表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

エネルギー・パニック!!

エネルギー・パニック(惑星間探偵事務局KSK)

※※※※※※※※※※※※


 宇宙のどこに行っても、科学の水準はあまり変わらない。どこの星も全体がつながり始めたタイミングでつながったのでそこがスタート、お星柄が違うだけでどこが優れているという話ではない。でも条件が違うと言えば違うのでやることは変わる。初めて外宇宙の文明と接触したのは、地球人。資源もないのに技術に物を言わせて短距離のワープをしたところに別の文明があった。こちらはエネルギー源を持っていたのでエネルギーに任せて開発していた。二つそろったらどこの星でも一通り行けるようになって、宇宙開拓時代。前から通信だけはできていたという星もたくさんあって、割とすぐにネットワークができた。今でも、エネルギー源は最初に出会った星が一番すごい。というか、ここが一番エネルギーの抽出の研究が進んでいて、ここに頼ると早い、という話のようだ。星全体が波動共鳴体でできていて、光波とか宇宙線を熱エネルギーに変えられる。この星の人たちにとってはそれが当たり前なので、どうやって効率的に使うかという発想が出にくかった。たまに言い出す人がいたけど、そんなことしてどうすんの?と言われて研究が進まなかった。思いつかないときは思いつかないものだ。


 今でも短距離航行とかワープによる超長距離航行とか、エネルギーがたくさんいるときはこの手法になる。波動共鳴体を高純度に精製すればすごい能率になって、ビッグバンから電源をもらっているようなものだから使いきれと言われたらその方が困る。女の子が信じてくれたら空を飛ぶことも海の水を飲み干すこともできるという泥棒なら、何かとんちを考えるのかもしれないけど。だからこんなことは、滅多にないんだけど。


「なんでこんなに高いんだよ!」


 カゼノさんが店先で揉めている。私たちの宇宙艇は、仕事帰りでスタンドにエネルギーを補充しに行った。波動共鳴体は精製すると維持管理に手間がかかるから、宇宙艇に積んでいるわけではなくてエネルギーを補充しに専門店に行く。専門店は人件費や消耗品の購入があるからお商売になって、結構いいお金になるらしい。ただ、精製後の波動共鳴体を長時間維持する技術はまだなくて1キロあたり何億ライムという額になるから、危ないと言えば危ないお商売だ。資格を持っている提携店だけが、それ相応に安定して経営できる。だから大手しかやってなかったりする。


 なんだか最近波動共鳴体の反応安定剤が値上げになったらしくて、提携店でも結構厳しいからこれ以上安くなんてできないらしい。場合によってはもっと上がるから大変だ、なんて店の人はいっていた。私たちは、高くても買わないと帰れなくてケイトさんに怒られるから買わないといけない。自分たちの船で来たから、自腹。素直に送ってもらえばよかったのに、意地なんか張るから。


 カゼノさんがなけなしのお金で必要な量を買って充電した。大丈夫ですか?と聞いたら「ケイトが待ってるからな」って。喧嘩しかしないのに気になるんですね、って言いたかったけどシリカ君の目が怖かったから黙った。そしたらカゼノさんが、シリカ君に聞いた。


「シリカはデルドレッド連邦に詳しいよな」


 シリカ君の出身は別の星だけど、デルドレッド連邦の地球系の人たちが移住した子孫らしい。波動共鳴体の産出国。カゼノさんは「反応安定剤って自分で作れないか?」って危ないことを言い出した。ホームセンターの材料でC3Pを作った経験があるらしくて、案外なんとかなるんじゃないか?って聞いていた。C3Pって何だろうと思って手元の端末で検索すると「軍事用簡易爆弾」というのが出てきた。これではないだろう。だからこっちの三輪自転車の型番のことだろうな。せめて二輪を作ればいいのに。


 シリカ君はデルドレッド連邦出身の人の子孫だけど、そこまで知ってるわけないと思ったら案外知っていた。伝統工芸みたいなものなのだろうか、基礎原理と必要な触媒、長期間の運用には……カゼノさんがメモってるけど本当にするつもりなのだろうか。しばらく宇宙艇には乗らないでおこう。そう思って聞いていたけど、シリカ君はこう話をくくった。


「最新のものは知らないですけどね」


 でもこういう理屈で反応安定剤が作れる。昔は困らなかったらしいですよ、と付け加えると、カゼノさんが難しい顔をした。それで私に、今の反応安定剤の情報を検索してくれ、と言ってきた。メーカーのホームページとか化学の好きな人の言ってることでいい、というので適当に出した。組成は難しい名前ばかりでわからないけれど、カゼノさんが見たいのはそれじゃないらしい。主成分と変換効率。今もその辺は変わらず、複数の薬剤が入った以外は同じで97%の効率を実現したらしい。カゼノさんは、もう一度シリカ君に聞いた。この方法で反応安定剤を丁寧に作ったら、どれくらいの効率になる?って、シリカ君は今のものにはとても敵わない、と言っていた。がんばったって85%でしょうね、と疑問には思っていないみたいだけど。


