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〜。・いぢめでしょ・。〜

風歌は立ち上がると、“演技”を始めた。

エンも出来るだけ知らないフリをする。

「風歌・・・・」

ライトは怒りに体を震わせていた。

顔には出さないが、風歌は心の中で泣いていた。



――人は殺さない。



そう、心に決めて、そうやって生きてきた。

けど、今。殺しそうになった。

大切な友達を。

そんなことだけはあってはいけない。

――だってさ、人が死んだら哀しいじゃん?

いつか、誰かに言ったことがある。

風歌は、操られているフリをしながら、風玉を出す。

遠くで、ミヤとキイティスが見ている。

バレないように・・・。

しかし、その思いとは逆に、



「神にはやっぱり、効かなかったか」



ミヤが小さくつぶやいた。

そして、ため息を一つついた。


そして、風黄もうすうす感じていた。


――アレ、演技だ。


と、こっそりライトに耳打ちする。

ライトはゆっくりうなずく。

そして、この戦いは“演技”の戦いになった。



「演技、どうだ?」

「はっきりいわなくてもにがてだ」

「演技嫌だなぁ・・面倒〜」

「演技の前に傷をどうにか・・」

「演技はうまいってことにでもしとくか」

神候補五人は、愚痴をはいている。

しかし、ミヤの横でキイティスが理解を出来ていないようだった。

「でも、楽しめそう・・・!」

「一丁やりますか」

「そうだな」

「傷を・・・・・」

四人は違う意味で楽しんでいた。

「つまらない」

ミヤはつぶやいて、消えた。

「あ、ミヤ!」

キイティスも続いて消える。

「ミヤ、消えた?」

風歌が問いかける。と、その瞬間に、



「戻った――――――――――――――――――――――ッッッ!!!!」



風歌が叫んだ。

そして、伸びたりいろいろな動作をする。

「エン、治ったぞ」

いつの間にか、精霊により、エンの傷は消えていた。

そして、風歌が三人のほうを向いた、そして、



「ごめんっ!」



頭を下げて、誤った。

「不注意だったよ、まさか、飲み込むとは思わなかったの!」

「オレも」

「同感」

「もちろん」

「で、まぁエン、大丈夫だった?そのときまで意識なかったから、攻撃した後、治った!」

「まぁ、痛かった」

「本能にはかなわなかったか・・・・」

「そうだね、んでもってついで!遊ばない?」

この遊ぶとはこうなる。

遊ぶ=神同士=練習の戦い

「楽しそうじゃない!?」

まるで反省の影も見えない言い方に、風黄は、


「じゃ、風歌に不利なところでやろう」


と一言。

「・・・・・・・・・・・・・マジ?」

と風歌。

「賛成!」

「右に同じ」

とエンとライト。

「そのほーがオレら的に楽しいし」

「あたし的につまらないし」

「多数決で決めよう!賛成の人!」

「あっ!ひどい!」

もちろん、三対一で風歌は負けた。

「くぅぅっ!ひどい!このばかっ!」

「じゃあ、行くぞ〜」

「あ、無視!」

「よ〜し、ゲート開いたぞ〜」

「あ―――――――――ッッッ!無視!?やっぱし無視ですか!!?」

と言ってる内にも三人は扉の中へ。

「フンッ、だ!ってひぃっ!このロープは何!?」

手首に巻かれたロープによって、風歌は無理矢理扉の中に引き込まれた。



「あたし、ここ嫌い」

「だからだよ」

「うわーお」

「風歌にとっては・・・・・・・・」

「だからよ!ここはミシャーラの中でも風が吹かない特殊な場所!風の神のあたしにとっては苦難中の苦難よ!」

「よ〜し、やるか〜」

「無理!絶対絶対無理!」

「じゃあ、はじめるカウントダウン5・4・・・」

「無視かよ〜!!」

「3・2・1・0〜!!」

「みんなあたしを狙うな!狙いやすいかもしれないけど!」

風歌は上空にとびがる。

「試しで・・」

風歌は風玉を出そうとするが、ぽすっ、とマヌケな音を出して消滅した。

「・・・・・・・・・・・・だぁ―――――ッッッ!」

風歌はとにかく逃げた。

「逃げ足だけは速いな」

「そうだな」

「ついでに、エイ」

「どはっ、風黄!何すんだよ!」

「攻撃」

「ついでにオレも」

「ライトおおおおおおおおっっ!」

「よしっ、今のうち・・」

風歌はすたこらと逃げ続ける。とにかく逃げる。猛スピードで逃げ続ける。

「あ、風歌が逃げた!」

ココに来ていじめる標的がいつの間にか変わっていた風黄たちが風歌を追いかけ始める。

エンが小さく、安堵のため息をつく。

「きゃ――気づいた!!!!!!!!」

風歌は叫び、岩陰に隠れた。

すると、突然、風歌のいる地面がぐにゃり、と揺らいだ。

「へっ?」

声を上げると同時に、風歌はゆらいだ地面の中に落ちた。

「――――――――――――――――ッッッ!」

悲鳴を上げる暇もなく、風歌はその場から消えた。

岩陰をのぞいた風黄たちは

