〜。・失いたくないモノ・。〜
「う〜ん・・・・・・・・風黄いないねぇ・・」
「だから探してるんだろうが」
「う〜ん、でもさ〜」
「しつこい」
「ライトみたいなこと言うなよ〜」
「オレはライトだ」
「え?」
風歌は眼をこするが、真っ暗な穴の中では誰が誰かなんて判らない。
「ね〜、エン〜」
「なんだよ」
「炎でさ、あたり明るくしてよ〜真っ暗で何も見えない〜」
「判った」
といった途端、
「ひいいいいいいいいいいいいいぃぃぃっ!」
風歌が叫んだ。
「な・・なんだ!?」
「あ、いや、別になんでもない。うん。っていうか、エン!目の前で炎を出すな!危うく顔を大やけどするところだったんだから!」
「あ、すまん」
「言ってる傍から〜!!いい加減炎を別の場所に移して!」
「判ったよ」
エンは風歌から離れるように、炎を動かした。
ようやく辺りが確認できた。
川が近くにあって、今いる岸は結構広い。
「・・・・・・・・・・・・・どうやって探す?」
風歌が皆に聞くが、皆首をかしげたままだった。
――・・・・・・・・か・・
「――――――っっ!」
風歌は突然、顔をあげた。
「どうした?」
「え、あ、うん、まぁ・・・・」
曖昧な返事にエンは首をかしげる。
――・・・・・うかっ・・・
まただ。
「ねぇ、今なんか声聞こえなかった?」
「声?聞こえないぞ」
ダイチがいい、エンもライトもうなずく。
「?」
――・・・・・ふうかっ!
聞こえた。
ちゃんと聞こえた。
「今、聞こえた・・・・・・こっちだ!」
風歌は声がした川の上流を目指す。
「あ、風歌!」
慌てて三人も追う。
が――
ひゅう・・・・。
『ん?』
四人は走るのを止めた。
「あれ?え?待って、ねぇ、ここって、風・・・・吹かないんじゃなかったっけ?」
「あぁ、そうだ。この辺りは一切風が吹かない」
「でしょ?なのに・・・・」
――バランス・・・・崩れ・・・た・・・・。
「―――――っ!・・・もしかして・・・風黄?」
「!風黄!?」
――そう・・・・だ・・。
「風黄なのね!?今どこ!?むしろこの風は何!?」
――だか・・・ら・・・バラ・・崩れ・・・た・・。
「何!?バラ崩れた?」
――バランス・・・崩れた・・・
「バランスが・・・崩れた?」
「バランス・・・・?なんのだ?」
――世界・・・・・の・・・・
「世界のバランスが崩れた?そりゃあ、大変よ」
――ミシャーラ・・・・・・・・・でも・・・怪奇・・・現・・・象起こって・・・・・・・る
「ミシャーラでも怪奇現象起こってる」
すでに、風歌が三人に伝える役に就任している。
――ミヤ・・・・・・・狙いは・・・・・命・・・・・精・・・・・・・霊
「ミヤ・・狙いは・・・命・・・精霊・・?」
「ミヤの狙いは・・・・・命の精霊!?」
ライトがそれぞれの単語を組み合わせ、言葉を作る。
――早く・・・・・守るんだ・・・・・命の精霊・・・・・
「早く、守るんだ、命の精霊・・・・?」
刹那、
『行っけええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!』
聞こえた。
近くで。
風黄の叫びが。
「!」
四人が瞬時に後ろを振り返ると、そこにはただの光があった。
それは序所に大きくなり、四人を飲み込んだ。
――見えたっ!
