〜。・出会い&優しさ・。〜
出会いは突然。
本当に突然だった。
雨の中。
一人っきりの少女。
ずぶ濡れ。
大きな青色の虚ろな眼。
綺麗な裸足。
綺麗な髪は無残に汚れている。
肌も汚れている。
小さな唇は震えている。
そして、倒れた。
少年は慌てて駆けつける。
「おいっ!大丈夫か?」
返事は無い。
少年は、今の自分の居場所へもって帰る。
小さく、可憐な容姿。
それは、天から落とされた神。
「――――ん・・?」
少女が目を覚ますと、そこは明るい光が入る部屋だった。
十畳ぐらいの大きさの部屋には、茶色のシンプルな机とローラー付の椅子。
薄型液晶テレビ・オレンジ色のマットの上に、ガラスの小さなテーブル・横にオレンジ色のクッションが二つ。壁には、制服と通学かばんが掛けられている。オレンジ色のタンス。床は白木フローリングで、壁はオレンジ色。そして、今自分がいる、オレンジ色の布団が掛けられたベッド。
「オレンジ好きなのかなぁ・・?」
少女はそう思った。
「そういえば・・・ここ・・・どこ?」
「――オマエ、反応遅いな」
「わっ!誰・・?」
「あぁ?オレ?オレは秋風風黄。12歳」
「そ・・・そうなの?」
「そうだ。オマエは?」
「え!?あ・・・あたしはぁ・・・そ・・そう!春風風歌!」
「そうだって何だよ・・・。まぁいい、なんでオマエ、あそこにいたんだ?」
「あそこ・・?あぁ、門前ね・・」
「はぁ?」
「えっ・・?ん?・・あれ!?あなた・・人間!?」
「あ?何言ってんの?オマエ、どうかしてるぞ」
「だ・・・だって・・」
「だって?何だよ」
「あのね、あたし人間じゃないんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・??」
「言ったとおり、あたしは人間じゃない。神様」
「か・・・神?嘘だろ?うさんくさい」
「・・・・何?証拠、見せようか?」
「え・・・?」
風黄が声を上げるのと同時に、周りの視界が揺れた。
いや、揺らいでいる。
風によって。
風歌は手を振り回している。ために休むと弱くなり、強く回すと強くなる。
「う・・うわぁっ!なんだ!?って、家具がやちゃめちゃ!?しょ・・しょうがない・・信じるから・・!信じるから止めろ!」
「ホント?」
「お・・おうっ!男にみごんはねぇ!」
その瞬間、ふっ、と風がやんだ。
「・・・・・・・・・・」
少年絶句。少女満足。
そのとき、
こんこんと、ドアをノックする音が聞こえた。
「ハロー☆☆☆風黄いるか〜??」
風黄の親友・一祐二だった。
「うわっ!隠れろ隠れろ!」
かなり小声で風歌にいう。そして、タンスの中に押し込む。
パタンと、タンスの扉が閉まると同時に、祐二が入ってきた。
「よおっ!って・・・変な格好してるな・・・何だ?新しいエクササイズか・・・?部屋も汚いし・・・」
祐二は苦笑い。風黄は、もっと苦笑い。
「まぁいい、オマエさ。彼女いる?」
「はぁ!?」
「頼むよ〜☆☆☆困ってるんだ!!」
どこがだよっ!
「演劇部でさ〜、カップル役があるんだけどさ〜・・それに当てはまる男&女がいないんだな〜・・で、男役はオマエでさ」
何故にッッッッ!?
「女の子、いないか?」
演劇部のことは演劇部で解決しろよ。
「オマエなら、10人ぐらいいるだろ?」
一人もいません。ていうか、んな、浮気しねーし。
「ほらほら☆白状しろ!」
することもねー!
「いねーよ。ったく、さっさとあっち行け!」
「またまた〜☆いるんだろ〜?」
「いない」
「う・そ・つ・き☆」
キモい!!キモすぎる!
こんなキャラだったか?
「あのさ、いないからさ。さっさとあっちいってくれる?」
「・・・・・・・・・オマエの相手役、あの植木鈴子でいいのか?」
「嫌だ。ていうか、オレやらねーし」
「すまん。もう、登録した」
ふざけんじゃねー。
本人への確認は?
「頼むよ〜植木は嫌なんだろ?」
確かに。
キモい。
アイツ。
アイツとやるぐらいなら、さっきの女でも・・・・・・・・・。
ん??
女?