「あ?消えた?出てくるところ見たか?」

「見てないぞ」

戸惑い、辺りを見回した。



「つたたたたたたた・・・・・・」

風歌は尻を押さえながら、立ち上がる。

「ったく〜・・・・一体何が起こったの・???」

「そ・・・・・・・・・・それはこっちのセリフだ・・・・早く降りろ・・」

「ん?・・・・・・・・・・地の神!えっと・・・・・・・」

「ダイチだ・・・・ていうか早くドケ!」

「あ、ごめんごめん」

風歌は本当に誤っているのかわからない声で言う。

下敷きになっていたのは、地の神――ダイチだった。

「ていうか、なんでイキナリ落ちて来るんだよ・・・・ここは、オレしかしらない場所なのに」

ダイチは軽く不満を漏らす。

「さぁ?この上にいたら落ちた」

「・・・・・・・・・・・・・」

ダイチはそこに手をやる。

すると、ぐにゅん、と手が中に入った。

「たしかに・・・・・・・・・・・」

ダイチはそういい、手を抜く。そして、土玉を投げつける。

土玉はべちゃ、とつぶれ、その場所を固める。

「これで大丈夫だな・・・」

ダイチは、ほっ、としたように顔をほころばせる。

「・・・・・・・・・・・・」

初めて、風歌はダイチの自然な笑みを見たような気がした。

ダイチはいつの間にか、いつものような物騒面になっていた。

「オマエ、帰り方教えてやるから帰れ」

言い方が多少きつかった。これにむっ、とした風歌は・・・



「嫌!」



胸を張って答えた。

「は?」

「だってこのまま出て行ったら、あたし死んじゃうし!」

「はぁぁ!?」

「風黄とかエンとかライトとか!」

「風黄??」

「うん、人・・・・・・・・・・ぢゃあないね。光の神だよ」

「光の神ぃぃぃぃぃっっっ!?」

「うん」

「うん、じゃねーよ・・・・大変なことになるぞ・・・」

「そうなの?」

「あぁ」

「へぇ〜〜〜・・・」

「ところで、何故にオマエたちはこんなところに?しかもオマエにとっちゃあ、ここは苦難の場所だぞ?」

「そうなんだよ〜、聞いてよ〜!!」

「何を」

「話を。実はさ〜、まぁいろいろあってさ〜、罰ゲームでここで戦うんだよね、遊びで」

「へぇ」

「あたしがまぁ、ちょっといろいろ起こしたんで、あたしに不利な場所で戦おうとするんだよ〜!?酷いよね〜!!」

「オマエが何かやったならオマエの責任だ」

「ぐっ、コイツもあたしの敵・・・・・・・・・」

風歌はダイチから一・二歩下がる。

「あ・・」

ダイチが小さく声を上げた。

「何?ってえええええええええええっっっ!?またぁぁぁっ!?」

風歌はまた、穴に落ちた。

「風歌!」

ダイチは慌てて追うために穴に飛び込む。




「ふ・・・・・・・・風黄・・・・・!」

「な・・・なんだ・・?」

珍しくライトが驚いている。

その理由。

急に人の手が土から出てきたからだった。

これは、ダイチが土の状態を確かめるために出した手だった。

しかし、何も知らない三人にとっては、衝撃のことだった。




ばっしゃ―――んっ

と、水に落ちる音が二回連続でなる。

しばらくして、水面に二つの頭。

「ぷはっ!」

「お・・おい!大丈夫か?」

ダイチが風歌のもとへ泳いでくる。

「う・・うん、なんとか」

しかし、かなり高いところから落ちた風歌たちは相当な衝撃が来ているはずだ。

ダイチは力で衝撃を和らげたとしても、力が使えない風歌にとってはコンクリートに叩きつけられたようなものだ。

「痛い・・・」

風歌はつぶやくと、水の中に沈んだ。

「あ、おい!?」

ダイチは慌てて、岸に風歌を引き上げると、壁に寄りかからせた。

二人ともびしょびしょでこれだったら風邪を引くこと間違いなしだ。

しかし、乾かすにも、火はないし、風で乾かそうにも風の神はダウンしているし、その前にここでは風が使えない。



――危険。



一瞬にして、ダイチの心に不安が広がる。

しかし、ぶんぶん、と首を振り、冷静に考える。

「まず、コイツの服をどうにかしないと・・・・・・」

かといって脱がしたら変態だ。

「うっわ〜・・・」

更に最悪なことに、ここは先日の大雨(ミシャーラにも雨は降る)でこの川は氾濫していた。何故その中で泳いでこれたのかと言う疑問は浮かんでこなかった。

水が岸を飲み込むのも時間の問題だ。

「ま、とにかくオレの服ぐらい乾かしとこう」

ダイチはそう言ってきていたTシャツを脱ぐ。そして、Tシャツを絞る。だばだばだばと水が垂れてくる。そして、パンパンッと宙でTシャツを振り回す。

ぴちゃっ、とダイチの足に水があたる。

「ん?」

ダイチが眼をやると、いつの間にか水がそこまで来ていた。

「・・・・・・・・・・・・・・」

ダイチは地面に手を置いて、力を入れる。たちまち、土の大きな壁が現れた。

「これで、しばらくは・・・・・・・・でも土だからな・・・・・・・・」

ダイチはTシャツを着て、もっと丈夫になるように、何度か同じ動作を繰り返す。

しかし、序所にひびが入ってくる。

