大毛玉、もといフィールとお話。
目を開けると、薄暗い青紫に染まった天井。特にどこも痛いところはないが、少し頭がぼーっとする。
ガイナ。
ああ、そうか。フィールが見せてくれたのだろう記憶。
前も同じようなものを見た様な気がする。
フィールの大好きなガイナは私の祖先によって殺されたようだ。
くわしくは分からないけど、あの炎の精霊はやはり母上の方の精霊だろう。
そしてなんとなく、ガイナのお嫁さんと言われた人もなんとなく父上に似ている気がした。
髪の色とか、目の色や背格好。気のせいかもしれないけど。
今が何代目かわからないけど、高位貴族にはよくあること。高位貴族で婚姻を繰り返しているから、多分初めはガイナと炎の精霊の血族でそして時代背景と時の流れで今に至るのだろう。
ガイナが初代国王だから、やはりその血は王族の血筋に残り時々私のような闇の属性が生まれて、ここに生贄として出されて。
フィールに見せてもらった限りでわからないけども、ドラゴンになった時に神様と言われていたので、ドラゴンを祭るような者たちに殺されたような気がする。ガイナは。
それとも生贄にしたのか?細かいことはわからないけど。
多分、今までもガイナの血が濃い子供はここで殺されているのだろう、、、。ずっと。
上半身を起こすと、いつの間にか目には涙がたまっていたのか、頬を伝い水が流れた。
濡れたほほをぬぐう。
ガイナ、ガイナとフィールはずっと言っていた。
悲痛な叫びと言っていいほどに。
ああ、ガイナとフィールを合わせてあげたかったなあ。ガイナに会いたかったな。
フィールが見せてくれたあの男性は、強靭な筋肉を持ち朗らかな笑顔でいた。いつも楽しそうな、そういえば豪快な食べっぷりをしていたな。その食べたものがあの強靭な筋肉になり、依頼をこなしていったのだろうか。
自分の両腕を抱きしめてみるけど、なんだか、細く頼りない気がした。
あのように筋肉をつけるにはどうしたらいいのだろうか。
{{無理だよ。むぅり}}
どこからともなくフィールの声がしたので、びっくりして肩が跳ねる。
「え、っごほ。」
と声を出すと、少し咳が出た。なんだか喉が突っ張るな。のど乾いたかもしれない。
一度栗の中をぺろりとベロを動かしてみる。ン、大丈夫かな。最後に水飲んだのはいつだっけ。
「さっきの声は、どこ?フィール?」
きょろりとあたりを見回してみても薄暗い洞窟のような、寝る前と同じ空間だ。
ただ、とても静かで便りのない青紫の光がときおり揺れるのみ。
{{、、おまえは鈍いねえ}}
そうつぶやいたと思うと目の前が少し二重になって、でも瞬きをする間に黒い影がでてきて。気が付くと目の前にいた黒い大きな毛玉。
今までどこに行っていたのか。もしかすると私の中にいたのかな?前にフィールもしていたことがあると聞いたし。うーーん。でも、まあ嫌な気分ではないからいいか。
目の前にある黒い大きな毛玉。どこが顔か体かもわからない大きな毛玉。でも何だか不機嫌?
「ああ、元ドラゴンのフィール。」
{{は?なにそれ。やっぱりお前は馬鹿なんだ!普通にフィールなの!}}
「フィールと言われても、、、フィールはフィールだし」
やはり今まで一緒にいたのがフィールだから、この元ドラゴンをフィールと呼ぶには違和感があるんだが。でもそれも失礼なんだろうなあ。うーーん。
そういえば、みんなは?またきょろりと辺りを見回すも誰もいない。目の前の毛玉だけ。
「そういえば、みんなはどこに行ったんだ?」
目の前の大フィールに聞いてみるが、やはり何だか不機嫌そう。
、、、、、、、、。
「ねえ、みんなは?」
、、、、、、、、。反応なく、動かない大きな毛玉。でもだんだんこちらから離れて行ってるような気がする。じりじりと。
やはり何だか機嫌が悪いようだ。うーん、どうしよう。このことも仲良くしたいし。フィールだし。仕方がないかな。
「フィール、ごめんね。教えてほしいんだけど、、、」
思い切って名前をよぶと、離れるのはやめてくれたようだ。微妙な差ではあるけど少しほっとする。
「フィール?」
{{、、、、今お前の食料とか探しに行ってるよ。そろそろ水でも飲んで待ってたらぁ}}
「水って、あれば飲みたいけど、、、」
当たり前だが水なんてここに持ってきてはない。やはり喉は乾き水が飲みたいけど無いものは仕方がないような。
島でさまよっていた時に飲んだ水のことを思い出す。苦い思い出だ。
あのようなことにはなりたくないので、安全な水を飲みたいものだが。まあ、ここには川なんてないだろうけど。
{{不便だね。お前}}
「まあ、君たちに比べたら不便だろうねえ」
{{あと弱いし}}
「うーん、弱いかな」
{{弱いよぉ。ガイナは強いけど}}
「あは。そうだね。ガイナは強かったね」
{{、、、見れたでしょ?何かわかった?}}
「ああ、やっぱり君が見せてくれたんだね」
{{フィール!}}
「うん、フィールが見せてくれた。ありがとうね」
{{うん}}
ぼよんっと少しはねてこちらに近づくフィール。手が届く距離になった。
なんだか、機嫌はなおったのかな?
「うん。ごめんね」
{{なんでお前が謝るの、、、}}
「でも、私のご先祖だと思う」
{{、、、、、、。別にそれはわかるし}}
「そうなの?」
{{お前は馬鹿だけどフィールはいい子なのよ。わかるのよぉ}}
、、、、なんだか、この大毛玉にいつも馬鹿バカと言われている気がする。さすがに少し、ムッとするんだが。
このままずっと馬鹿にされるのもしゃくだな。