アイツ・・・。
――いるじゃん。
――やるの??
突然、頭に風歌の声が聞こえた。
実際には喋っていないのだが。
――それ、楽しい?楽しいならやりたいな♪
この能天気め。
でも、丁度いいな☆
「あー・・・いいのがいるぞ〜」
「マジか!?」
途端、祐二の目の色が変わった。
「あ・・・あぁ・・まぁ・・な」
「じゃ・・じゃあ、明日、つれてきてくれ!」
といい、祐二はすたこらと去って行った。
「やったぜ♪説得完了♪脚本考えるぞ!」
と言う、祐二の声が廊下に響いた。
「ふぅっ・・きつかったぁ〜・・」
風歌はそう言って出てきた。
「ねっ、あたし・・出れるの?」
風歌はそう聞いてきた。
風黄は、こくん、と頷く。
そして言った。
「迷惑掛けんなよ。アイツ、きっと一生懸命やってるからな」
風黄はそういい、立ち上がった。
「あっ、どこ行くの?」
「トイレ」
「そっか」
二人の会話はそこで途切れた。
風黄が出て行ってしばらく。
風歌は優しく、そして小さく呟いた。
「やっぱ、優しいじゃん。人間は♪」
そう言うと、風歌は笑った。
「ミユーラ・・元気かな?」
風歌はそうも呟いた。
そして、やっぱり優しく笑った。
風黄が帰ってくると、風歌はベランダの手すりに腰掛けていた。
「うわっ、危ないぞ・・?」
「平気♪平気♪だって、落ちそうになったら、風で・・・ね?」
「聞くなよ。オレだってしらねーよ」
「そっか、そうだね」
他愛のない話。
外では、かすかに優しい風が吹いている。
その風は、風歌の綺麗な腰までありそうな長い水色の髪を揺らし、ワンピースの長いリボンも揺らす。風歌は蒼い眼を細める。
そして、翌日。
「風黄ー!!!つれてきたか〜!!?」
「・・・・・・・・今何時だよ・・。って、まだ三時じゃねーか・・しかも午前・・」
風黄は重たい瞼を開けてドアに向かう。
一方、さっきの大声で目覚めた風歌は髪をとかし、ベッド(風黄の)から降りる。
ガチャ、とドアを開けると、そこには演劇部部員の人、総勢10名が衣装や台本を持っていた。
「・・・・・・・・・さよなら」
風黄はバタン、とドアを閉める。
「はぃ!?待って!開けて!演劇の発表会、明日なんだよ!早くしないと!」
「・・なんでもっと早く・・・見つけなかったんだよ・・」
「風黄・・・?」
風歌は風黄のそばまで来る。
「ん?あ?あぁ、風歌か・・?」
「眠そうだね・・て、あたしも・・・同じかも・・」
二人は、うとうとしながら、話す。
そして、外にいた演劇部員は、風歌の声を聞いて、強制的に中に入った。瞬間、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!」
叫んだ。
流石に二人も耳元で叫ばれると、眼が覚める。
「ん!?何だ!?うるさい!?」
「ひぃぃぃ・・鼓膜がぁ・・・」
「風黄!ちょっと来い!」
「ん?―――て・・オイ!?」
風黄は祐二(他多数)によって、廊下へと連れ出された。
残された風歌は何もすることがないので、とりあえず、着替えた。
オレンジ色のパジャマのまま、廊下へと連れ出された風黄。
ただえさえ、いつもボサボサなのに、寝起きと言うことで、更にボサボサ。
「なんだよ・・」
「オマエ、いつあんな可愛い子見つけたんだ!?」
「・・・・いとこだよ・・・つーか、オマエら来るの早すぎ」
「気のせいだ!まぁいい。劇の名前でも教えとくか・・・」
「何だ?」
「美女と野獣☆」
ガッ、と風黄の蹴りが祐二のすねに当たる。
「う・・・嘘だ・・「ロミオとジュリエット」だ」
ガッ(←恋愛物が嫌い)
「す・・すまん・・で・・では・・「なんでも学校☆」」
「な・・なんだ?それ」
「あ・・ぁあ・・なんでもアリの学校の生活を描いたものさ☆」
つまらなそ〜・・。
「自給1000円」
「乗った☆」
「よし。じゃ、個性的なキャラを集めるぞ!さぁ、行くぞ!」
個性的なキャラ・・・?
