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弓で出す  作者: ICMZ
5/85

武士は食わねど高楊枝

日曜日 1時 ちょいすぎ 新宿  Day1

*************************************

視点変更 斎藤


私はこの時 気づいていなかった

人としていけない事をしていたという事を

ただ 本当に美味しいものを目の前にした場合

理性というものは吹き飛んでしまう

そして通常で気づくべき事も気づかなくなる





給仕  :「熟成肉のステーキです」


そう言われてステーキのプレートが運ばれてくる

でっかいステーキ

サイドにニンジンのグラッセ

そして少量のご飯に緑のハーブが上に乗っている


思わず周りのテーブルからも 「おおお」 と称賛の声が聞こえる


横からは タケシが 鼻から息を吸い 香りを嗅いで

タケシ :「Heavenly」と一言

まさしくその通り 天国のような香り

まるでアートというようなオーラがある

主役感が凄い!

これ本当に凄い!!

目と鼻で十分に楽しんだ後 いざ食べる準備を始める

ナイフを入刀

うわーーー スッと切れた

更に小さく切ってから 口に運ぶ


体に衝撃が走る  


うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん

凄く美味しい!! こんな凄いお肉 食べた事がない!!

周りのテーブルからも感嘆(かんたん)が漏れ聞こえている

これ本当に凄いやつ!!

そしてもう 一口

すごーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい♡

こんなお肉が存在していたなんて!!!   流石ブルジョワ!


口直しの為 ニンジンのグラッセをナイフで切る

こっちも スッと切れた

水っぽくて 甘ったるくて 

本当はニンジンのグラッセあんまり好きじゃないのだけど

これは違う

焦げ目がついてるというか (かす)かにキャラメラーゼされている感じ

見事に口直しの役割を果たしている

そして お肉をもう一口   

あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん

噛まないで口の中で溶けていくように無くなっていく

そして 高級ワインを 一口 あーーーー 幸せ♡


そして ご飯

これって フォークでそのまま食べていいのかな?

それともフォークの背に乗せるのかな?


黒崎さんはフォークの背に乗せてる

川崎さんはフォークで普通に食べている

黒崎さん ダウトーーー   てことで川崎さんのように食べようとしたが

この時 初めて気づいた



会長とタケシがステーキにまったく手を付けていない事に



会長が薄ら笑いを浮かべながらタケシを見ている

そして見られているのを分かっていながら水を飲んで笑みを浮かべているタケシ

。。。この時 人として違和感に気づいているべきだったのだが

生まれて初めて食べる最高級のステーキに夢中であった為

能天気な言葉を発してしまう


斎藤  :「タケシさん 食べないんですか?」


そしたら 私の方をみて ニコッ として


タケシ :「味の方はどうですか?」

斎藤  :「本当に美味しいです」 

会長  :「当然よ 飛騨牛(ひだぎゅう)の牝牛を熟成させたんだから」

タケシ :「流石ですね 

      普通は熟成させるの嫌がられるはずですから」

会長  :「本当に苦労したわよーー」

斎藤  :「熟成って嫌がられるんですか?」

タケシ :「熟成をさせるっていうのは

      数か月掛かって 更に取り高が半分から3分の1になります

      しかも失敗した場合 全てがダメになります

      そのままでもいい肉をリスクを取って

      取り分が減ってまで熟成させたがる業者は無いですからね」

会長  :「でも味は格別に良くなるのよね」

タケシ :「設備と 苗床となる設備の経験及び歴史と

      熟練した技が必要になり

      それが全て揃ってればの話ですけどね。。。通常の場合だと」

会長  :「通常じゃない場合なんであるの?」

タケシ :「個人でやるやり方ですか

      いわゆるメンブレン方法と言えばいいか」

斎藤  :もぐもぐもぐ ごっくん 「なんですかそれ?」

タケシ :「日本だとお刺身用でありますよね?

