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10.天賦の才(ギフト)

 フェブライオ村の神殿はとても小さな神殿だった。だが庭はとても広く、子供達が走り回って遊んでいた。


 神殿は学校を兼ねており、賑やかだった。楽しそうに遊ぶ子供達を見て、大神殿にいる孤児院の子達を思い出した。


 ティティアはよく孤児院に顔を出していた。自分が孤児院出身ということもあるが、子供が好きだったのだ。


「わー! 新しい聖女様だー!」


 1人が気付くと、次々とこちらに気付き近くまで寄ってきた。


(なんで分かるんだろ……ああ、私が人間なのとスピラレさんがいるからか)


「皆さん、初めまして。ティティア・ビアンコです。よろしくね」


 そう微笑んで挨拶をすると、子供達はキラキラとした目でこちらを見てきた。


「新しい聖女様優しい!」

「前の聖女と違う!」

「邪悪聖女と違う!」


(邪悪!?)


「僕達を見て酷い言葉を言ったんだ」


 スピラレの顔を見るとその時のことを思い出したのか、顔を一瞬しかめ、直ぐに笑顔を取り戻した。


「さぁさぁ皆! ティティア様はリネア神官長に用がありますからね。遊んでて下さーい!」


 子供達は元気に「はーい!」と返事をした後、再び遊び始めた。そしてスピラレとティティアも歩き出す。


邪悪聖女(ダニエラ)様のことなんですが、いまだに思い出しては腸が煮えくり返るといいますか……」


「何があったんですか?」

「我々竜人族は、肌に鱗がありますよね? これは年齢を重ねると少なくなるんです。私の鱗よりもウノさんの鱗が少ないのが分かると思います。100歳になる頃には鱗は全部無くなるんです。ウノさんもう少しで100歳ですからねー」


「え!?」

「あ、やっぱり驚かれます? ちょっと老けてますよね、ウノさん。貫禄あるから110歳くらいに見えますよね。ああ見えて93歳なんですよ」


 ティティアは先日読んだ【獣人の国を旅して三千里 竜人族編 ―何故彼らは獣人の中でも特別なのか― トランクウィッロ・フロンテ著】の記憶を呼び起こした。


 竜人族の寿命は人間と違い200年近くあることや、老ける早さも違い、18歳までは人間と同じ早さで老け、そこから途端に遅くなると書いてあったことを思い出した。


(【小難しいことは考えず、見た目の年齢に2倍の数字を足せば竜人族の年齢にだいたい近い】って書いてあったから……うーん。ウノさん50代半ばに見えたから竜人族からしたら100歳超えてるように見えるのかしら。じゃあリーガさんは鱗も無いし50歳くらいに見えたから100歳越え? スピラレさんは20歳くらいに見えるから……)


「スピラレさんは40歳くらいですか?」


「……………………そんなに老けてみえますか?」


(違うの!?!?)


「違っ、違いまして、そのっ――」

「冗談です! 人間から見ると竜人の年齢が分かりにくいのは知ってます! 18歳から50歳位までが分からないらしいですね。私は47歳です! ふふふ、少しだけ若く見えているようで……まぁ、その話は置いといてー、クラノス様は1000年以上生きていますので、鱗は無いんですが、子供達は鱗が多いのが見てわかると思います」


 確かに子供達の鱗の範囲は広い。顔も半分以上が鱗化しているし、服から見える手足にも鱗が見える。


「ダニエラ様は子供達を見て『汚い。近付かないで』と」


 ティティアは絶句した。これは竜人族全てを侮辱する発言だ。


「殴ってしまう所でした。ですが、例え生ゴミでも聖女様ですからね。なんとか思い留まりましたが」


「生ゴっ……いえ、酷すぎますね。子供達にも竜人族にも」


 だんだんと怒りが湧き、そんなことを言われた子供達の心の痛みを思い、目頭が熱くなった。


「……ありがとうございます。やはりティティア様はお優しいですね……はぁ……聖女なんて言う割に中身が酷い人がわりかし多いようで……初代のアストレア様が聖女と呼ばれたからそのまま呼ばれ続けているだけですし、魔力が高いだけのクソおん――……げふっおおっ、げっふっ、んんんんーっ!」