「って、あっ!」
そんなことを考えているうちに、祐二達の姿は消えていた。
「はえーな・・って、うおぃっ!?風歌!?」
「何?どうしたの?」
「どこ行くんだよ!」
「えっ?あたしはただ、シャワーにでも?」
風歌はそう言って、すたこらと走っていった。
「シャワーなぁ・・って、今思えば、ここ“男子寮”じゃねーか・・」
「じゃ、ついてきてん♪」
「うわっ!って、オレ着替えてねーよ」
「じゃ、着替えて♪早く〜」
「わ・・判ったよ・・」
「ったく〜・・なんでオレがこんなことを・・?」
「ごめん!でも、我慢して☆」
大浴場から、風歌の声が聞こえる。
一方、風黄は大浴場と脱衣場を仕切る、一枚のドアの前で腕を組んで待っていた。
というより、見張っている。
ぶつぶつ文句を言っているが、しっかりこなしている。
えらい。
「んじゃ、出ようかな?」
風歌の声が聞こえた。と思ったら。
ガララッ!
と、ドアがイキオイ良く開いた。
「どあぁっ!?」
そのイキオイで思わず後ろを向いた風黄は―――・・。
「!?」
見とれた。
綺麗な線で、膨らんでいるとはいえない胸。
白く透明な細い肌。
――きれ・・・・・。
しかし、それは危険な合図だった。
一瞬にして、目の前が真っ暗になった。
「あ〜・・・ごめ・・」
「・・・・・・・・・」
「ごめんってばぁ・・」
「・・・・・・・・・」
反省の色を顔に浮かべている風歌と、無言のままの風黄。
あの後、風歌は驚きで、この脱衣場で巨大な竜巻を起こした。
風黄はそれに巻き込まれ、頭に巨大なたんこぶを作った。
「ごめん!ホントにごめん!」
「・・・・・・・・・・・」
風歌はどうしようかと迷う。
そのとき、ドアが開いて、例の“個性的な人たち”が入ってきた。
「なんや?おぅっ!可愛い子やないか〜・・って、風黄・・そのこぶは何や?」
少し怪しい関西弁の根岸誠也13歳のごにん。男。
「痛そうですね〜・・」
可愛らしいということで有名な愛坂未由12歳。男。
「あ〜・・・これは・・」
がり勉的存在の松島薫14歳。男。
「大変だなぁ〜何?覗きでもしたかぁ?」
バカの木村信悟14歳。男。
「あの・・・大丈夫でしょうか・・?」
優しい野原麻由美12歳。女。
の五人。+演劇部員(祐二他A〜I)10人。+風黄・風歌。
そして、練習が始まった。
それは、もう本当に適当だった。
ある程度台詞を覚えるだけだった。
他はもう瞬時にそこで考える。
そして、それは辛いものではなく、楽しいものだった。
祐二いわく、
「演劇はみている人が楽しいだけじゃない。この場にいる人がみんな楽しくなるようにすればいいんだ。そうすれば、ただ面白いじゃなくて、心から面白いと思えるんだ」
だそうだ。
風黄はほとんどツッコミ役だった。
といより、配分が決まっているかのようだった。
ツッコミ役→風黄・麻由美
ボケ役→風歌・誠也・未由・薫・信悟
だった。
そして、
――あははっ。
――あっ、コケた!
――ん?なんだ?えっ!?水のオケ!?って、うっわぁ〜・・・
――楽しいね!
――むしろ、可笑しい!
不満の言葉が一切ない、歓声が上がった。
もちろん、濡れたのは未由。
泣きまねで、女性のハートを見事にキャッチ。
薫の理論的な意見に、まじめに考える人もいた。
風歌の容姿は男性陣のハートをキャッチした。
麻由美は、ドジってコケた。
とにかく、楽しい話になった。
やっているほうも、見ているほうも、きっと楽しめたと思う。
「――楽しかったね!」
「そうだね〜☆☆☆」
ワイワイと盛り上がる、ギャラリー。
出演人&スタッフも盛り上がっている。
興奮が冷めない、世界。
翌日。
寮長に話をつけて、風歌は風黄と一緒に住むことになった(なってしまった)。
引越しの荷物の整理中。
風歌は突然言い出した。
「優しいんだね――ちゃんと、友達のことを考えてあげられてるんだもん♪」
「はっ?」
風黄が風歌を見ると、風歌は優しく笑った。
「そんな風になれるといいな♪」
長い!そして、話が飛びすぎ!
すみません!
すみません!
これから、頑張ります!