      お刺身を特殊なラップで包んで浸透圧で水分抜くやり方です

      それの肉版が欧米にあるんですよ

      

      お肉を特殊なラップで包んだ後 冷凍庫に入れれば

      1ヵ月後 黒い塊ができます

      ラップに面していた部分を薄くそぎ落としてやれば

      立派なあずき色と赤色の肉が出来ます

      個人でやるやり方なので 多少 本格的な熟成肉より味は落ちますが

      取れ高が面をそぎ落とすだけでいいので 

      やってる人 結構いますよ 

      まー 失敗して泣いてる人も多いですけど

      でも高いお肉だとやりたがらないですね

      やはり失敗したときのリスクが怖いので」

会長  :「本当に苦労したわよーー」

タケシ :「いやはや 流石です」


そう言いながらタケシは目を(つぶ)って深呼吸

そしてその深呼吸の後 彼はステーキを 一瞥(いちべつ)もしなくなる

黒崎さんはステーキほぼ終了

川崎さんも結構すすんでいる

私もこの味の魔力の虜に

しかもタケシが会長と話していて 会長はじっとタケシにのみ集中

おかげでゆっくりこのステーキを味わえてる


***数分後***

ああーーー これが最後の 一口

あーーーーーん  パク  あーーー 消えてく

幸せの時間が終わってしまう

すごーーく 美味しかった


そして ナイフとフォークを並べてにプレートに置く

そして プレートが回収されていくが


え!! 嘘!!!

会長とタケシの まったく手付かずのプレートも回収されてしまった


会長はフロアチーフを呼んでこそこそ話してたけど


給仕  :「いまデザートをお持ちいたします」


そう言ってプレートが全部片づけられてしまう


満足げな会長が テーブルに座っている人 全員に質問を行う


会長  :「あなた達は普段 どんな本を読んでるの?」

黒崎  :「経済新聞です」

川崎  :「ファッション雑誌です」


そして タケシがニコッとしてくるので 私が先に答える


斎藤  :「本はあまり読まないですね 私も雑誌が多いです」


そして タケシ


タケシ :「私も本はあまり読まないですね」


その答えを聞いたとき会長は ご満悦(まんえつ)だったのだが

次のタケシの 一言でその表情が豹変(ひょうへん)する


タケシ :「シェークスピアは 一通り(たしな)んでます

      ただ冒険心が強かった童心に帰れるヘミングウェイや

      読み直して新たな考え方を得られる

      ハーマン・メルヴィルとか好きです」


会長から笑みが消えて 目を細めている


川崎  :「ハーマン メルヴィルって 白鯨の?」

タケシ :「はい 有名なのは白鯨ですが

      タイピー そしてその続編のオムーとか好きですね

      ただ 一番はバートルビーザスクリブナーですかね」

会長  :「書写人の話よね」

タケシ :「はい

      おーバートルビー おーヒューマニティー

      っていう終わり方が印象的ですね」

会長  :「余り良く理解できなかったのだけど」

タケシ :「まー 思想の変化に着いていけない人間の話ですからね」

川崎  :「思想の変化ですか?」

タケシ :「アメリカ程 思想の変化が激しく又あべこべな国は

      他にないですからね」

斎藤  :「あべこべ?」

タケシ :「例えば イギリスからアメリカに開拓者が来ました

      イギリスでは お金がないので枝で建物を建てていたんですが

      アメリカに来て周りには森があります

      なら わざわざ枝でなくて木で建物を作ろう

      そして建物を作りはじめ 町ができた時

      新しい建築技術としてゴシック型が入ってきます

      いわゆる とげとげの建物に飾り細工の窓ですか

      そして その後にローマン型

      いわゆる丸い形にシンプルな窓のタイプの建物ですか

      大昔にあった建築技術です

      本来ならゴシック型の方が新しくて 難しい技術なのですが

      アメリカの場合 後から入ってきた本来なら古いローマン型を

      最新技術として(この)んで使ってましたし


      思想に関しても日本より進んでいて

      日本より遅れていたりしてますし」

会長  :ワインを 一口飲んでから 「思想について聞かせてくれる?」

タケシ :「アメリカに開拓者が来た当時は 


      神様は絶対的存在であり すべては神様の御心の示すままに


      という考え方だったんですが

      教育 いわゆる読み書きが浸透して行き

      それにつれ聖書が読まれるようになるにつれ

     

