あおいちゃん以外の人と話したからバチが当たったのかも
私は、熟睡していたらしく、起きると外はオレンジ色に染まっていてもう夕方だった。
教室で自己紹介という流れになって、体調を悪くして一人の女子生徒……名前は井上さん。その人に保健室まで連れられて来た。
ベッドに横になったら眠くなり、そのまま寝てしまったんだっけ。そういえば、昨日は新しい環境になるからと緊張や不安からあまり寝てなかったことを思い出す。
お昼を食べていなかったのもあり、お腹が鳴る。
お腹空いたと思いながらも上半身を起こした。
ベッドから下りようとしたら棚に給食がある事を気付いた。綺麗にラップしてある。
給食を見てると声をかけられた。
「起きたの? 具合は大丈夫?」
寝る前はカーテンは仕切っていなかったのにいつの間にか仕切ってあるカーテンを空け、白衣を着た先生が私を心配そうに顔を覗き込んだ。
私は頷く。
「なら帰れそうかな? あっ、休み時間になる度に友達が様子見してきたわよ」
「友達……」
「また来るんじゃないかしら? 先生は職員室に用があるから行くけど、一人で大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「それなら良いけど……。その給食、起きた時にお腹空いてるだろうからってラップかけててくれたのよ。貴女の友達、良い子ね」
そう言って、先生は保健室を出た。
友達と聞いて一人の男子生徒を思い浮かべる。
あおいちゃん……心配して来てくれたのかな。
内心嬉しくしていると、先生ともう一人誰かの話し声が廊下から聞こえた。
先生とあおいちゃんの声だ。また……様子見に来てくれたんだ。
話し声は止み、保健室の扉は開く。
「心春ちゃん!!!?」
「あおいちゃん、あのね……しんぱ……」
心配かけてごめんなさいと言おうとしたが、あおいちゃんは私と目が合うと肩を震わせて駆け寄り、そのまま抱きつかれる。
勢いよすぎて、あおいちゃんの体重を支えることが出来ずに後ろに倒れる。幸いなことにまだベッドにいたから痛みは感じない。
「良かった。本当に……」
あまりにも大袈裟なリアクションでクスッと笑ってしまったら、あおいちゃんは離れる。
ムスッと頬を膨らまして「何?」って拗ねるものだから更におかしくて声を出して笑ってしまった。
「も、もう。これから死ぬ訳じゃないんだから、大袈裟よぉ」
笑いすぎて涙が出たので指で掬うと、あおいちゃんは私の両頬を両手で包む。
グイッと上に持ち上げ、顔を近付ける。
「……許さないからね。眠る前に、女子生徒と仲良く話してたでしょ。酷いよね……傷付くなぁ。どうして約束破るの? ーーそれとも、僕以外の友達が欲しくなった?」
「あおいちゃん、何でそれ」
「答えてよ。ああ、答えなくてもいいか。見せれば早いもんね」
顔を近付けられたのに、目が前髪で隠れてて顔全体が見えないので感情が伝わりにくい。
けど、怒ってることは、分かる。
あおいちゃんは私の両頬から両手を放し、左腕を掴んだ。
強引に引っ張られて、「痛い!! 痛いよ!!!」と苦痛を叫んでもあおいちゃんは無視して歩く。
私も腕を引っ張られながらも歩く。
一体、どこに連れていかれるのかと不安になっていると、踊り場であおいちゃんは立ち止まる。
あおいちゃんの背後にいた私は急には止まれなくて、思いっきりあおいちゃんの背中にぶつかってしまった。
「ごめんなさ……」
鼻を抑えてあおいちゃんを見ると、下駄箱で話してる女子生徒の三人の方へ視線を向けていたので私も視線を向ける。
一人は井上さんで後の二人は見覚えはある。多分、同じクラスの誰か……名前は知らない。
「あの子、ちょっとうざいよね」
「普通、自己紹介で倒れるかな。気を引きたい為の演技だったりして」
「もう、そういうこと言わないの」
「美月もそう思うでしょ!? 仮病使うなら学校来るなし」
「まぁ、仮病は良くないけどね」
「でしょ」
三人は、私の話をしながら靴を履き替えてげこうしていく。
私が聞いてるのに気付いていないのだろう。
あんなにも堂々と……しかも、倒れたのは演技で仮病だと……。
ああ……そっか、そうだよね。あおいちゃん以外の人と話したからバチが当たったのかもしれない。
「ごめんね。傷付いたよね。でも分かってほしい……きみの味方は僕だけだ。他の人はあんなにも簡単にきみを裏切るんだよ。だから、僕以外の人間は信じないで」
私はゆっくりと頷く。
一雫の涙が頬を伝って流れる。この涙はなんなのだろう……。
いや、考えるのはよそう。
だって私には、あおいちゃんがいるんだから。




