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怒りのドラゴン

 





 ぴしぴしとその長い尾を打つたびに小さながれきの破片が飛んでくるけど、目の前にフィールが纏ってくれた闇が、そのがれきを包む。

そうして、すぐに小さな砂粒に変わるので私に少しのダメージはない。


 でも流石に、少し離れてはいるが大きなドラゴン姿のフィールには少し畏怖を感じる。


 金の瞳をぎらつかせて、何に怒っていたのだろうか。

屋敷に来るまでは憎まれ口をたたきつつも、こんな暴れるようなことをするとは想像できなかったのに。


 どう話しかけようか、と少し足を止めて思案する。


 何に怒っているかわからないが、ここまで近寄っても怒りを収めるような様子が欠片もない事から、かなり腹を立てているのだろう。

この少しの間の時間にも、いらいらとしっぽを打ち付けているし。ぴしぴしがれきがそこらに飛んでいく。


 その間に進んでいたフィールがドラゴンに到達したときに、背後から私の名前を呼ぶ声が急にかかった。


 振り向くとひどく汚れてしまった状態の叔父上だ。


 ところどころ立派だった服もほつれてしまい、この国の筆頭たる貴族としては信じられないほどに汚れ、草臥れている。


 でも、そうして大切そうに両手で何かを持っていた。黒い箱?手の隙間からなんだか見覚えのあるような?とても古い意匠の黒い箱だ。


 そして気になるのはその叔父上の表情。叔父上の瞳はなぜだかキラキラを楽しそうだ。なんで?あなたの家ががれきで平地になってしまっているんですけども。


「叔父上、ここは危ないですよ。退避を」


「ラインハルトも、だろう?早く逃げなさい」


「ですが、この」


「ああ、神が降臨されたね。立派な輝くほどのドラゴンだ。伝承通りだ、、、ああ素晴らしい」


 私の言葉をかぶせるように勢いつけて話をする叔父上。

そんな叔父上はキラキラした瞳でドラゴンを見つめている。さながら長年会えなかった恋人のように。両ほほをかすかにバラ色に染めて、黒い箱を持っていなければその両手バラの花束でも持っていそうだ。


「ラインハルト、あちらが闇の精霊様だよね?」


「そうですけど、、、」


「ああ、やはり素晴らしい。あの鋭い金の瞳に素晴らし体躯、長い黒い尾も最高に今まで見たことのないぐらい艶めいて、、、ああ素晴らしい。やっと見ることができた。」


 ドラゴンの賛美が始まった。いや、闇の精霊ともわかっているのだろうか?


 こんな状態でも、通常運転な叔父上だ。さっきまでがれきやら砂埃やらひどいことになっていただろうに。いつからドラゴンを見ていたのだろうか。私と別れた間に何があったのか。


 でも、事の始まりから見ていそう。だって服装本当にひどいし、よく見ると擦り傷?打撲?で服が破れて血が滲んでいる。

ドラゴンが暴れ始めて、一度は避難したけどまた戻ってきた?わからない。


 {{ライン、ライン。わかったよぉっ、て}}


 いつの間にか大フィールと話終わったのかフィールがこちらにポンポン近づいてくるが、叔父上を見つけて露骨によけて私の所に戻ってくる。


「相変わらす、嫌いなんだね」


「まあ、こういう状態なのにいつも通りなのは関心通り越して気持ち悪いですけど」


 叔父上に聞こえてないことをいいことにお化けずは口々に悪口を言い、ニコニコしている。

 うん。まあいいけど。


 {{ライン、ライン、あのね、箱を}}


 そう言いかけたときに背後のドラゴンがダンっとひときわ大きくしっぽを打ち鳴らした。


 再度小さながれきが私の方に飛んでくるがフィールの闇が相変わらず守ってくれる。


 {{{ねえ、お前。それと知り合い?お前も仲間?}}}


「え、仲間って?」


 私の近くにいるには、いつものメンバーしかいないが。もちろん、それらは大切な友達だ。

あ、叔父上?


 思わず、叔父上の方に目をやると叔父上はまだキラキラした瞳でドラゴンを見ている。


 {{オジウエの事だよ。悪いことをしたんだ!}}と手のひらのフィール。


「悪いことって?」


 {{も~~フォールも私も怒るよ!!}}


 {{{なに?違うのぉ?仲間だったらお前も残念だけど、}}}


 そう、ドラゴンがいい、今度は大きくその前足を振り上げる。きっとその腕で、こちらを薙ぎ払うつもりだろう。そんなことをされると多分命はない。


 思わず、ぎゅっとフィールを抱きしめると、、、、、。



 ビヒュィッ

 背後から何かが素早く通る音と強い熱。


 {{ぐ。またお前}}


 呻くようにしゃべるドラゴンの声がする。

恐る恐る目を開けそのドラゴンを見ると、その大きな巨体に細い炎の縄が幾重にも重なりドラゴンを拘束していた。

炎そのもののようで、少し離れたここまでじりじりとした熱と風が伝わってくる。


 しかし、その拘束はすぐに解けることとなった。


 ふわりと赤い炎の束はドラゴンの拘束を解かれた後、叔父上の方に行って何事のなかったようにふわりと空気に溶けた。


「叔父上?」


「ああ、少しだけね。一応炎の精霊の継承者だからねえ、でも。」


 そう言い、今度は後ろを見る叔父上。


 つられてみると、そこにはいつのまにか来た軍隊がずらりと並んでいる。

いつの間に来たのか、と思ったが端の方から順にそろっているようだったから、この後ももっと増えていきそうだ。


 {{{なんだ。人間どもが}}


 そうドラゴンは言い再度大きく立ち上がり大きく息を吸ったかと思うと、のどと腹ををはち切れんばかりに膨らませた。


 だめだ、ブレスだ!


 ドラゴンのブレスは小さな山ならば、一撃で溶かしてしまうほどの威力があるという。


 本体は闇の精霊とはいえ、軍隊たちは直撃するとただでは済まないだろう。

そんなものをこのままここで吐くつもりか。どうして、フィール。



ここまで読んでくださりありがとうございます。

多忙につき次回も29日更新予定です。


暑い日が続きます。皆様お体にお気を付けくださいね。ありがとうございました!

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