闇の精霊?
「これ、なんだろうね?すごく強い生き物じゃない、自然の何かっぽいけど」
言いながらツンツン。
「多分精霊か妖精の何かじゃないですかね?魔物ではないようですし、なんとなく。いやな感じはしませんので」
そこまで、一息にしゃべった後クーはこちらを向く。
「ライン、どうしますか?」
「え」
「これからです。ここに来た兵士は今わかりましたが、多分この毛玉が倒したように思います。あなたの体を使って。でも、この先昨日のようにまた人間があなたを襲うことはゼロではないでしょう。むしろ派遣した兵士が返ってこないと判断して、再度くる可能性が高い。」
「これからもラインは大変ってこと?」
「そう、もしかしたらまた襲われるかもしれないのですけど、どうしますかって話」
「そっかー」
うーん、と二人考える。
私のことなのにちゃんと考えてくれることが、なんかうれしい。
あと、クーが結構重要なことさらっといってたけど、毛玉が私の体を使ってたってどういうこと。結構怖いことじゃないか?
「クー、とりあえず、ありがとう。でも、この毛玉が私の体を使ってたってホント?」
「多分、ですが。そもそもよく考えなくても貴方人を殺せないでしょう。そして、闇の魔法は使えるでしょうが、あそこまでの魔法は人間は使えないはずです」
「そこで、その疑問はその毛玉がいるとすべて解決できそうじゃないですか? 高位精霊などは人に憑依などできるようですし。聞いた話ですけども」
すこしだけ納得できた。意識がない状態でも自分は殺せるほどの力も気概もない自覚があるから、余計に。
そして、少しだけ、ほっとする。人は死んでいるけど、殺すと決めたことは私じゃないことに。
「で、どうします?ここにとどまるか、どうするか」
「どうするかって。ここから出られなくてサバイバルしていたんだけど?今まで!」
「うーーん、多分ですが、この毛玉が協力してくれたら出れると思いますよ、制限付きで」
「はああああああああああ?」
「そうなの?」
「なんで、どういうこと?この毛玉がどんな事」
にじにじといつの間にか、膝まで登ってきた毛玉を振り落とそうと足を振ってみる、が、落ちない。なんなんだこいつ。
「先ほど、高位精霊かもって話だったじゃないですか。多分、ピコと力を合わせると、少なくとも夜ぐらいならば船を復活できるんじゃないかと」
「私の船?この前ラインが壊した?」
「その件はごめんなさい。でも、バキバキに壊れていたじゃないか」
少し、力を込めただけで、壊れた船にどう乗れと?
そもそも、誰も乗らなくても波間に溶けそうなボロボロ具合だったが。
「ピコとあの船は強くつながっているので、この毛玉が闇魔法で強化できれば夜ぐらいは乗れると思います」
夜は闇の時間ですからね。というクー。
そうなのか?でも、そうだな。ここにいても多分公の指示で来ていたようなので、再度兵士は送られてくるだろう。それならば。
「島を出ようか、国に帰り原因を排除できなければ、このままでは殺されるのを待つだけ、ってことだよね」
「そうですね。国の距離によればここ数日でくる可能性もありますので、早ければ早い方がいいと思います」
「わかった、協力してくれる?」
ピコとクーを見るとピコは笑顔で、クーはギャアと鳴いた。
「で、問題はこの毛玉か」
へばりつく毛玉を見る。相変わらず、私の膝にへばりついている。
「聞こえているか、毛玉?」
、、、、、。
「毛玉さん?」ツンツンつつくピコ。微妙に触れているのか。
{{毛玉じゃないもん。フィールだもん。}}
「聞こえているじゃないか。協力してほしいんだ。フィール」
{{なんで?ガイナじゃない人間にお願いされなきゃならないの?}}
うーーん。そういわれると、困るが、この島を脱出するにはこのフィールの協力が必要だ。
どうしようか、私にできることは。
「じゃあ、ガイナを探しましょう?フィール」
クーの提案にぽんっと膝から降りて砂に落ちた。
{{ガイナ知っているの??どこ!ガイナ}}
詰め寄るフィールに翼で制して言葉をつづけるクー。
「今は知りませんが、この世界にいるのでしょう?あなたの会いたいガイナは、少なくとも今この島にいないのですから、この島を出て一緒に探しましょう?どうでしょうか、ここにずっといるよりかいいと思いますよ?フィール」
「まあ、もしかするとガイナも、フィールのことどこかで探しているかもしれないし、ここ出た方がいいかもな」
こんなに会いたがっているんだ、合わせてもやりたい気持ちもある。
{{ガイナ!探しに行こう。わかったよ人間!お化けたち!}}
いい加減人間といわれるのも、なので、改めて自己紹介をする。
そして、船を見に行こうという話になった。もうすぐ夜明けになりそうだが、善は急げで、普通に考えて時間はないと考えた方が安心だからだ。
足場が悪いところを超えた場所にあるあの船に行くには少しだけ憂鬱だ。あの鋭い食べれる貝が見えないと思うので、こけると大変だ。
と気を付けていたのにコケました。
海の水が昼間来た時より満ちていて、もっと足場が悪く、海藻も落ちており滑った。
思わず両手をつき、その両手は鋭い貝で傷がついたようだ。結構本当に痛い。
「大丈夫?ライン、けがしちゃったの?わあ、痛そう」
こんな暗いのにわかるのか、ピコすごいな。
あああ、腕の方まで血が滴ってきた。結構ひどく切ったようだ。どうするかな。痛いな、ほんと。なんか数時間前までもっとひどい傷を負っていたが、この傷も結構いたい。
そして、指先とかを動かすとパカパカした感触があり、それも気持ち悪い。結構傷は深そうだ。
ぼたぼたと血が石に落ちる感触もする。
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