無人島はお化けと一緒に
その日はよく晴れたパーティ日和だったんだ。
新しい我が国の港ができて、その記念すべき処女航海中にそれは起こってしまった。
私は、この国の第二王子で、まだ13歳ではあるが王族としてこの記念すべき航海のパーティを取り仕切り、堂々と帰国するはずだったのだ。
それなのに急に嵐に遭遇して、気が付くと何やら島に放りだされていた。
そう一人で。
「一人じゃないでしょ?ねー?」
そうして、この島での生活は過酷を極める。なんといっても食糧、水がなく、寝室もない。
虫も多く、
「何してるの。ずっとぶつぶつ。」
波打ち際にはわが船の残骸がうちあげられて、なんだか焦げてもいる。私が離れた後に火事でもあったのか。
「こわ。こわれたん?火事もあったぽかったよ、結構急に火が出ていたし!物騒!」
そういえば、気のせいかもしれないが荒波に落ちた後に兵士たちの叫び声と、金属の音が鳴っていたような。
だがその時、私は必至で溺れないようにもがいて、
「あー、バチャバチャしてたね。すごい顔で」
っっ!
「うっさい!何なのですか、あなたは!」
振り向くとそこにはかわいらしい女の子が、きれいな赤と青の大きな鳥といた。
女の子は長い黒い髪で、瞳の色も黒い。年は私と同じぐらいか多分12.3歳程度の少女。肌は透けるほどの白さというか、透けている。足とかすごく、透けていてくるぶしぐらいから見えない。
比較的綺麗な服をその身にまとってはいるが、それも端の方は半透明になっている。
そのお供のようにいる大きな鳥はきれいな羽だが、顔と足が骨でできており、でもしゃべる。意味が分からない。城での授業では筋肉がないと動物は動けないと教えてもらったし事実であろう、がこの舌がない鳥はしゃべる。
このお化け達は、私が船で嵐にあい、遭難したところを助けてくれた時からの付き合いだ。そう、昨日の話だ。
初めはびっくりしたが、こちらはおぼれているのに、のんきに会話をしている姿を見て怒りがこみあげてくる。
いや、王族はおぼれないけど。少しバシャバシャと必死に泳いでいたが。
「ねー、何してるの?泳げてないよ」
「クーちゃん、潜る?うーん、沈みたいのかな?人間って水の中で生きれたっけ?」
「あ、ほら、横から大きな木がきたよー」
そのとたん、ゴンっと船の破片が当たり一瞬沈みそうになる。衝撃に鼻にも海水が入りツーンとする。
慌ててその木につかまり少し安定ができたが。
「ねー、今度は足元に魚がいるからけらないでね、あ、サメかな?えさ?」
誰が餌だ!私はエサじゃない!
なんて、こちらが大変な時にぺちゃくちゃぺちゃくちゃしゃべり倒す!
お化けだ、幽霊だって驚く暇もなかったわ!
あまりにも腹が立ったし、怖いじゃないか。いや、足元のサメがいて怖いとかそんなことではないが、まあ、腹が立ったので助けろっ!と大声でいうと、少女と鳥は見つめあってそれから鳥が岸まで運んでくれた。
流木ごと力業だが。骨だけなので、どうやって動くかは不明だが、まあ、そんな風に助けられた。
そうして、その日は命からがらこの島に上陸したのだが、嵐は深夜におこったので、島に何かあるかはわからない恐怖がある中、そのまま人生初の野宿を行い、眠りについた。
幸いなことに季節は夏なので野宿でも生きてはいけたが、虫が多くとても不快な夜を過ごした。
朝起きると海水に濡れたままで寝たので、体中がかぴかぴのべたべたして気持ちが悪い。
また、のども乾きおなかもすいていた。
ふと周りを見ると近くに昨日助けてくれたお化けたちはいない。私の気のせいだったのか。
それにしても、体が気持ち悪く真水で洗わないとこの不快感は消せないが、近くに水源はないようだ。
周りを見回すと、波打ち際から白い砂浜が広がるが、その砂浜から少し離れると草木が生い茂っていた。
草木が生えるならば、水もあるだろうと、まず水を探すことにする。
それにしても昨日海水を少し飲んだせいか、本当にのどが渇く乾きすぎでひりひりしてきた。
仕方なく周りの大きな葉っぱについている朝露のしずくをなめてみた。
少し、緑のにおいはするが、ほのかに甘く感じた。だが全身をめぐるほどには到底足らず、余計にのどの渇きを感じたる。
このままでは無事に帰るどころかここで朽ち果てる自信しかないので、疲労のたまった体にむち打ち水源を探すことにした。
波打ち際の反対側には木々が生い茂る豊かな森のなっている。
そこで、森のほうに足を少しずつ踏み入れると、海の塩のにおいから少し濃い森のにおいに変わった。
砂浜よりもっと湿気が強く濃厚な緑のにおいだ。
足元は木々の根っこがうねっており、ところどころ湿度が高いのかコケが生えている為滑りやすい。
というか2.3回こけた。痛い。肩とおしりを打ってしまった。
こんなにケガや痛いことは初めてだ。
少し涙目でなぜこんなことにと、考えてしまった。そして、この年までの勉強や努力は何だったのかとも。
私は、城でぬくぬくと育っていたのかもしれない、と思い起こす。
日々王族としての教育と、社交、マナー、など色々学んで他のものより優秀とおだてられていた子供だったのかもしれない。
だって今、生活に必要な知識は生きるためのもので、どうすればいいかわからないからだ。
くそ、マナーは何の役に立つんだ!生きるために何の役にも立たないじゃないか!
は?なんで、食事の際のスプーンの使い方!ナプキンの折り方など、食事をするにあたって必要なんかかけらほどにもないわ!口と手があれば十分じゃないか!
そもそも食事自体がここにはないけどな!
社交とは?私以外ここにいないのに!何をしろと?教育係のクリス禿親父め!!
心の中で、いい笑顔で過去に私を教育するクリスを思い出し暴言を吐く。リアルではできないけど。
新連載を始めました。
よろしくお願いします。
ゆくゆくは恋愛的にも絡めたいと計画はありますが、まず生き残らねば!です。
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