      神様はいい行いをする者には祝福を 悪い行いをする者には罰を


      という善悪の考えが広まります

      そしてそれが開拓者の脅威と連動していきます」

川崎  :「脅威ですか?」

タケシ :「開拓者が 一番苦労したのは 自然です

      天気 天候 災害 農作物を食い荒らす動物 人を襲う動物などです

      そして出てきた思想が 日本で浸透しているのと同じ


      自然と共に生きよう


      という考えです


      いい行いをすれば自然も見返りをくれる 


      共存が出来るという思想です」

斎藤  :「それ普通ですよね」

タケシ :「アメリカだと古い考え方です

      ウィンスロー・ホーマーがそれを否定する絵を描いたぐらいです

      彼の絵は

      嵐の中 荒れ狂う海 周りは鮫など 船のマストは折れている

      背後には竜巻 そんな中 無気力に乗っている黒人男性の絵です

      そして新たな思想が始まります 


      善人だろうと悪人だろうと自然は知ったこっちゃない

      雨が降る時は雨が降るし 嵐の時は嵐

      祈ろうが いい行いをしようが関係なし


      いわゆる信仰と自然に対する考え方が決別を告げます

      19世紀のアメリカの油絵の 一つに


      夜の森の前に小さな人影の絵があります

      影の形から子供 そして手には拳銃を持っているとわかります

      教育 大人になるイニシエーションとして

      闇夜の森に一人 銃を片手に挑むといものです


      自然とは共存するものではなく打ち負かすものである

      という思想です


      この考え方は今でも根強く残ってますね

      映画とかで気候変動が起きた場合とか

      どうやって共存していくかではなく

      どうやって自然を打ち負かすか

      生き残るかがメインになってますしね


      そして自然と向かい合うようになってから新たな思想が生まれます


      自然のようにコントロール出来ない物の為 不幸が起きる場合がある

      人生は短い やりたい事をやって生きていくべきである

      いわゆる バートルビーが本の中で実践した生き方です」

会長  :「立派な考えじゃない」

タケシ :「即 時代の流れに淘汰(とうた)されましたけどね」

斎藤  :「時代の流れですか?」

タケシ :「日本人の今の考え方と同じです

      ちょうど産業革命が起きた時期に生まれた思想です


      生きていく為にはお金が必要

      その為 やりたいやりたくないに関わらず仕事をしないといけない


      そんな新たな思想の中に 

      ひと昔前のやりたい事をやる やりたくない事はやらない

      なんて思想の持ち主が生きていける訳ないじゃないですか」

全員  :「。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。」

タケシ :「ちなみに バートルビーっという本の内容

      個人的には日本の太宰治の水仙と

      似ているな―― って思ってますけどね」

川崎  :「水仙ってあの 絵描きの話ですよね?」

タケシ :「はい 才能に嫉妬して いらない発言をしてしまい

      不幸が起きてしまう話です」

会長  :「全然違うじゃない」

タケシ :「え? 似てません?

      主人公の言動により不幸が起きてしまう」

全員  :「。。。。。。。。。。。。。。。。。。」

タケシ :「まー 自分があの主人公なら確実に不幸は回避してますね」


。。。。ちょ なに言いだすのよ このタケシ


会長  :「随分な自信ね?」

タケシ :「それがエンジニアリングです」

全員  :「。。。。。。。。。。。。。」

会長  :「生意気!!」


そして会長が机を叩くと同時に立ち上がる

間髪入れず 即 タケシも立ち上がる

タケシが立ち上がったのを見て また 会長が目を細める


会長  :「斎藤さん 化粧直しに行くわよ」

斎藤  :「。。。。。。ハイ?」


そしたら タケシが椅子を引いて私を立たせて来る 

そして小声で 「頑張ってください」 と言ってくる

え ちょっと 何? 何があるの?

化粧の入ったバッグをもって

会長の後を歩いて一緒にパウダールームに入る いわゆる おトイレ


二人  :「。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。」


バックから口紅を出して 鏡を見ながら塗りながら 会長が話してくる


会長  :「あのタケシって輩 どこで拾ってきたの?」

斎藤  :「中途採用で去年 入ってきたんですけど」

会長  :「中途採用?」

斎藤  :「はい 色々な珍しい資格を持っているとかで

      人事が採用した人間です」

会長  :「それで あのタケシって輩 どこの血筋よ?」

斎藤  :「血筋ですか?」

会長  :「何処のお貴族さまか って聞いてるの」


。。。。え? あいつが貴族

ないない  ないよーー ないわーー

樋口さんも何も言ってなかったし


斎藤  :「いや 普通の家庭のはずですが」

会長  :「は!!!????」


。。。。あ 会長 怒ってる。。。。

どうしよう どうしよう

そういえば あいつ ここに来る車の中で

昔 最前線で働いてたっていってたなー

最前線が何かわからないけど


斎藤  :「あのー 彼 最前線で働いていた経験があるそうです」

会長  :「最前線か。。。。最前線。。。。。なるほど

      でもそれでクラシックマナーあそこまで物に出来る?

