手編みのセーター
【 手編みのセーター 】
私の母方の叔父 にk兄ちゃんという人がいる。
いい年なのに未だに兄ちゃんと呼ぶのは、独身だから。
結婚したらおじちゃんと呼ぶ予定だったけど…たぶんずっと兄ちゃんと呼ばないといけない気がする。
今はまったくモテないk兄ちゃんけど、若い頃はそれなりにモテていた。
女性からのプレゼントなんかもよくもらっていたらしい。
姪っこである私はよくおこぼれを頂いていた。
超貧乏な我が家では、謂れがあろうとなかろうとタダで貰えるものはありがたく頂いていた。
あの時もそんな風に軽い気持ちで貰ったけれど…世の中にはとんでもないプレゼントがあるんだと学んだ。
ある年の夏休み、いつものように母と弟と3人でk兄ちゃんの所にきていた。
私は、お宝はないかと目を光らせていた。
キョロキョロする私に苦笑いするk兄ちゃん。
そんな私に綺麗な袋に包まれた物をポンとくれた。
「くれるの?!」
「あぁ、似合うと思うよ。セーターだから、寒くなってから着なよ。」
「わあ、ありがとう!! おかーさーん、K兄ちゃんにいいものもらったー!」
すぐに母のところに報告に走る私。
その時、K兄ちゃんがホッとした顔をしていたとは知りもしなかった。
綺麗な袋を母に少し開けてもらい、中身を確認すると真っ白なセーターが入っていた。
でも、もらった時は暑い夏だったため、冬になったら着ようねと母に言われ、家のタンスにしまった。
・・・
そんなこともすっかり忘れたある日、寒くて冬物を出している時にふとそのセーターを思い出した。
「お母さん、K兄ちゃんにもらったセーターどこにある?」
「えーと、確かこの辺に…ああ、あったわ。」
はいと袋のまま母に渡された。適当な保管に少々呆れつつ受け取る。
袋から取り出し、早速セーターをもそもそと着る。
でも、なんかおかしい。
確か、もらった時は真っ白だったはず。でも、これはグレーに見える。
タンスに入れていたのに、白からグレーに色が変わった?
「このセーター、こんな色だったかなあ?」
私が母を呼ぶと、セーターを来た私を見た瞬間血相を変えた。
「すぐ脱ぎなさい」
「え?」
「早く!」
母のものすごい剣幕に驚きながら、セーターを脱いだ。
「あんた、これよく着たわね…。確認しなかったお母さんも悪いけど…」
「なんかこのセーター、痛い…」
着てすぐは何ともなかったが、段々と痒みがひどくなり脱いだあとも皮膚がビリビリ痛む。
「これよく見なさい、髪の毛を編み込んでるのよ」
近眼気味だった私には真っ白なセーターにしか見えなかった。
顔を近づけてよく目を凝らすと…グレーだと思った色は人の髪の毛だった。
理解した瞬間全身に鳥肌が立ちパニックになった。
それから後の記憶はない。
あのセーターはどうしたのか、怖くて誰にも聞けないままである。
K兄ちゃんがずっと独身なのはもしかして…。
※ガチ実話
おまじないで…マフラーやセーターに自分の髪の毛をそっと編み込んで好きな人に着てもらう(渡す?)と思いが通じるとかなんとか。
でも、あのセーターに編みこまれた毛の量は…と思うとゾッとした。
今でも思い出すと鳥肌が立つ。