体調不良 熱
{{ライン、ライン。朝だよ~}}
起きて起きて、とポンポン私の上で跳ねるフィール。
何だか頭が痛い気がする。体重い。のど痛いなあ。
{{ライン?らーいいーん?}}
もぞもぞと動くだけで、ベッドよりはい出ない私にしびれを切らしたのか、ポンポンするのをやめて寝具に入てきたフィール。
そうして何を思ったか、ぺったり私の顔に引っ付いてきた。
体温というのもをフィールに感じたことはないけど、今日はなんだか冷たい気がする。
{{ん~?ライン調子悪い?}}
「わかんない。のど乾いた気がする」
{{ん~?テーブルに昨日買った瓶があるよ。飲めばいいと思うよ}}
「うん。そうだね」
でも、なんだか動く気も起らず、そのまま寝具に包まれる。
いつもより寒い気もする。なんでだろうか。そうしてそのままウトウトしようとして。
{{ラーイーン}}
フィールに起こされた。今日は眠いんだけどなあ。頭痛いし。
ずきずきとおでこが痛い。中の方のも重い感じ。調子崩した感じがする。
昨日ヴァンとのやり取りを思いだす。熱でも出たのだろうか?疲れだろうか。
疲れたなあ。
だって城から出てずっと頑張っていたように思う。
命の危機も城から出て何回もあったし、一昨日もそう。
ヒュージアントのたくさん転がった丘と肉と血だけが残った場所。
依頼者不在での依頼達成ってそういうことなんだろうなあ。
もう少し早かったら違ってたんだろう。
私が生きたいと思ったように、依頼者も生きたかった今日なんだろうなあ。
私も、ああなるのかな。
それとも、自国からの派遣された兵士が私を殺しに来るのか。
私を邪魔だと、誰が、思っているのかな。
生きることが邪魔だと。
考えないようにしているのに、なんだか、ぐるぐるするなあ。
ああ、出口にない迷路をさまようのは嫌なのに。
遠くで大きな音がしたような気がする。
そうしてしばらくして、ヴァンの声がした。
「ラインハルト?何かあった?ごはんは?」
コンコンと少し遠慮するような小さな音でドアをノックする。
「ラインハルト?入るぞ?」
ぎい、っとドアが開く音。
ああ、ヴァンが来たようだ、起きないと。と思い、上半身を起こそうとして、クラりとめまいがした。これ以上は起きれない。
「ん、ラインハルト調子悪い?大丈夫か?」
そう言い、昨日と同じようにおでこに手を当てるヴァン。でもすぐ手を引っ込める。ああ、冷たくて気持ちよかったのに。
「お前熱あるんじゃないか?熱いぞ」
そう言い、私の顔を覗き込む。そうか、私は熱があるのか、いつぶりだろうか。
「うん、調子悪いな、って思ってて。うん」
「まあ、結構な熱があるし、今日は休んどけよ?今日は何かしなくてはいけないこともないだろう?うん、ちょっと待ってな」
そう言い、ヴァンは部屋を出ていく。
うん、今日は休もう、そのままぽすりと枕に頭を預ける。
あれほど寒かった感じが今はなく、少し熱いぐらい。でも、頭痛はまだあり、ずきずきする。喉もいたい。
ふうふう、と自分の呼吸が熱い。
そうしていると、コンコンとドアをノックしてすぐヴァンが入ってきた。
そうして、カチャりと何かをテーブルに置きこちらに来る。
「ラインハルトー。一応朝食な、パンとスープ。ここ置いとくから食べれるなら食べな、で、誰か頼れる人とかいる?」
「いない。」
「そうだよなあ、うん。まあ一日寝とけ?水は飲むようにな、置いとくからな。また来る」
そう言って退室するヴァン。
「頼る人かあ」
なんか、認識してしまうな。一人ということを。
頭痛いし、水飲んで寝よう。前に熱が出たときはどうだったか。
ああ、でもあまり変わらないかも。小さい時に一人で寝て過ごしたような気がする。
お母様はお兄様に病気を移さないように、と言い、お母様もあまり近くにいてくれなかったような。なんか、さみしくて泣いてた気がする。
うん、調子悪い時はやはり何も考えないようにするのが一番だな。
相変わらず、何も食べたくないので、もう少し寝て水を取ろう。
頭痛いなあ。痛すぎて涙がでる。
次に起きると、部屋が真っ暗だった。
窓は少し開けていたと思うけど。と起きてついって見ると、外自体が真っ暗になっていた。
もう夜のようだ。
どれだけ寝たのか、私は。
熱は下がったのか、朝より頭も痛くなく、でもすごく喉が渇いた。体もべたべたする。
テーブルの水の入った瓶を一気に飲み干すと少し、落ち着いた。
口の端から少し水がこぼれたが。
そうして、まだ朝からそのままであろうヴァンが持ってきてくれた朝食はなくなり、パンが3つほどと丸く赤い粒の果物が置いてあった。
多分、ヴァンが来てくれて変えてくれたのだろうか?
果物を一つ口にする。甘酸っぱくておいしかった。少しすーすーする。なんだろう。初めて食べた様な。
残りも食べて、パンを一つ食べる。そうして少し元気出た気がする。まだ結構体はだるいけど、朝よりは全然まし。
そういえば、フィールや、ピコ、クーはどこに行ったんだろう。
何だか、静かすぎてさみしい。外に行ったきりかな?
ふいに窓の方に行き外を見ると、宿の前の人通りはほとんどなく、とても静か。波の音と時折山の方の獣の声がする。
今は深夜ぐらいだろうか、大きく開けた窓からいい風が吹き、汗ばんだ体を冷やしてくれる。
暫くそうしていたけど、いつもは騒がしい3人が居なくてさみしい。
時々というか煩いなーと良く思っていたのにな。
どこ行ったんだろうか。
「ピコー。クー。フィールーどこ行ったの」
誰かに呼びかけるわけでなく、なんとなくぽつりと声に出す。正直自分以外に認識されてない3人だから、本当は夢で自分だけの友達を作ってしまったのか。
そんな考えが浮かび不安がよぎる。
そんなはずはないのに。
ここに私がいるというだけで、3人がいることの証明になると思うのに。
ぼうっと外を眺めているうちにだんだん海のあたりから明るくなってきた。太陽が昇り始めたのか。
昨日の熱はもう下がり、ただだるさだけが残っているので、動くことは動けるけど。
ちらりとテーブルの上のパンを見る。
ヴァンが昨日持ってきてくれたのだろう。感謝してお金も払わないと。でも、3人を探したい。今無性におしゃべりがしたいな。
どこに行ったのだろう。
ここまで読んでくださりありがとうございます。