風歌は心の中で叫んだ。
光の中に、風黄がいた。
――今だ。
思ったと同時に、発動した。
事前に仕掛けておいた、風紐を。
ガシッ
と、風黄の腕を掴むと同時に、残りの三人にも秘密で仕掛けておいた同じ技が発動し、引き止める。
「!風歌!?」
「風黄!」
風黄はひどく動揺していた。
「離せ!風歌!死ぬぞ!?」
「知らない!じゃあ、一緒に来なよ!」
「無理だ!早く行け!」
風黄はこれまでにないように怒っていた。
「風歌!」
風黄の怒鳴り声に風歌は一瞬緩んだ。
しかし、すぐに力をいれ、とにかく離れないようにする。
「風歌!いいか!?これは・・・・」
風黄の言葉が言い終わらないうちに、風歌は力を振り絞って、三人を引き寄せた。
「エン、ライト、ダイチ!とにかく、風黄の動きを止めるのよ!」
「な・・・なんだかわかわないが・・・」
三人は、風黄の腕や足を力によって押さえつける。
「あ、おい、うわ、倒れる!?」
言ったと同時に、風黄は倒れた。
そして、周りの光も消えた。
「ったく〜・・・・・、一体何のつもりだよ〜・・・・つーか、せっかく力使ってオレ以外をここに連れて行こうとしたのによ・・」
「なんで、風黄は行かないの?」
「・・・・・・・・ま、いろいろあってな」
「じゃ、そのいろいろを教えて」
「・・・・・・・・・・・・・・・・あ」
『え?』
風黄が指差した先を見た四人。
その隙に、風歌たちの力の技を破壊し、逃げた。
「あ、騙したな!?」
「騙されるほうが悪い!」
「追いかける?」
「もちろんよ、それに風が使えるとなると、こっちのものよ」
風歌はにやり、と笑うと、風黄の行く先を風の刃でふさいだ。
煙を立てて、風黄は進む方向を変えた。
そこを、ダイチが地面を盛上げて行く手をさえぎる。
続いて、ライトが風歌のように行く手を塞いだ。
エンは行く手を燃やす。
「ったくぅ・・・・・」
風黄は諦めた様に、ため息をつく。
そして、風歌たちのほうを向いた。
そして―――
「ばーか、光の神がこんなんでくたばるかっての〜!」
急に、すべての技が瞬時に消された。
『!?』
そして、先ほどより速いスピードで逃げ始めた。
「力を使っても消される・・・・だったら・・・?」
ダイチの問いに、風歌は
「もちろん、力ずくで」
にかっ、と笑う風歌。
「諦めたか?」
風黄は建物の上から四人を見る。しかし、四人の姿はどこにもなかった。
「・・・・・・・・・・?」
辺りを見回すと、武器庫にいる四人を見つけた。
「武器庫・・・・・・・・・・?」
武器庫から出てきた四人は、それぞれ武器を持っていた。
風歌はロープとナイフ。エンとライトはそれぞれ銃を二丁ずつ。ダイチは斧。
やめてくれ―――――――――――――ッッッッ!
一体何をする気だ――――――――ッッッ!!
風黄はぞおっ、とする気持ちを抑える。
でも、その武器だけではオレに勝てない。
そう確信した風黄は念のために回りを確認する。
「あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
この確認は正しかった。
水の神、ウォウがいた。
「・・・・・・・・・もしや、命の神候補?」
ウォウが風黄に問いかける。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
次の瞬間、風黄は迷わずその場から逃げた。
「あ、そうなんですね!?」
ウォウも追いかけ始める。
「ウォウ?どうした?」
「命の神候補発見したんです!」
「何!?命の神候補!?」
叫んだのは空気の神・ジェス。
二人して風黄を追いかける。
しかし、地面に降りてきた風黄を待ち受けていたのは、もちろん、あの四人であって・・・。
――最終的に六人に追いかけられる風黄であった。
「ったく〜・・・・なんでこんなことに・・・」
猛スピードで走りながら考える風黄。
とにかく、今は捕まったら終わりの鬼ごっこをどうにかしないと・・・。
風黄は振り返り、何かをつぶやいた。
すると、地面が盛り上がり、行く手をさえぎった。
「!?ダイチの技を・・・」
続いて、風黄は二回何かをつぶやいた。
すると、炎と水が六人を襲った。
「今度はエンとウォウの技・・・・!?」
そして、また二回つぶやく。
稲妻が走り、急に六人のいる場所の空気が薄くなった。
「!ジェスとライトの技・・・・・!じゃあ次はあたし・・・・?」
風黄は最後につぶやいた。しかし、それは六人にも聞こえた。
「我が命をかけ、六人を守り続けろ」
技の呪文ではなかった。
「我が命?・・・・・・・・・・・・・って・・・ちょ、あ、え、ふ、風黄!?」
遅かった。
風黄は消えていた。
いや、正確に言えば――消滅した。
――風黄はもうこの世に存在しない。
命をかけ、守るため。
守りたいものがあるからこそ、自分の命を懸けた。
六人の体に、刻まれたそれぞれ司るものの形。
――オレにとっちゃ、オマエらは失いたくないモノだから。
風に乗って聞こえた。
「バカな話・・・・・・・・・」
風歌はつぶやいた。
風黄があたしたちを失いたくないものモノだったら、あたしたちは風黄を失いたくないモノなの。
一緒なの、皆。
ほかの五人も、意識がないようにぼーっ、と突っ立っている。
――やっぱ、風黄はバカだ。
風歌はキッ、と虚空を睨む。
今度会ったら叩きのめしてやる!
変なことを心に決めて。