引っ張るモノ
【 引っ張るもの 】
私の家は古い、そして無駄に広い。
うちに遊びに来る人は二度は来ない、そんな家である。
父と母が寝室にしている部屋は、亡くなった祖父が使っていた。
そこで寝ると、父は足を引っ張られるらしい。
母はまったく気づかずグーグー寝ている。
朝食のときに父が家族に問いかける。
「おい、俺が寝てる時に足を引張らんかったか?」
「なんで、わざわざあんたの臭い足を触るとね?」
父と母が口論を始めた、いつもの風景である。
私も弟も、好き好んで父のくっさい足を引っ張ったりしない。
父の足を引っ張るのは、多分人間ではない。
小さな女の子だ。
うちに小さな女の子はいない、でかく育ちすぎた愚弟がいるだけだ。
おかっぱで身長は小さく、人形のようだったと父は言う。
その子が無表情で父の足をグイグイ引っ張ると。
父が足の痛みに目を開けると、フッといなくなるらしい。
それを見ているくせに、父は幽霊とは認めたくないらしく家族の誰かが足を引っ張った!ということにしたいようで、母と喧嘩している。
こういう話は週に何度も聞くので、私と弟は華麗にスルーしてごはんを黙々と食べる。
「どう考えても幽霊じゃん」
「だよね」
私と弟はこんな幽霊屋敷から早く出ていきたいと切に願っている。
※半分実話
うちに遊びにきた友人は、次からは友人宅か外で遊ぼう!!と必ず言うが理由を話す人は皆無…地味に傷付く。