「値上げ幅は?」


 今の反応安定剤は高くて、小売り専門店が手に入れにくいようなものだ。原始的な手段で作っても12%くらいしか効率が変わらないのに、歴史をひもとけば250倍の値段になっている。もちろん安全面や精度を保証しているから一概に比較できない。大戦後には反応安定剤の質が低くて爆発事故が何回か起こった。みんな怖くて、安全なものしか使えないし専門店に行かないと不安。もちろん反応安定剤が高いから専門店は高い値段しかつけれない。誰も悪くないはずだ。だけどカゼノさんは、何か引っかかったようで。


「……本当に爆発するのか?」


 何言ってるんですか、自作で事故ったらどうするんですか!怖いからやめてください!でも別に作りたいわけではないらしい。大戦後に何回か爆発事故が起きて、その後「みんなが気をつけているから」事故は起きていない。本当に「みんなが気をつけているから」なのか、というのが不思議らしい。何回かは不手際だったのだろうが、その時期に事故が集中した。当時だって最低限気をつけていただろうに、多すぎないだろうか、とおかしなことを言い出した。だから、大戦後だから反応安定剤がの出来が雑だったんですよ!と私もシリカ君も言ってたんだけど、専門店の人がトラックから何か受け取って店の奥に引っ込んで、その後私たちの宇宙艇は、爆発した。あまりにもボロいから、乗ってたら危なかった!って私もシリカ君も疑問に思わない。そんな船によく乗っていたものだ。でもカゼノさんは、脇目も振らずに店の奥に走っていった。私たちも追いかけると、波動共鳴体の反応炉がなんだかおかしい。メーターが全部振り切れてて、赤いランプが点滅。この状況で「たぶん平気だろう」なんて思う人がいるわけもなく、私たちは「きゃー!」と悲鳴を上げた。カゼノさんは、店の人を問い詰めていた。どうやら今届いた反応安定剤をつぎ足したらしいんだけど。


 反応安定剤は基本的につぎ足して使うから、メーカーを変えたくない。最近カタログのラインナップが変わって、代替商品はこの炉につぎ足せると仕様書を何度も確認したはずなのに、いきなり暴走。何が悪かったのかまったくわからないらしい。きっと店の人はわからないんだろうけど、お客としてここにいた私たちにはどう考えても反応安定剤が悪いとしか思えない。カゼノさんは、シリカ君を呼んだ。安定剤を抜いたらどうなる?って安定しないに決まっている。このままだと暴走、爆発。久しぶりに星が半分吹き飛んだ、というニュースがネットワークに載る。私たちはニュースを読めない、吹き飛ぶから。きゃー!それしか言うことがなかった。


 もし反応安定剤に余計な物が入っていたなら、反応を加速する促進剤だった可能性が高い、って説明するシリカ君も慌てている。化学反応で安定剤からエネルギーを奪うから、むしろ安定させるためのエネルギーがなくなってドカン。手元には鎮圧剤もあるけど、入れすぎたら安定剤のエネルギーが飽和して行き場を失い、やっぱりドカン。こんな状況を想定してないから、装置で自動化されていない行程らしい。カゼノさんは、次に私を呼んだ。裏に脱出艇があったから、店の人とシリカを連れて乗り込んでください、って私運転できません!って言ったんだけど、脱出艇だから移動しなくても救難信号を出す。問題ありません、って送り出された。あの、カゼノさんはどうするんですか?みんなで乗ったらいいじゃないですか!でもカゼノさんは乗らないらしい。……この星には町もあるし人もいる。オレはいいから一度避難してください、なんてできるわけないじゃないですか!でもカゼノさんは本気だった。


「無事を祈ってください。愛する人の無事をね」


 下手な冗談に文句を言う暇はない。ここから私たちにできることはなくて、カゼノさんは動かない。一度逃げるしかなくて、宇宙に飛んだ。衛星軌道をぐるっと一周した頃に元の星の警察に呼び止められて「遭難者かと思った!」と叱られた。でもそれはそのときだけ。遠い宇宙の向こうでたくさんの爆発が起きた。この星で爆発が起きなかったのは、不思議だったらしい。



「マニュアルで?アホじゃない?」


 そりゃ、迎えに来たケイトさんも驚く。促進剤と鎮圧剤を手動でつぎ足して中和して、稼働範囲内に戻すなんて手先が器用選手権で一回戦まで出れる。手がかりは周りのメーターだけだけど振り切っているから動き幅が少しだけ、手も目も頭もフル回転でどうにかなるだろうか、って誰でも疑問だ。カゼノさんは前の職場でT-KTCの制御で似たようなことをした、と言っていたけど、バカ!命知らず!ってケイトさんの雷が落ちて、黙っちゃった。波動共鳴体の専門店は宇宙のいろんなところでたくさん爆発したからしばらくエネルギーが高騰して、ケイトさんの事務所もこれからの経営が大変だ。ところでT-KTCってなんだろう。検索してみると「戦略機動重戦車」というのが出てきた。これなわけないから、こっちの原動機付きエアロスライダーの型番だろう。カゼノさんって、こんな乗り物しか乗らないのだろうか。危なかったなあって私たちが言っていたら「危なかった」ならいいんだけどな、ってカゼノさんが言っていた。どういうことかは、あんまりよくわからなかったけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