第三話 魔法って要はイメージだよね
例えば木のうろや洞窟みたいな、子供ひとり隠れれる場所を探して森の中をあっちへフラフラ、こっちへフラフラと移動する。
それにしても体のべたべたが鬱陶しいったらない。
魔術でなんとかできないかな。
こういう時どんな魔術使えばいいんだろ。清潔とか……かな。まぁ、とりあえず使ってみればいいか。ダメだった時は……まぁ、残念でしたって事で。
「清潔」
ちょっと体から力(?)が抜ける感覚がした後、体のべたべたとか悪臭とかがなくなってスッキリした。
肌は真っ白、すべすべ。髪は白銀色だった。
へぇー、わたし、こんな髪の色だったんだね。あんなドス黒い色からは全然想像出来なかったよ……。
ワンピースも綺麗な白色になっていて(ボロボロのままだけど)だいぶ見苦しくは無くなった……と思う。
魔法も随分とイージーモードの様だし、せっかくだから自分で寝る場所をつくってしまおう。
まず、川辺の近くに移動して、大きな葉っぱの生えた、ふかふかな落ち葉が一面に敷かれている場所を探します。
虫がいるといけないので清潔を、でかい葉っぱの場所には虫一匹いないところをイメージしてかける。
その周りに半径4mほどの円をかいて、その中にゲームで出てきた万能結界の魔法陣のエフェクトを書き込んで、私に害するものが入れないようにイメージする。
……まぁ、このゲームに出てきた魔法陣を地面に書くのは私がイメージしやすくするためだから、別にいらないといえばいらないんだけど。
忘れないうちに明日の朝、結界が消える五分前で音がなって警告してくれるようにイメージする。
この時、雑念がはいらないように注意しましょう。
間違えてもさっきのヤシゴの実美味しかったなぁ、なんて考えてはいけません。
ここで判明したんだけど、ちゃんとイメージ出来ていれば魔術って詠唱いらないっぽいこと。
イメージして、さて詠唱しようと思ったらまた少し力(?)が抜ける感覚がした。地面に書いたエフェクトがじんわり光を帯びたからおそらく魔法も成功している。
念のために鑑定をかけたら、効果の他に継続時間が表示された。残り時間の確認できるから安心安全の親切設計だね。鑑定が使える場合に限るけど。
無詠唱で魔術を使えたことに感動しながら、まわりから落ち葉を集めて来るとまとめて清潔をかける。
さて、これで寝床はできた。まだ日没まであと四時間ある。
暇だ。やることがない。
じゃあ、うーん……そうだなぁ、ユニークスキルのところにあるアイテムボックスをだしてみようかな?
……でも、どうすればいいんだろう、とりあえず唱えてみようか?
魔法もそれで出来たんだし、それで大丈夫だろう。
「アイテムボックス」
…………多分、アイテムボックスができた感覚はあるんだけど、目の前に現れない。
何故だ。
何が違ったのかな?
試しに近くにあったヤシゴの実をむしり取るとアイテムボックスに入れたいと念じてみる。
すると、ヤシゴの実は一瞬できえた。
なるほど、こういう物なのね。
ステータス画面を出してみるとステータスのとなりにアイテムボックスの画面が出てくる。
──────
・ヤシゴの実 ×1(状態:新鮮 食べ頃)
──────
……なるほど、便利だ。
いくらあっても困らないだろうと、まわりのヤシゴの実を熟しているものから採取してアイテムボックスに放り込んでいく。
──────
・ヤシゴの実 ×15(状態:新鮮 食べ頃)
──────
あたりの食べられそうなヤシゴを取り尽くしたし、他にも食べられそうな物がないかと結界から離れてあちこち探しているとフィーアの花というのを見つけた。
桃色をした花は大きくて一枚の花びらが1mくらいある。
花びらの厚さもだいたい3cmくらいある。よし、鑑定鑑定……って、え、この花びら食べれるの?
おそるおそる口に入れてみれば、桃っぽいとかいちごっぽいとか、花びらによって味が変わるようで食べていてすごく楽しい。
鑑定には、こちらの世界の果物の名前で書かれているので何がどんな味なのかは、食べてみないとわからない。
何これ楽しい。
この花もたくさん採取しておこうっと。
──────
・フィーアの花 ×25(状態:新鮮 食べ頃)
──────
だいぶストックを収穫したことで満足した私はスキップでその場を離れた。
文句なんて言ってごめんなさい、ツァールトハイト様。全然ハードモードなんかじゃなかったです。むしろイージーモードでした本当にありがとうございます。
そういえば、フィーアの花、干すとサクサクな食感になるらしい。
……美味しそうだな。ということで、早速実験開始。
フィーアの花を魔術で干すことは出来るのかぁー。いえーいどんどんぱふぱふ。ということで、アイテムボックスから、フィーアの花を1つ取り出して、魔術で乾燥をかけます。
すると、干しフィーアのかんせーいイェーイ。
………暇つぶしにもならなかった。
お手軽どころじゃなかった。カップ麺が出来る前に出来ちゃったよ何これ魔法って凄い。使い方を果てしなく間違えているような気がするけど、うん。キニシナインダヨ、ウワァ、マホウッテスゴイナァー(白目)
できた干しフィーアをかじって、ちゃんと出来てることを確認すると、カバンにしまった。
うむ、美味であった。
川沿いを歩いて結界の元に戻る。
気づけば夕方で、夕日が辺りをオレンジ色に染め始める時間だ。このあたりは地球と変わらないんだね良かった良かった。
反対側からは、月がのぼってきはじめていた。
……二つほど。
なるほど、月がふたつとかテンプレですねわかります。さっきこのあたりは地球と変わらないんだねとか言っちゃったばかりだけど前言撤回。全然地球と違うわ。
ってそうじゃなくてだね?
夜といえば動物が活発に動きはじめる時間だ。つまり、そんな時間に無防備に歩いてる私は肉食系の動物やら魔物やらには、美味しそうなディナーなのですよ。
……美味しいかはさておいて。
……やばい。凄くやばい。
異世界に来ておそらくはじめての私の命の危機です、ピンチです、大ピンチです!!
ガサガサっとすぐ後ろの茂みが揺れて、何かはわからないが動物の鳴き声が聞こえた気がする。
…………取り敢えず、逃げろっ!!
ちょっと変なとこになってしまいましたが、長くなりそうだったんで二つに切らせてもらいました。次回、フィオーネが、はじめて人に出会います。
2017/03/04 加筆修正