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第3話

次の日、私は特に予定もなかったので昨日と同じくまっすぐ家に向かった。

マンションの階段をよいしょと上り、自分の階につくや否や、思わず「えっ」と叫び声をあげてしまった。


隣の家の前で、小学生が座っている…だと…



架琉くんは、昨日と同じように体育座りでじっと座っていた。

まさか、鍵、また忘れたの?そんなことあるか…



私は早歩きで架琉くんのほうへ急いだ。

架琉くんははっとした表情で私を見つめ続けている。



「架琉くん、どうしたの?」

「…」

「鍵、また忘れちゃったの?」

「…」



架琉くんは黙ったまま、下を向いている。



「どうしたの?」

「鍵、持ってる…」

「え…なんで入らないの?」

「りっちゃん待ってた」



え…




正直言うと、私はこのとき「え…」というよりは「げ…」という心境だった。

確かに、昨日彼が帰るとき「また来てね」って言ったけど、それは社交辞令っていうか…

もしかして、うちに来くればお菓子もらえるからって、味しめちゃった感じ?



「りっちゃんいつ帰ってくるかわかんないから、外で待ってた」

「そ、そうなんだ…」

「おうち入ってもいい?」

「え?!うん、まあいいけど…」






どうしよう、すごいめんどくさい…





昨日ですべて終わったと思ったのに、もしかして、これから毎日うちに来るつもりなの?

私だって友達と遊んで帰る日とかあるし、毎日待っていられるのは、正直超困るんですけど…

というか、それ以前に、小学生の相手なんか、毎日したくないんですけど…




ため息をつきながら、私は架琉くんを居間に通し、昨日の残りのポテチとチョコとジュースを探した。

居間に戻ってソファに座ると、下を向いていた架琉くんがおもむろに話し始めた。



「別に、毎日来るつもりないから」

「えっ」



自分の心を読まれたような気がして、私は心臓がどきっとなった。



「クラブの日と、友達と遊ぶ日以外は、家に帰ってもずっと一人でつまんないから…玄関で待ってて、りっちゃんに会えたらいいなって思っただけ」

「へ、へえ…」

「りっちゃん迷惑だったら、やめる」

「いや、迷惑とかじゃ…」





いや、迷惑なんだけど…





ふと、こういうことは最初に言っておかないとと思い、彼を傷つけないように、少ないボキャブラリーの中から言葉を選んで、私は話し始めた。



「うんとね、私も友達と遊んだりするし、予定がなくても家で一人でいたい日とかあるのね」

「うん」

「だから、迷惑とかじゃないんだけど、いつも架琉くんの予定に合わせるわけにいかないのね」

「うん…」



あ、なんか落ち込み始めてる…



「あ、えーと…じゃあ金曜日!」

「え?」

「金曜の5時までに私が帰れたら、お母さんが帰ってくるまで一緒に遊ぼう!5時過ぎても私が帰ってこなかったら、予定があると思ってもらうということで」

「いいの?」

「うん、いいよ!いつもじゃないけどね」



結局、こうなってしまった。

まあ、金曜って次の日休みだから、友達とカラオケ行ったりすることも多いし、予定があってほとんど会うこともないだろう。

それに、こうやって懐いてもらえるのもちょっとうれしい気もするし…



架琉くんは、嬉しそうに笑って、ポテチをぱくっと放り込んだ。

お菓子目当てじゃないよね…

私は一瞬いぶかしげな目で彼を見たが、すぐに笑顔を作った。


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