結婚って奴か!俺がやられるとは思わなかったぞ」
「まああれだ・・・・ちょっぴりは好きなのじゃがな・・」
後の連中も似たりよったりの理由だった「食い物がうまいから」とか「服が欲しい」とかだったから俺は大いに凹んでしまったのだ。誰も俺の事を愛してねーじゃん。せめてツンデレだったら良かったのに。
「ワハハ!私が後1万歳若かったら嫁に成ところじゃったのにの~!」
「ならば儂が女じゃったら嫁に成所じゃったぞ~!!!うえ~へっへ~!!」
古龍のジジイやババアまで俺をからかい出したのでウンザリだった。そこで俺はこいつ等古龍に仕返しをする事にしたのだ。俺はやられっぱなしってのは嫌いだからな。オボエテロヨ古龍のジジババ共。
「あ~!又悪い笑い方してるっす!」
「そうか?」
「今度はどんな悪事を働くのじゃ?」
「さあな」
俺が悪事を企むと悪い笑い方をするのを知っている勇者が気がついてしまった様だ。周りの連中も俺が変な事ばかりするので興味がある様だった。俺の悪巧みで一緒に遊ぼうとしている様だな。古龍は暇人の集まりだし俺の嫁たちも娯楽好きな連中なのだ。
「魔王よ、この間の武闘会みたいな面白い奴なのか?」
「あれより面白いと思うぞ。儲かるしな!」
「うえ~、何か大掛かりな計画みたいな気がするッス。勇者の勘っすけど」
「大丈夫なのか魔王どの?この国が無くなるような事は困るのだが」
俺の周りの連中を見たイザベラは不安そうだ、俺は悪の化身で魔王だし、周りには魔族と古龍10頭が居るのだ。この帝国を消すくらい簡単だからな。
「心配するなイザベラ、お前をギルマスからグランド・ギルドマスターにしてやる。ついでにマーガレットをナイトから男爵にしてやるぞ!ワハハ~出世祭りの始まりじゃ~!!」
それから又宴会だった、古龍のジジババ達にたっぷり飲ませて喜ばせてやった。今に見てろよ古龍共、飲み食いした分こき使ってやるからな。俺は必ず仕返しするのだ、喧嘩で勝てないなら頭で勝ってやるのだ、見てろよ俺の養分にしてやるぞトカゲ共めが。
「今に見てろよ~!!!!」
「お~、凄い意気込みじゃな魔王!」
「絶対ロクでもない計画っす!かなり詐欺する気っすね魔王さん」
そして次の日に二日酔いの頭を抱えながら計画を話すと古龍たちは大喜びしていた。ふん!チョロいトカゲ共だぜ。