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島の森で見つけたものとお化けたち 




 それにしても、歩きにくいし、小さな羽虫が多い。


 木のつるも時々上の方からぶら下がっており、体や腕に絡まり思うように進めない。油断すると首に引っかかることもあり本当に危険な森だった。

足場も悪く奥に行けば行くほどコケが蒸しており、滑りやすい。何回かはこけかけた。しっかりしたブーツを履いてはいるが、こんな場所を歩くことを想定などしていないので、本当になかなか進めない。


 まあ、こんな道?歩くのも初めてだが。


 しばらくして、すこし先の岩と木々の崖か?のようなところがあり、その奥からから水の音が聞こえるような。


 もうのどの渇きは限界で、思わず走って水の音のなるほうに行くと、崖のような、と思ったところはそこから沢のようになっていた。


 沢の下には川が流れており、そこから水の音が聞こえていたようだ。


 その川の水の周りは、大きな丸い石や小さな砂利が引き詰められており、ここも歩きにくそうだがまだ今までよりましに見えた。


 ゆっくりと川のほうに降りようとして。


 ずるッ

滑ってこけた。そう、川のほうに。


 そうして慌てて掴んだ植物のつるに救われて最後まで落ちることはなかったが、斜面の土に大きくけりを入れてしまい、穴が開く。


 は?


 私はそんなに力あるわけではないので、穴が開いてびっくりするが、まず下の川のほうに安全に降りることに専念する。


 ジャリっと川近くの地面に足が付き、改めて開けた大穴を見るとここより自分の頭の上1mぐらいのところに穴が開いていた。もともと動物でも住んでいたのか?


 まあそれよりも水だ。


 やっと水が飲める。


 小走りで川のほうに向かい、そうして顔から水を浴びるようにのんだ。

とても冷たい水だったが命の水のように思えて隅々まで元気が湧いてくるようだった、そうしてやっと生き返った気がした。


 のどの渇きが収まると、今度は手のひらがひりひりすることに気が付いた。

先ほどこちらに落ちたときにつかんだ植物のつるのせいで、手のひらが傷つき、擦り向けて血が滲んでいるようだ。


「痛い、な。」


 少し緊張が解けたせいか、ずきずきととても痛む。痛くて、なんとなく夢うつつのような気がしたが立派な現実だと感じられた。


 そう、一人でこんな場所にいる自分に。


 「こんな場所で、一人でどうしろとー」

そう独り言ごちたとたんに横でお化けがしゃべる。


「一人じゃないってば、なんなの。もー。ねーくーちゃん」

挨拶のように派手な鳥はギャアと鳴いた。


 そのお化けたちを横目で見ながら私は大きくため息をつく。


 「一人 だよ、君たちお化けでしょ?」


 そういったとたんにまたぎゃあぎゃあと騒ぎ出す。


 「お化けじゃないよ!!差別だーひどい!」

ギャアギャア。


 「お化けだろうが。人間ではないでしょう?」


 「人間だったんだよ!私はひどい暴言を受けた。悲しみがっ涙がー今は出ないけど!」

と泣きまねをする少女。と派手な鳥。


 立派なお化けだと思うけどな、足ないし、浮いているし。まあ、かわいい顔しているけど。


 派手な鳥は鳥で頭は骸骨で舌もなさそうだけどギャアギャアしゃべるし、そんなのおかしいだろ。魔物なのか?