「・・・・・これでこれが崩壊したら、やばい水が・・・」

ぞーっ、と不安が広がる。

ピシッピシッ、とひびが入り、ダイチの不安を大きくした。

そして、ひびがおおきくなり、今にも崩壊寸前の土の壁。

ダイチは風歌を抱えた。

ピシッ、ピシッ・・・・・・・とひびのあいだから水が垂れてきた。そして、




ブワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ




と、水があふれ、二人に襲い掛かってきた。

「くっ・・」

ダイチが風歌を抱きしめる力をよりいっそう強くしたとき、





「風歌!」





と声がした。

そして、同時に、鉄砲水のように襲い掛かってきた水が何かによって防がれた。

「・・・・・・・・風黄ってヤツか・・・・・・・・・?」

「ダイチか?」

風黄は両手を前に出し、結界を張り、水を防いでいる。

「本当に・・・・・・・・・・光の神だったのか・・・・」

「まあな・・・それより、エン!ライト!早く来い!」

「おうよ!」

「判っている!」

声がしたと同時に、すたっ、と目の前に二つの影が降りてきた。

パチパチッ、という音から、一つはライトだと言うことが判る。

もう一つは、紅く燃える炎からしてエンだということが判る。

「エン!こっちきてくれ!」

ダイチは叫んだ。

「判った!なんだか判らないけど!」

エンは叫び返すと、急いで二人の下へ行った。

「エン、とにかく暖めてくれ」

「んぁ?って風歌!?すげー熱・・・」

エンは言われたとおり、手に最大限の炎を出す。

それによって、服などは瞬時に乾き、同時に体を温めてくれる。

「助かった」

ダイチはそうつぶやくと、風歌を地面に寝かせた。

一方、風黄とライトは、水をとにかく押し出す。

とにかく下流に水を流す。最大限の力を使って押し出す。

ドバアアァァッ、と水が下流に向かって流れ出す。

「なぁ、ライト」

「なんだ?」

「下流のほう・・・・・・・・・」

「?」

「大変なことになるな」

「気にするな」

ようやく水がおさまったので、二人は力を使うのを止めた。

「お〜い、風歌〜??生きてるか〜??熱は上がりっぱなしだけど」

エンの声が聞こえた。

「熱?」

風黄たちが駆けつけると、顔を真っ赤にした風歌が寝ている。

「治せるか」

風黄はつぶやいた。

「治せるのか?」

ダイチが聞く。

「あぁ、そりゃ、もう完全に」

「じゃあ、やってくれ」

「判った」

風黄は風歌の前に来ると、右手に気を集中させた。

すると、魔法陣が出てきて、まるで波紋のように、広がっていく。

そして、それを風歌に向ける。

「お・・おい、風黄・・・?それは・・・まさか・・・・・」

「どうしたんだ?ライト」

「・・・・・・・・これは、自分の気を与えるときに使う技だ」

「?体の調子を治せばいいじゃねーか」

「ばかか。オマエは。ここは、風が使えないだろ?」

「あぁ」

「それは、風の神の気を外に出すからなんだ」

「気を外に?」

「あぁ、だから風歌の気を回復させれば・・・・・・・・・・」

「難しいことはパス」

「馬鹿だ」

「ん?なんか言ったか?」

「いいや」

一方、風黄は向けたまま、突っ立っていた。

「・・・・・・・・・・・・・はぁ〜・・あ、三人とも。後は頼んだ」

『は?』

言った瞬間、魔方陣から数本の光の糸が出てきて、風歌を包み込んだ。

そして、カッ、と二人を光が包んだ。

「あ、おいっ!言っとくぞ!すべて与えるなよ!」

「・・・・・・・むり」

「ふざけんな〜〜!!」

「・・・・・・・・・・」

返事が無かった。

「流石、光の神・・・・・・・・・・・やることが半端じゃねーな」

「関係ない、まず、いつ終わるんだ?」

「さぁ?」

しばらくして、光が収まった頃。

「ちょ、え!?あ、ふ、風黄ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!?」

風歌の叫び声が聞こえた。

「どうした!?」

「あ、え、う、い、お、あ・・・」

「ちゃんと話せ!」

「ふ、き・・・・・・・・・・・・・風黄が・・・きっ・・・消え・・・消えた!」

「何で!?」

「わ・・・わからない!けど、消えた!」

「はいぃぃぃぃっ!?」





――風黄は真っ暗な闇の中にいた。





「まいったな・・・・・・」

風黄はつぶやいた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・風黄か・・・」

ミヤはその闇に溶け込むようにいた。

「ミヤか・・・・・・ここはどこだ?」

「世界の狭間」

「世界の狭間・・・・・・・・・・・・・・・・・」

風黄はそう言ってあたりを見回した。

すべては真っ黒な闇。

何も無い。

光も何も無い場所だった。


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