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3/8

3話

ケイタは、明日の昼の情報番組レギュラーがあるため、12時前には帰って行った。


いや、帰らさせた、という方が正しい。本人は最後までいる気でいたのだが、アラタの呼んだタクシーに、無理やり押し込まれてしまった。



ケイタと入れ替わるように、仕事を終えたメンバーのジュンが急遽参加。



これで飲み会は延長戦が確定した。



「コウキの彼女?はじめまして、よろしくね」



美咲は、ジュンに両手でガッチリと握手をされて、酒のせいではない頬の赤らみを見せた。



黒髪に切れ長の目、クールビューティと称されるジュン。


時々、韓流アイドルと間違われる。正真正銘、日本人なのにだ。東北出身。本名は純次郎。名前も純和風。さすがに、売りたいイメージとのギャップがあったので、芸名は「ジュン」としている。



美咲は韓流ドラマやK-POPを好んでいる。


俺のような日本のアイドルには元々感心が薄かった。


つまり、美咲にとって、ドゥルキスのメンバー5人の中で1番タイプの男性となるのだろう。面白くはないけれど。



「ほえーー。イケメンですね」



素直な感想、心の声がダダ漏れだ。となりに俺がいるのを忘れているのか?




 ◆◆◆




「美咲、着いたよ」



後部座席でスヤスヤと寝息を立てている、困った彼女を起こす。このまま、お姫様抱っこで部屋に行くのは、さすがなか体力的にしんどい。


深夜1時過ぎとはいえ、マンションの住民に出くわすこともあるだろう。



「あれ、ここどこ?」


「どこって、俺の家だよ。さっき店出るときに、自分からついて来るって、そう言ったの覚えてないの?」



酔っているのと分かっていても、『帰りたくない』と、口を尖らせて言ったのが、俺はすごく嬉しかったのに。


正式に付き合ってまだ2ヶ月ほど、普通なら熱く燃えている頃なのに、美咲から会いたいなんて言われたことがない。



「降りれる?」



後部ドアを開けると、思ったよりしっかりした足取りで車から降りる。


駐車場からエレベーターまでも人の気配は無い。やましいことなんてないのに、いつも周囲を気にしないといけない生活は窮屈だ。


すっかり慣れてきたけれど、もしものときは、自分ではなく美咲が傷つくと思えば、より慎重になる。



「ねーねー。お風呂入りたい」


「え?」



部屋に入るなり美咲が甘えた口調で言った。


そういえば以前、飲み会の後でも徹夜明けでも、絶対に風呂に入らないと寝れない。そう言っていたことを思い出した。風呂に入らずにベッドに入れないとかなんとか。



「一緒に入る?」


「うん」



マジですか。


前に誘ったときは「絶対いや!」とお断りされたのに。



「じゃ、じゃあ、風呂沸かすから。適当に座ってて」



アイドルと言っても普通の成人男子です。


中高校生のように盛ってはいないけれど、可愛い彼女から一緒にお風呂に入ろうと言われて喜ばないわけがない。



風呂場から戻ると、美咲はソファにちょこんと座っていた。


先月、初めてここに来た時もそうだった。


緊張からか同じように両手を膝の上において、肩がちょっと上がっていた後ろ姿が可愛くて、思わずぎゅっと後ろから抱きしめたら、ものすごい悲鳴を上げられ苦笑した。



「喉乾いてない?何か飲むなら入れるよ」


「いらにゃい」



ねこですか?



美咲の隣に座ると、俺の体重の分だけ少しソファが沈む。


そのせいか、美咲が俺の肩へともたれかかって来た。


これはもう、そういうこととでいいでしょう。


顎を引き寄せてそのまま唇を近づける。美咲が目を閉じてそのときを待つのが分かった。



「俺のこと好き?」


「うん」


「本当に?」


「うん、なんで聞くの?」



なかなか触れない唇に、美咲が目を開けた。



「なんでだと思う?」


「わかんないよ、ね」



吐息と共に出た最後の「ね」の後に、キスをせがむように口を少し尖らせて見せた。



「キスしてほしい?」


「うん」



やっぱり飲み過ぎだな。目がとろんとしている。酒が無くても、いつもこうやって、素直にしていればいいのに。



唇に軽く触れて、また離す。



「他の男にそんな顔、見せたら、もうキスしないよ」


「うん、いいから、ね」



もっと、もっと。もっとして?


そうねだられたら、こっちの理性が持たない。



なんだかんだ、アラタとケイタに感謝だろうか。仮に2人で飲んでも、ここまで酔うまでは至らないはずだ。



「コウキ……」



呼ぶ声も、いつもより甘く響く。



美咲の頬を両手で包み込む。


そのまま軽いキスで済むわけもなくて、「もっと」というリクエストにお応えするべく、舌を絡ませる。美咲の手が俺の背中に回る。服を通していても伝わる体温。



「は……、ん、んん」



たまらなく愛しい恋人が漏らす吐息と、甘い雫。



春らしい花柄のロングスカートを、白いももが見えるまでたくし上げる。


何度か右のももを撫でると、その度に美咲の背中がビクンと波を打つ。まだ早いと分かってはいるけど、つい手を先に進めてしまう。


一瞬だけ俺の親指が美咲の敏感なところに触れる。



「……っ!」



唇を離し俺の胸に顔を埋める。



「ここは嫌?」



そんなわけないと分かっていながら、つい聞いてしまう。


男はみんな、少なからず卑猥な言葉を、その口から聞きたい、言わせたいという性分があると思う。



回答がないので、手をももから膝まで下げる。



「だめ、や、嫌じゃない」


「そう、どこがいい?ここ?それともこっち?」



俺は服の上から美咲の胸の先を爪でひっかいた。右より左が敏感なのは、最初に抱いたときに気づいている。


他にも、鎖骨を舌先で這わせると高い声で喘ぐんだよね。



「あ、は……ッ」



こっちは酒を飲んでいないから、余裕でセーブできると思っていたけれど、可愛い声に、俺も昂ぶりが止まらない。



シフォンのブラウスの裾を上げると、美咲は大人しくバンザイをして、服を脱がされてた。


小ぶりだけど形の良い胸を包むブラジャーのホックを外す。そのまま、ピンクの蕾に誘われるように口に含む。



「あぅッ!」



そして、スカートのファスナーを下げると、



ピロリン、ピロロン♪



この場にそぐわない、軽快なメロディが響く。風呂が沸いたらしい。



「ねぇ、美咲、続きは風呂でしようか?」



深夜2時。


明日は2人とも休みだから、またまだ時間はある。俺はその喜びを噛み締めている。




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