 スピラレは急に咳が止まらないようだ。


「大丈夫ですか?」

「げふっ、げっ、ああー、急に、急に喉がーゲホっ、んんんっ! ふぅ、もう大丈夫です!」

「よ……良かったです」


「まぁ、それで、なんと言いますか、聖女とは名ばかりの魔力が高いだけの女性が多かったんですが、ティティア様は違いますし、何よりあのダニエラ様とすぐ聖女交代をして頂いて感謝してるんですよ、城の皆も。ダニエラ様はああ見えて魔力がとても高かったですし、老婆になるまで交代は無いんだと皆絶望していたのですが、こうしてすぐ交代になったので本当に嬉しいんです。みーんな、ティティア様に感謝してますよー。ざまぁ――げふげふっ、あっ、はい、着きましたね」


 スピラレが扉を叩く。中から40代程の男の竜人が現れた。その男はスピラレの顔を見て、こちらを見るとハッとしたように挨拶をした。


「ようこそいらっしゃいました。お初にお目にかかります、フェブライオ神殿の神官長を務めているアルビコッコ・リネアと申します。と言いましても他に神官が1人、神官見習い1人しかいませんが」


 リネアは手を胸の前に交差させ、お辞儀をした。


「初めまして、リネア神官長。ティティア・ビアンコです。至らない点が多いとは思いますが、よろしくお願いします」


 ティティアもまた、手を胸の前で交差させてお辞儀をした。


「リネア神官長、今回の聖女様はしっかり者なんですよ! 良かったですねー!」

「もしそうなら、ダニエラ様と大違いで助かります」


 心底嬉しそうに言うので、ティティアは苦笑いをするしかなかった。 

 ダニエラの評判はかなり悪い。祈りの間の掃除もしない、祈りもしない、フェブライオ村の神殿にも行かない、いったい何をしていたのか不思議である。


「では、天賦の才(ギフト)の見極めをします。どうぞお入りください」


 リネアに言われ中へと入る。中には50センチメートル程の無色透明の水晶と、その奥に2メートル程の水晶があった。リネアは小さい方の水晶の前に止まった。


「奥にある大きい方が、ここの祈りの水晶です。こちらの小さい方が、天賦の才(ギフト)を見極めることが出来る水晶で、見極めの水晶と呼んでいます――ま、そのままですね。歴代の聖女様全員こちらに触れて、天賦の才(ギフト)を見ています」


 見極めの水晶はここフェブライオ神殿にしかない。なので天賦の才(ギフト)を知ることが出来るのは、聖女になり竜王城へ来てからだった。


「なので、ティティア様にも触れてもらいます」


 神官はお辞儀をして、持っていた本を開いた。


「分かりました」

「では、どうぞ」


 ティティアは1歩前へと出て水晶に触れたが、なんの変化もない。


(……もしかして私には天賦の才(ギフト)が無いのかしら?)


 天賦の才が無い聖女は珍しいことではない。守護結界さえ張ることが出来るのなら、国としても問題は無く、天賦の才が無いからといって聖女から降ろされることもない。前聖女のダニエラも天賦の才(ギフト)はなかった。


(んー、残念……何かあれば面白かったのに……天賦の才(ギフト)が植物成長魔法なら薬草の成長を早めて水薬(ポーション)作成のお手伝いも出来ただろうし……飛行魔法は――高い所が怖いからいいとして……猛獣使い魔法でも良かったな……ありとあらゆるもふもふを堪能出来たのに……)


「残念です。私は天賦の才(ギフト)無しなんですね」


「……え? ダニエラ様から聞いていませんか? 魔力を込めて見極めの水晶に流して下さい」

「えっ」 


(ダニエラ様! 小さすぎる嫌がらせおやめ下さい!)


