第五話 拾ってくれた青年、案外すごい人でした。
遅れました。第五話です。
―……ろ…、…き……、フィ……ネ…、―
……うぅん、何言ってるかわかんないよ。
遠くで誰かが呼んでるような………?
―お……! ……おきろ、フィオーネ! ……―
「おきろ、フィオーネ」
パチッと目が覚める。
目を開けるとワイルド系イケメンが私の顔をのぞき込んでいた。
……………………………?
えっと、誰だっけ。
昨日助けてくれた、えっと、えーと、ジェ、ジェ、ジェ……あ、ジェイドさんだ。
「おはよーごじゃいましゅ。じぇいどしゃん」
「ああ、おはよう。よく眠れたか?」
「あい。おかげしゃまで、ぐっしゅりでちた」
「それなら良かった。こんなものしかなくて悪いが朝飯にしようか」
「あい!」
ジェイドさんがにかっと笑って私も答えるようにわら………わなかった。
いや違う。笑えなかった、が正しい。昨日も笑ったつもりでいたけど表情は全然変わっていなかったに違いない。
この体、親から虐待を受けていたと聞いたが、結構ひどかった。もうね、表情筋の動かないこと動かないこと。
どれくらい酷いって、表情筋が退化しすぎてリアクションだできない。試しに笑おうとしたら、口角が五ミリ上がったか上がらなかったかくらいで筋肉が吊った。おまけに筋肉痛になった。
笑おうとして筋肉痛になるなんて聞いたことないよ!
今の私には笑うことが出来ないのでジェイドさんを見上げて目で嬉しいとつたえてみる。
ジェイドさんは「お前は表情こそ乏しいがそのぶん目に感情がでるな」と苦笑しながら、ジャムを塗った、かたかたのパンを渡してくれた。
これが今日の朝ご飯のようだ。
でも、痩せすぎて胃が縮んでしまっている今の私の体にはジェイドさんが用意してくれた量は多すぎたので、半分位ジェイドさんに食べてもらった。
すみませんジェイドさん。
食べ終わるともう王都につれていってくれるらしいので片付けだ。
といってもジェイドさんが荷物をまとめるだけだけど。
荷物をまとめ終えるとジェイドさんはなにやら左手の人差し指の指輪に魔力を込めはじめた。
徐々に魔力がたまり指輪がうっすら光を纏いはじめると、ジェイドさんが「来い、アイル!」と叫ぶ。
ジェイドさんの指輪がひときわ輝いて指輪から光が流れ出してきた。
すると、なにやら流れ出した光は何かを形づくりはじめた。
光が大きな塊………馬っぽい形になるといきなり光が霧散した。
光がきえると、そこには角が生えたペガサスがいた。
かっこいい! すっごくファンタジーって感じがする!
……ん? でも、ユニコーンとまざってない? ペガサスに角はないよ。……なかったよね?
「こにょこなあに?」
「ユニサス……ユニコーンとペガサスの間の子だ。アイルという」
……わーお。
ユニコーンとペガサスの間の子とかそれなんてファンタジー。ユニコーンとペガサスの子供ならうっかりペガサスの角がない頭とユニコーンの翼のない体を受け継いでただのハイスペックな馬が生まれました、なんてことはないのかな? あったら面白そうだ。
っていうより今のどうなってるんだ。召喚術系か?
ジェイドさんに聞いてみるとあれは持ち主も魔力で動かす魔術具らしい。
何でも魔獣を使役できるのだとか。
ただし、結構魔力を必要とするので騎士になる条件のなかに召喚する魔道具2回分程度の魔力があるもの、魔術具が使えるもの、というのがあるらしい。騎士には必須のようだ。
さらに魔力の多いもので、召喚魔術適性、無属性魔術、光魔術のすべてに適性があるものは騎獣作成することが出来るらしい。
今度ひまなときにやってみよう。多分、私には適性があるし。
スキルの称号のとこに、魔術の申し子ってあったから。
そこの説明のところの取得条件のとこに、全魔術適性、全魔法適性ってでてたから。
うん。なんかチートだよね。たのしみだ。
そんな事考えてるとジェイドさんに抱き上げられてアイルの背中に載せられた。
アイルは背丈が1.7mくらいあるので乗るのが大変だなーとかおもっていたが、ジェイドさんは私を乗せてすぐに後ろにひらりと飛び乗ってきた。
身長も190cmくらいあるし、なんといっても近衛騎士団団長だ。
エリートなのですよ。
そんなやわな鍛え方してません。
なにせ、腕もそんなに筋肉ムキムキです! ってわけじゃないのにあんな大剣軽々と振り回してたし。
さすが異世界。生命の神秘だね。
「じゃあアイル、城下町の門まで乗せていってくれ」
コクっと首を縦に振ると、ばさばさと数回羽根を羽ばたいて私たちを乗せていっきに上昇させた。
イケメンと相乗りとか役得! とか思ってたけど前言撤回します。
やばい超怖い!
だってアイルめっちゃ速いんだもん!! 時速100kmオーバーで飛んでます。詳細速度は不明。とにかく早い。
スピードが車以上です。しかも生身です。
アイルにつけられてる魔法具のおかげでそんなに風圧とかも感じないけど、怖いもんは怖い!