      。。。。日本人なのに」


。。。クラシックマナーって何? 聞いていいのだろうか

そしたら会長が話してくる


会長  :「あなた 気づかなかった?

      ひと昔前のマナー

      いわゆる超上流階級のマナー

      今みたいな男女平等ではなく 女性を女性として扱うマナー

      女性を守るために全ての言動を注ぐマナー


      女性が立ち上がったら男性も立ち上がる

      女性より先に座らない

      女性が手をつけるより先に物を食べない


      単純であるがゆえに 出来るか出来ないかが目立つのよねー

      まー おかげで お預けを食らった犬のように

      ステーキに手を付ける事なかったけどね」


そして 会長が にやける。。。。

会長としては悪戯(いたずら)気分なのであろう。。。。が間違いなく悪意がある


え!! ちょっ待って!!

 

ステーキは会長が手を付けなかったからタケシは手を付けなかった

サラダも会長が手を出すまでタケシは手を付けなかった

スープは。。。。。。。私だ タケシを抜かせば私が最後に手を付けた

オードブルも私だ

パンも。。。。私だ


例えどんなに嫌いなものでも必ず 一口食べてくださいね

あいつ エレベーターで言ってた。。。。。。。

そういう意味 。。。。。。え!! ちょっと待って!!

だとしたら あいつ

ステーキを食べなかったんじゃない! 食べれなかったんだ!

食べれなかった人間の横で私 舌鼓(したつづみ)を打ってたって事



その昔 とあるプランテーションの酷い話を聞いた事がある

餓死しそうな人間の前で堂々と物を食べるという行為を行うというもの

。。。。。。。。。。。。。。。。。

権力を見せつけるため必要な行動とのたまわっていたが

そんなことは関係ない

人として最低な行為だと思う

リファレンス ネタ元 雑記 補足 隙あらば自分語り 必要ない裏技 etc

アメリカンアークテクチャー、アメリカンフィロソフィー等で

思想の変遷が学べます

まー 興味があればですけど

建造物 建築物がまったくもって左右対称ではなく

少し変化 煙突や窓の位置等 をつけて建物を建てたりとか

意外と興味深い内容があったりします

よく漫画で立派な城とか立派な屋敷が出てきますけど全く左右対称なんですよねー

欧米では当たり前の常識 

ほんの少し 対称から外れるのが建築技術の美学なんですけど

知らない人が多いんですよねー


絵も平面から油絵の3Dに

戦争の絵では でかいケツをした馬にのって力強さをだす妄想を含めた絵から

年が移るにつれリアルな絵に


そして産業革命で機械だけが描かれて人がいる事は

煙など機会が動作していることで描いている絵や

動物の骨だけを書いた絵 音を描こうとしたり

その時代の思想を表すNighthawkのように

人々が集まっても視線を合わせる事が無い絵など

時代の思想に合わせて絵画も変わっていく

それを数百年という短い期間で行った国がアメリカです


行為を行うというもの 

重複表現ですが 斎藤さんの頭の中での考えなのであえて残してます



自然を打ち負かす映画

Coast is Toastというショーもないダジャレのポスターであるボルケーノって映画

溶岩 あれ実はファーストフードのシェイクに色つけたものらしいです

溶岩が来たぞー 止めろー と言いながら壁でシェイクを止めています

あの映画 必死で溶岩食い止めようとしてましたよね

自然から真向対決する映画です

ダンテズピークと張り合う映画なんですが どっちもどっちでした


邦画だと ジ〇リアニメみたいに自然と共存が多すぎます

ただ例外もあります 

首都消失とかがそのケースですけどね 

気合が入ったB級映画ですか 個人的に大好きです 

燃えたまま飛び続ける飛行機がカッコよかった

お勧めは出来ないですけど


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