表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

#8

12場

〇大学内・サークル棟・部室内・夕方

成田・亀井・岩田の三人が部室で話をしている



亀井「美術館で歌川国芳の特別展がやってるじゃん? 行ってきたのよ。で、源頼光が酒吞童子を退治してる絵を見たんだけどさ、ああいう酒吞童子とかの妖怪って、当時の政権に敵対する人たちだったと思うんだわ」

岩田「うん」

亀井「酒吞童子は、酒豪な人物だったんだろうなーとかなんとなくイメージできるんだけどさ、ヤマタノオロチってどういうことなの? 頭が8個あって、尻尾も8個あるってどういう人だったわけ? 普通尻尾は1じゃない?」

成田「その普通はわからないけど」

亀井「(徐々に熱を帯びてくる)あとずっと思ってたんだけどさ、ヤマタノオロチもそう。酒吞童子もそう。お酒をたらふく飲ませて、酔っぱらわせて、動けなくなったところを仕留めてるわけさ。よくこんな非道な武士たちから『やぁやぁ我こそは』なんて名乗りを上げるような、高潔な武士道なるものが生まれたなと」

岩田「その高潔な武士道精神が生まれたのって、江戸時代くらいのことらしいよ。『畜生と言われても、勝つことが大事』的な言葉を残した戦国武将もいるみたいだし」

亀井「(とても興奮した様子で)そんな非道な武士道を、後世に残そうとしていた当時の人々の価値感バグってんのか!?」

成田「武士道ガチ勢いるじゃん」

岩田「こうなると全然話聞いてくれないよね」

亀井「あっついな。なんか冷たいもの飲みたくなってきたわ」

成田「ヒートアップしすぎなんだよ。でも、ちょっとなんか飲みたいねー」

岩田「(成田に向かって)なんか買ってこようか? 私もちょうど喉乾いてたし」

亀井「ほんと!? じゃあ俺コーラで!」


無視をする岩田


亀井「あれ? ちょっと? 聞こえてます?」


亀井、岩田の前で手を振ってみたりする

無視をする岩田


亀井「(成田に向かって)こんなしっかり無視されることある?」

岩田「うそうそ、コーラね。成田君は? カルピス?」

成田「そうだね…カルピ…いや、メロンソーダで!」

岩田「はーい。じゃあちょっと行ってくるね」

成田「ありがとう」


岩田、部室出て、自動販売機へ向かう


成田「あ、ごめん! やっぱりカルピスで!! ってもういない! はや…」

亀井「LINEすれば?」

成田「確かに」


スマホを取り出す成田


亀井「で、この間の女の子とはどこまでいったんだ?」


亀井、成田の横に来る


成田「(動揺して)いやいやいや! そんなんじゃないからほんとに!」

亀井「おーおー動揺しちゃって。ますます怪しいなぁ」

成田「(ますます動揺して)はぁ?いやいや、動揺してないし!!」

亀井「わかりやすいなー」

成田「ほんと違うんだって!」

亀井「(成田と肩を組み)何のために俺がお前に協力してると思ってんだよ。お前の恋を成就させるためだろうが!!」

成田「(亀井を振り払いながら)そうだったの!? てっきり、謎の『神の依代』というワードに歴史ロマンを駆り立てられてるんだと思ってたのに」

亀井「もちろん駆り立てられてないといわれたらウソになる。けど、そんなことよりお前のロマンスに、何よりお前との友情に、俺は駆り立てられているんだ!!」

成田「何を言ってんだか」

自動販売機から飲み物を買って帰ってきた岩田

手にはコーラとメロンソーダ、カルピスを持っている


岩田「お待たせー随分と盛り上がってたみたいだけどどうしたの?」

亀井「聞いてよ! こいつ女が出来たんだってよ!」


あまり表情には出ていないが驚いた様子の岩田


成田「(焦りながら)違うから! まだそんなんじゃないから!」

亀井「 “まだ”だってよ。はっはっは!(岩田に向かって) そうだコーラありがと。いくらだった?」


心ここにあらずな岩田


亀井「岩田?」

岩田「え?」

亀井「いくらだった?」

岩田「あぁ、170円」

亀井「なに?なんかあった?」

岩田「ううん。なんでもない」

成田「あ、しまった! LINEすんの忘れてた! やっぱりカルピスにしようと思ったのに」

岩田「そういうと思って…じゃーん! (カルピスとメロンソーダを成田の前に突き出す)どっちがいい?」

成田「二本とも買ってきてくれたの!?」

岩田「一本は私のだからねー」

亀井「流石。できる女は違うねぇ」

岩田「でしょう? さ、どっちがいい? 私はどっちも好きだから、遠慮せずに。さぁ!」

成田「じゃあ、遠慮なくカルピスいいっすか?」

岩田「どうぞ」

成田「ありがとう! いつも助かってます!」

岩田「いいえー」


強風が吹き、外にある建て看板が倒れ、大きな音がする

大きな音に気が付いた三人、窓から外を覗く


岩田「(窓から外を見ながら)風強くなってきたね…」

成田「(椅子に戻りながら)そういえば明日あたりまた台風が上陸するって言ってたね」

亀井「(椅子に戻りながら)この間来たばっかりなのにな」

岩田「(まだ外を見ている)ね。今回のは、前のよりもさらに勢力が強いらしいよ」

亀井「まじかー」

岩田「(二人に向き直り)これからどんどん強くなっていくだろうし、今日はそろそろ帰ろうか」

成田「え? いま飲み物買ってきてもらったばっかなのに?」

岩田「いいよいいよ。そんなことより帰れなくなったら困るでしょ?」

成田「まあね」

岩田「ということで今日は解散! お疲れさまでしたー」

二人「お疲れさまでしたー」


帰り支度を始める3人


台風情報を伝えるニュース映像

キャスター「今日、高知県の南の海上で台風23号が発生しました。明日にかけて、九州上陸の恐れが非常に高まっています。この後はですね、だんだんと東に進路を変えまして、中国地方でも暴風雨が吹き荒れる予報です。島根県内、連日の台風により災害の危険度が各地高まっている状況です。土砂災害の危険度を見ますと、広い範囲で危険のランクとなっています。また島根県では一部、災害切迫となっていて、すでに土砂災害が発生している可能性が高くなっています。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