 そうして騒いでるお化けたちを横目で見つつまた水を飲むと


 「やめた方がいいよ。」と注意するお化けの少女。


 「なんでだよ。君たちと違って水のまないと私は死ぬの!」

と返すと、微妙な顔しつつやめた方がいいのにねーとお化け同士仲良く顔を合わせていた。


 そんなお化けたちを尻目に今度はこれからどうしようか、と思案する。


 まず、水の確保がしたいが残念ながら保存できるような瓶など持ってはいない。

自分のぽっけにも手を入れるが当たり前だが何もない。


 どうするか。


 お化けたちに振り向き容れ物はないか?と問うと。


 「お化けじゃないもの。名前あるもの、ぷーん」

と回答を拒否られる。なんと生意気なっイラっとしつ言い返す。


 「じゃあなんて読んだらいいんだ?名前あるの?」


 「え、こっちの子はクーだよ。」と派手な鳥を指す。


 「で、君は?」


 「、、、、、、。ない。けど。」


 「名前?」


 「うん、わからないね。覚えていないのかな?どうだと思う?」


 と何でもないように言うが、私に聞かれてもわかるものでもないだろうに。

そもそも知り合いでもないはず。


 「え、私たち知り合い?」


 「そんなことないじゃん、昨日初めましてだよー。忘れたの?」

こちらを少し馬鹿にしたようにけらけら笑う。


 なんなんだこいつ。イラっとしつつ鳥のほうを見るとギャアと鳴く。鳥に期待してもダメだったな、お化けのくせに。


 「うん、考えてもわからないから、あなたつけて私の名前。というかあなたはだぁれ?」


 「私?はラインハルトだ。グラスティカ王国の第二王子でぞくー」


 「あ、いいからいいから。ラインハルト、ライン君ねわかったよー、で私は?」


 自己紹介を求められたからちゃんと自己紹介をしていたのに、言葉を遮られてビキビキしつつ、わかったことは、私はこのお化けの名前を付けないとだめらしい。


 「あーーー、」


 少し考えるがそんなこと、今まで考えたことはないのですぐには思いつかない。

もう何でもいいか。


 「ピコで。いいんじゃないか?」


 なんかピコピコよく動いてるし。ふらふらしているからこの言葉を拒否するならば、次はフラフにしようかと思う。


 適当に思いついた単語を提案してみると、何度か口に出して、いい笑顔でこちらをみた。


 「わかった、私ピコね。ありがと」


 かわいいじゃないか。うん。


 「で、なんだっけ?」


 お馬鹿だけど。


 なんでこんな短い間の会話を忘れるのか、とあきれながら水をいれるような入れ物を探していることを伝えると、わかったーと言ってピコとクーはどこかにふよふよ行ってしまった。


 そんな姿を見てフヨヨって名前でもよかったな、と思った。


 そうしているとパリパリになった自分の服や体が気になってくる。この森を歩き回ったため汗もかいており気持ちが悪い。何度か躓いた為か、足も泥だらけだ。


 もちろん風呂なんてものはないし、水浴びをした後に体の水をふき取るようなものもない。もちろん着替えだなんてものも。


 水を飲みとりあえずの生命の危機を脱したが、やらなくてはいけないことはたくさんある。


 そういえば、城の中の教育で、唯一今使えるのは武道訓練の先生の話だったかもしれない。


 もともと正規の騎士ではないので、世界を飛び回りいろいろな経験をしていたとのことで、訓練の合間に話を聞けていたから。


 そう、まず人間は水がなくては生きていけないとも言っていた。


 これは身を持って体験した。のどが渇くことは本当につらいことだった。


 あと、生水はそのまま飲んではいけないとも。でも、生水とは何だろうか?


 まあいい。


 そうして野宿の時はできるだけ火を焚くか、無理ならば高い木の上で休むこと、水と食べ物はできるだけ多めに、できれば乾きもので準備して、でも、荷物は軽く動きやすくまとめるように。


 ピンチの時は全力でできることをしろ、だったか。


 だが、こんなところに漂着したときのことは聞いたことがないが。


 どうすればいいのかわからず、そのままざぶざぶと川の中に入り体を洗う。


 今の季節は幸いなことにまだ、少し川の水が冷たくは感じるが我慢できるほどではない。


 それ以上に自分の体の気持ち悪さをどうにかしたくて、深くても膝程度の水深程度しかない川にどんどん入っていく。


 顔を洗い、全身をざぶざぶと洗う頃にはすっかり体は冷えてしまった。


 慌てて岸のほうに戻り、ブーツをひっくり返して水を排除した。




ここまで読んでくださりありがとうございます。

あと一話今日中に上げますので、そちらも読んでいただけると幸いです。

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