趣味が合うはじめての友達
私、佐藤 心春は人と話すのが苦手で友達がなかなか出来なかった。
というのも家庭環境にも原因があると思う。
父と母は私が産まれて直ぐに離婚した。
その理由は、母の浮気だそうだ。お酒に酔った父が教えてくれた。
離婚すれば子供の親権争いになるのだが、母が真っ先に辞退したそうだ。
浮気相手が子供嫌いらしく、親権は父に譲ったらしい。つまり、私は母に捨てられたのだ。
慰謝料と養育費は貰ったそうだが、そのお金は父がお酒やタバコに使ってしまい、ほとんど残ってないのでボロアパートに二人暮ししている。
けれど、働いてはいて朝から夜遅くまで仕事なので、私は実質一人だった。
救いなのは、父がお酒を呑んでも凶変しないところだろう。呑んだら泣き上戸になる。
余程、母に浮気されたのがショックだったんだろう。お酒を呑むと、毎回母の愚痴を聞かされる。
子供に愚痴るなという話なんだろうけど、父は心に余裕が無いのだろうと子供ながらにそう思った。
朝や夜のご飯は父が毎日作ってくれている。
出来た料理を乗せたお皿にラップをして冷蔵庫に入っている。
私はレンジで温めて一人で食べる。父は仕事なのでいない日が多い。
父の事情も子供ながらに理解しているので、心配させないようにと必死に平気なフリをしている。
でも本当は、遊びに連れて行ってもらいたかった。一緒にご飯を食べてほしかった。
そんな孤独さが積もりに積もって、父の前で盛大に泣いてしまったことがある。
父は動揺していたが、私の頭を不器用に撫で、「心春はしっかりしてるから忘れてたが、まだ幼いんだもんな。寂しいよな。不甲斐ない父でごめんな」と悲しそうに謝ってきた。
それからはなるべく、時間を作ってくれるようになってくれた。
困らせたい訳ではなかったけど、素直に嬉しかった。
でもまだ、タバコとお酒は止められず、毎晩帰ってきてから呑んでるけども。
母の浮気でトラウマになってるのか、他人との繋がりを父は嫌っていたので、父以外の人とはあまり話す機会が無かった。
なので人と話そうとしても上手く言葉が出てこなかったり、態度が冷たかったり、ちぐはぐな事を言ってしまったりと、それらの積み重ねで友達が出来なかった。
けれど、そんな私にも小五の夏に転校してきた《《女の子》》と仲良くなって友達になった。
その子の名前は佐々木 あおい。
変わった子で常に前髪を長くして顔を見られないようにしているし、先生に指名されれば必ず「分かりません」とオドオドしながらも応える。
休み時間はずっと一人で友達を作ろうとしない。寧ろ、話しかけても不敵な笑みを浮かべるだけなので気味悪がって近付く子はいなかった。
それなのに何故、私が友達になったのかというときっかけは些細な事だった。
そう、私は見てしまったのだ。あの子が持っている下敷きがあの有名なアニメのだと。
ついつい興奮して勢いよく聞いてしまった。私はアニメが大好きだったのもあり、共通の話題を見つけられて嬉しかった。
あおいちゃんは私を嬉しそうな顔で見ると微笑んで話しかけてくれた。
目を前髪で隠していて表情はよく分からないが、嬉しいのだと直感で思った。
それからは、仲良く遊んだりもしていた。
私は一生友達なんて出来ないものだと思っていたのに、友達が出来たという喜びで気持ちがいっぱいになった。
それと同時に私なんかと友達になってくれてありがとう……という感謝の気持ちであおいちゃんと話してた。
友達が出来たからと言って、すぐに話し方がうまくなることはなかったけど、あおいちゃんは聞き上手のようで私の話を最後まで頷きながらも聞いてくれていた。
そして、小六の夏頃にあおいちゃんが顔を青ざめて言ったのだ。
「心春ちゃん、さっき男子達がね……心春ちゃんの事を万引き犯だって噂してたよ」
「え!? ど……、え??」
衝撃的な言葉に私は上手く言葉が出てこなくて口ごもってしまった。