 引き継ぎの時に教えてもらうことだったのだろう。ダニエラからは一切引き継ぎは無かった。


 ティティアは集中して魔力を込めた。

 すると、見極めの水晶は渦を巻くように光り輝くと墨を垂らしたように上から徐々に黒くなった。


「もう大丈夫です。手を離して下さい」


 リネアにそう言われ手を離した。水晶に金色の文字が浮かび上がる。


【天賦の才 治療魔法 クイント】


 そして文字は揺らめいて消え、見極めの水晶は元の透明になった。


「わぁ! クイントですって!」


 スピラレは興奮して声を上げた。


「クイント?」

「魔法には5段階ランクがあります。下からプリモ、セコンド、テルツォ、クワルト、クイントになりまして、クイントは1番上で珍しいですよ。前に治療魔法が天賦の才(ギフト)だった聖女様は、テルツォでした」


 治療魔法の天賦の才(ギフト)はそこまで珍しくは無いが、ランクが珍しいらしい。


「素敵です! それに治療魔法はとても聖女らしい天賦の才(ギフト)でダニエラ様と大違い!」

「え? ダニエラ様は天賦の才(ギフト)が無いと発表していたはずですが?」

「あー……実は、ダニエラ様の天賦の才(ギフト)は聖女らしくないので、国が非公開にすることにしたんです」


「え!? そんなことあるんですか!?」


「あります。聖女業も印象が大事ですから」

「ダニエラ様は超希少(レア)天賦の才(ギフト)だったのですが……まぁ、印象が悪くて。あっ、でもティティア様は治療魔法でもランクは珍しいですからね! それに今はギヌヘイム帝国に聖女は居ませんから、希少ですよ!」


 聖女によって基本魔法は違う。ここアールヴ連合王国の聖女の基本魔法は守護魔法だが、ギヌヘイム帝国の聖女は治療魔法が基本魔法だった。

 

「治療院を始めますか?」


 リネアが首をかしげ質問した。


「そうですね。出来れば」


 聖女の副業は禁止ではない。むしろ副業しなくては自分で使えるお金が無い。聖女は無給なのだ。天賦の才(ギフト)によって副業は変わる。治療魔法が使える聖女は治療院を開く。


「え!? するんですか!?」

「え? 駄目ですか?」


「副業はお金のない聖女様が自分のお金を作る為なので、ティティア様は心配されなくていいんです。竜王妃様ですから」


「……竜……王……妃?」

「はい」


(私って竜王妃だったの!??!?)


 自覚が無かったが言われてみればそうである。


「そんな、竜王妃だなんて大袈裟な――」

「いえ、ティティア様は竜王妃様ですから、副業はしなくてもいいんです」


「そう……なんですか……でも――」


(でも私は、やりたい。天賦の才(ギフト)が治療魔法なら多くの人を助けたい)


「お金どうこうよりも、人助けがしたいんです」


「……そうですか。そうなると、各国からも要人が来そうですね……あっ、クラノス様から使い方は教わって下さい。それと注意すべき事も。治療院のこともクラノス様と話し合って下さい」


「分かりました」

「もうお帰りになりますか?」

「出来れば子供達と話したいですし、もし良ければ遊びたいなと。授業の様子も見たいんです」


 そう言うとリネアは目を見開く。


「ダニエラ様と全然違う……本当に良かった……午前中も祈りを捧げて頂いたようですし、なんと御礼を言えばいいか……」


 聖女が竜王城にある祈りの間で祈れば、各神殿にある祈りの水晶は光り輝く。祈っているのかいないのか、分かりやすかった。


「ですよねー。本当に、本当に交代して良かったです」

「クラノス様の機嫌がいいのも頷けます。お陰で今年の魔鉱石は豊作でしょうね」


「そりゃあそうですよ! お忘れですか! ティティア様は聖女なだけでなく、クラノス様の番ですよ!」

「そうでした、そうでした」


 2人は楽しそうに話し合い、神殿を出て行こうとする。ティティアはそんな2人の会話を、褒められてこそばゆい気持ちと、ダニエラ下げの会話に気まずさを感じながら歩き、外へと出た。

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