「じぇいどしゃんはやい!こわい!」
「あぁ、なら目をつぶっとけ。あと少しで着くからな」
「あとしゅこしってどりぇくりゃい!?」
「あー、5分くらいだ」
「しょんにゃに!?」
「大丈夫だ。ほら、俺がついてるから大丈夫だ」
やだ、ジェイドさんイケメン!
そこにしびれる憧れるぅっ!! ………っじゃなくて!
あと5分もこのままなの!?
えーと、こういうときどうすればいいんだろう………。
…………現実逃避?
そうだ、現実逃避しよう。
でも、現実逃避って言ってもなにすればいいの?って言うかなにができんの?
とりあえずレッドウルフ達倒したんだし、レベルあがってるかもしれないから確認しとこう。
心の中でステータスととなえる。
目の前にステータスの画面があらわれて私のステータスを表示した。
──────
フィオーネ・レンジア Lv.7
年齢:3歳(魔族でいえば30歳)
性別:女
種族:魔族(長命種※10000年近く生きる種族)
職業:未定
状態:栄養失調(重度)
称号:神々の寵児 魔術の申し子 精霊王の寵児
創造神ツァールトハイトの寵児
HP:230/230(130up)
MP:85000/85000(60000up)
STR:34(7up)
VIT:32(9up)
AGI:43(13up)
DEX:37(9up)
INT:58(6up)
LUK:50
スキル:料理(Lv.10)裁縫(Lv.10)栽培(Lv.10)
計算(Lv.10)調合(Lv.10)木工加工(Lv.10)
水魔術(Lv.4)火魔術(Lv.1)土魔術(Lv.1)
風魔術(Lv.4)光魔術(Lv.6)
闇魔術(Lv.1) 炎魔法(Lv.1)
氷魔法(Lv.3)雷魔法(Lv.1)無魔法(Lv.1)
空間魔法(Lv.1)聖魔法(Lv.3)
治癒魔法(Lv.1)毒魔法(Lv.1)
時魔法(Lv.1) 精霊魔法(Lv.1)
錬金術(Lv.1)MP自動回復(Lv.4)
HP自動回復(Lv.1)無詠唱(Lv.3)〔new!〕
ユニークスキル:創造魔法(Lv.1)アイテムボックス(Lv.10)
ギフト:鑑定眼(Lv.4) 精霊眼(Lv.1)
加護:創造神の寵愛 魔法神の加護 武神の加護
愛の女神の加護 生命の女神の加護
森の女神の加護 海の女神の加護 精霊王の寵愛
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…………おお。だいぶステータスあがってるね。
6もレベルもあがってるし。スキルとかも、使ったやつはちょくちょくあがってる。
……それにしても魔力の上がり方すごいな。なんか称号補正とかあるのかもしれない。
字面からある程度意味は推測できるものの、やはりそれだけでは情報が足りなさすぎるのでこの意味知りたいなーとか思って見つめているとやっぱり説明書き出てきた。テンプレ乙。
すごい便利だ。えーと、なになに……。
──────
神々の寵児
二柱以上の神から加護を受けるものに送られる称号。この称号を持っているとほかの神から加護を受けやすくなる。
魔術の申し子
魔術の才能のあるものに送られる称号。この称号を持っていると魔法系のスキルを取得、レベルアップしやすくなる。また、レベルアップ時にMPに大幅補正。
精霊王の寵児
精霊王の寵愛を受けるものに送られる称号。この称号を持っていると精霊から加護を受けやすくなる。また、精霊が協力しやすくなる。
創造神ツァールトハイトの寵児
創造神ツァールトハイトから寵愛を受けるものに送られる称号。この称号を持っていると創造魔法のスキルを得ることができる。また、レベルアップ時に全てのステータスに大幅補正。
──────
……………なるほど、私TUEEEEEEEできそうなわけだわ。
そりゃできるわ。
こんだけされてりゃできないはずないわ。
「ほら、フィオーネ、もうつくぞ」
私がステータスに気を取られているあいだに目的地へ到着したらしい。
少し先を見るとたくさんの家がならんでいるのが見える。
「ふわぁー! しゅごーい!」
「ああ。いろんな店も出ている。商店街や市場にいけば、とても珍しいもんじゃない限り大抵のものはそろう。楽しみにしておけ」
「あい!」
アイルが高度を落とし始めるとゆっくりと門の近くに着地する。
ジェイドさんがまた抱っこしておろしてくれて、やっとこさ地に足がついた。
はぁ、安心する……。
ジェイドさんは門番さんに一言二言しゃべりかけると門番さんはこっくり頷いて門を開けてくれた。
「おいで」
ジェイドさんに手招きされて近寄れば、抱き上げられて右肩に乗せられる。
「フィオーネ、この街は君を歓迎しよう」
私を肩に乗せると、歩きだしたジェイドさんはにっこり笑った。
「これからこの街がきみの故郷だ。記憶が無くていろいろ不安かも知れないが、この街の人たちならきっと力になってくれる。安心して頼ってくれ」
「……あいっ!」
そんな優しい言葉をくれるジェイドさんに、私は嬉しいことが伝わるように大きな声で返事をした。