あの時の声の主は君?
気が付くといつもの、固い木の上だった。
ずいぶんと嫌な夢を見たもんだ。
救いが来たと思ったら、切りつけられて死にかけて、そして我が国の兵士を魔法で殺すだなんて、ひどい夢。悪夢だ。
自国民は財産だ、守るべきものだと幼いころから教育を受けているのに。
ふう、と一息つき、砂浜の方を見る。
空は闇に染まり、星々がきらめいていた。
不思議と夜中だろうに眠くはない。
起き上がると、少しめまいがする。おなかもすいていたし、のども乾く。
確か、リンゴを残していたことを思い出し食べようとするもない。あれ?
朝に食べようと思っていたのに。食べた?私が?朝に。
私以外食べたり動かすような人はいないのに。この無人島で。
、、、じゃあ、夢ではなかった?そんな、まさか。
と、夢で切られた肩を触ると、当たり前にあった服が切り刻まれていた。
そして、何か乾いたものが、パラパラ落ちる。これは乾燥した血か?
私が昨日切られたから、その血の。
ならば、そんな、夢じゃなかった?
また、気持ち悪くなる。
ぐっと来た熱いものを飲み込もうとして、体に力を入れてやり過ごす。
そうして、ふうと大きく深呼吸をする。
ふう、ふう、ふう、呼吸に意識する。落ち着こう。
そうしていると、夢で聞いたような声がする。
{{ガイナ?ガイナ?会いたかったよおお!!}}
そうしていつの間にかいた森の奥から黒い何かが、こちらの方にすごいスピードに向ってきて、私の胸のところに引っ付いた。
「うえっ!?なに?なに?」
咄嗟的にその黒いものを払い落とすと、目の前の砂地にぽとりと落ちた。
それは、黒い靄のような毛玉のようなもので、手足があるように見えない。羽もないしどう動くのか見当もつかないが、先ほどこちらに飛んできて、しゃべったような。
少し混乱して言うと、黒い毛玉はひどいよひどい!と泣き言をいう。
{{ガイナぁ、なんで?フィールのこと嫌いになったの?なんで、フィールと、、、}}
ふわりと毛玉は私の前まで浮いて、こちらに向かった?ような動きをして、ぴたりと止まった。
そしてそのまま、ふよふよと私の周りを観察するような動きで、私は訳が分からない。
先ほどの気持ち悪さも、何もかも吹っ飛んだ。
{{、、、、、誰。人間。お前何}}
唐突にぴたりと私の前に止まると、先ほどのテンションとは天地に差があるほど低い声が聞こえた。
多分、この声はこの毛玉からだろうけど。
黙っていると、だからさぁ?とどこかの荒くれのような口調になる。
{{お前誰なの?ガイナは?ガイナはどこに行ったの?}}
「お前こそなんだよ、ガイナって誰だよ。ここには私しかいないし」
{{はーーーーー?ガイナの感じがするの!なんでお前なの?わからないんだけど???ガイナ出してよ!!}}
荒い口調と共に黒い毛玉は砂浜にバウンドを何回もする。
地味に砂が私の方に飛んできてピンピン痛い。
「ちょっ、やめろよ、お前、痛いじゃないか!」
ぴょんぴょん跳ねる黒い毛玉を何とかしたくて、思わず掴んだ。その黒い毛玉はなんだかふわりとしていて、捕まえれなかった。湯気をつかんだような感触。
{{やあだ!フィールに触れるのはガイナだけだよ!ばあか人間!}}
ばかばかと言いつつバウンドする黒い毛玉。
なんなんだ、本当に、これって。
ガイナガイナと言っているが、誰なんだそれ、と思うがなんだか聞き覚えがあるような?ううん?
「ガイナ、ガイナ、か」
つぶやいてみても、思い出しそうで思い出せない。そうしていると、ふわるふわりとピコとクーがやってきた。
夜中なんだが、今。
「あ、ライン元気になった?よかったぁ急に倒れるんだもの、びっくりしたよ!」
「そうですよ~私が運びました、私が、あなたを、ここまで!労ってください、まあ、多少虫に食べられていると思いますが、森の中よりましでしょう?」
虫、そういやなんか、体中かゆいし、背中とか腕とか下の方に擦り傷あるな。引きずったあとか、これ。
気が付くとなんだか無性にかゆくなってきた。でも今は夜中だし、川の方で洗うこともできないな。さすがに夜の山はこわいので。
「まあ、非力な私なので、そんな風になりましたが仕方ないです。ですよね?」
傷を確かめていたら、申し訳ないとおもうのかすこしこちらをうかがうようなクー。
「だいじょうぶだよ。ありがとうな」
「まあ、あんなところにいるよりかましでしょう?体調も良くなったら良かった。ところで」
あんなところ、という言葉でまた我が兵士を殺めてしまったことを思い出して、沈む。
「その黒い毛玉は何ですか?」
毛玉、、、。いつの間にか、足元にぴたりと引っ付き地味に上ってきている。なに?何したいの、これ。
ピコとクーが来て一瞬忘れていたけど。
「わからないんだよね、これ。ガイナってひと?をずっと探している?んだけど」
{{ガイナ!そう、ガイナに会わないと、フィールガイナの親だから。守らないと}}
「フィールってお前?親なの?ガイナは毛玉なの?」
{{フィールは、フィールなの。ガイナは人間の男だよ?何言ってるの。当たり前でしょ?}}
「はーー?わからないよ、そんなの言ってなかったじゃん」
{{もういい。でもなんかお前、なんとなくガイナに似ているの、気になる感じなの。だから探そうとしているんだけど、わからないぉ}}
{{ガイナぁ}}
今度は私の足に引っ付いて、ガイナガイナという毛玉。まあ、害はないけど。
つんつんとピコがつついても反応なく、私も少し困る。
どうすればいいんだろうかね、これ。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
新キャラフィールちゃんです。
毎日できるだけ更新中です。よろしくお願いします。




