SFの行き先は
SFの行き先は(惑星間探偵事務局KSK)
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今から百年前に連合と同盟の間で起きた大戦は、新型兵器の投入で停戦して和平、今は争いと言っても小さなものしかない。同盟の新型兵器は投入の必要がなかったからなぜ使ったのかと議論の的になることがあるけど、議論したって吹き飛んだ星は戻らないからそこそこに終わる。知ったって仕方ないし知りたくない、っていうのが本音であまり見ないようにしている。だいたいそんな感じの話をカゼノさんがしていた。ケイトさんが真面目に聞いてるけど、あれ?って思っていたらシリカ君が言ってくれた。
「新兵器を使ったのは連合軍ですよ?」
カゼノさんは、たぶん実権がなかったんだ、って言っていた。すでに操縦桿を手放していて、停戦のために作らないといけないとそそのかされた。もし当時の特殊部隊の独断がなければ、複数回使っていたかもしれないなんて怖い話をする。当時の特殊部隊の責任者は、戦犯扱いだけど名前は知られていない。カゼノさんがなぜか知っているらしいんだけど。
「ジョン・ドゥ。結構ベタなんですよ」
たまに名前を捨てて仕事をする人がその世界にはいて、この前なくなったステイモスさんもそれに倣っていた。だからふと思い出して、考えていたらしい。当時の特殊部隊は権限もないのに突入して何かのスイッチを切った。その後外交が大騒ぎになって、停戦。中央司法判断所が大忙しだったらしい。騒ぎが落ち着く前に、特殊部隊は全員処分されていろんな意味で死んでしまった。そして特に何も起きず、今に至るらしい。
なんでそんな話をしてるんですか?って聞いたら、カゼノさんは思いついたらしい。SF。オレのSFではね、って話を続けた。
戦争というのは政策として考えたとき無意味を通り越して無価値、デメリットしかない。でも資金繰りの手段だと思えばこれほど手っ取り早いものはなくて、どんどん研究が進む。もちろん自分の星が始めたら総攻撃を受けて研究どころではなくなってしまう。だから、この星とかあの星という話ではないのではないかという。オレのSFでは、とまた話が続いた。
複数の星に、要人として何人か内通者を送り込む。ここが迂闊な判断を装ってミスリードすればいくらでも衝突していくらでも喧嘩が始まる。同盟軍には洗脳技術を作らせて、連合軍には特殊爆弾の原理をリークする。お互いにぶつかりながらどんどん開発は進んで、反物質を三位相に分ける手段が見つかり、ドカン。停戦しなければもう一度くらい使ったかもしれない、なんて言いだした。シリカ君が慌てて否定した。いくら反物質を使ったってその規模の爆弾にはならない。今さらミサイルを研究したって大した価値はないはずなんだけど、「じゃああの爆発は何だったのか」と聞かれると、特に考えはない。オレのSFでは、とまた話が続いた。
反物質は物質の逆の性質を持つ。じゃあ最初の物質は何なのかという話があって、水素やヘリウムでもすごいパワーが出る。最初の物質が、ただでも強力なパワーを出す波動共鳴体なら?宇宙にある波動を共鳴させて一点に集める波動共鳴体は、精製しなければ大したパワーは出ない。理論上の最高出力はすでに実現されているけど、別のアプローチをするなら話が違う。三位相反物質の研究は副産物として、三相の反波動共鳴体を生み出した。変換効率は限りなく100%に近くて、この状態になるとビッグバンをもう一度起こす規模の爆破も可能なはず。三相波動共鳴弾の完成後、それ以上戦争を続けてもうまみが少ないから、やめた。今もどこかでそんなものをちらつかせているのではないか。そんなわけないじゃないですか、って私もシリカ君も言った。ケイトさんも言ってくださいよ!って言ったのに、ケイトさんは言ってくれなかった。カゼノさんは話を続けた。少し前の連合軍特殊部隊は、超法規的措置で設備を回収した。だいぶ昔に作られた、大味な装置。だからやたら予算がかかって、何度も建造できないようなものだけど今は連合にあって、保管されている。なんでそんなこと知ってるんですか?って聞くと、「だから、SFですよ」って言っていた。今連合の内部にそういう人たちがいたら、材料になる三種類の波動共鳴体でそういうものが作れる。だから、一回だけ押さえても仕方がないかもしれない。カゼノさんの話は、なんだかだんだん近くになってきた。私たちの持っている、三つの石。私がさらわれたとき、カゼノさんは道すがらこれをかすめ取ったらしい。緑とオレンジと紫の、三つの石。無性に怖くなって、端末で検索した。そんなわけないですよ!って言いたかったから。
当時の記録は、同盟軍のものはぼんやりしているけど連合軍は勝ったんだからはっきり残っている。連合の研究を牽引していたのは、ドクター・フィルモ・アンリコ。……開戦前に連合にやってきた、同盟国の科学者。あっちもこっちも喧嘩しているようで、同じ人が始めている。同じ人というか……同じ何かが。私は顔が引きつったのが、自分でもわかった。そしたら、カゼノさんが大笑いし始めた。
「よくできてるでしょ?出版でもしようかな」
……ビックリするじゃないですか!タイピングもできないのに小説なんか書けませんよ、ってようやく落ち着いた。ただの作り話で、安心した。私とシリカ君が笑っていると、ケイトさんがカゼノさんを呼んだ。事務所の片隅にあるテレビを指さす。映っているのは、政治家。賢くてウィットに富んでジョークも言えるからみんなに大人気で、これからの連合はきっと良くなっていくってみんな喜んでいた。カゼノさんは、普段ニュースを見ないからつまらなさそうだった。
「オレにできることはないよ」
妨害ができるのは第四期まで、手段がわからないなら対抗策もない。そう言ってもう興味を示さなかった。そんな顔をしないでほしい。カゼノさんはその政治家を、まるでミスター・タップシューズを見るような嫌な目で見ていた。これはSF。ただのSF。だからこれ以上何も起こらない。私はそう言い聞かせるしかなかった。




