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BLUE TEARS  作者: みゆか
5/9

初デート

あれから4日後、約束の日曜日が来た。

いつか彼女ができてデートする日を夢見て車の免許を取っておいて良かった。今まで彼女がいなくてただ暇だっただけともいうが。それも自分の意思じゃなく哲希に誘われて取りに行った。高1の時からずっとバイトをしてるから金もあったし。

今日は俺の二十歳の誕生日だ...いいことあるに違いない。そう思いつつ俺は緊張しながら待ち合わせ場所にした喫茶店の駐車場へ。車から降りて少し待つと月島さんが来た。

「おはようございます、深水さん」

「おはよう、月島さん」

ウェイトレス姿も可愛いけど水色のワンピース姿の月島さんはとても可愛らしくて、会ってすぐにドキッとさせられた。

今日1日俺は月島さんに何回ドキッとするんだろうか。

「いい天気になって良かったね」

「そうですね。今日はお弁当を作ってきたんです!外で食べれるかなと思って」

そう言って月島さんはお弁当が入ってると思われるバスケットを俺に見せながら微笑んだ。

「本当に?楽しみだな。じゃ早く行こうか」

俺がそう言うと月島さんはうなづいて車に乗り込んだ。

「月島さんは行きたいところある?」

「つきなみだけど動物園はどうですか?」

「いいね!動物園に行こう」

そして俺は動物園に向かって車を走らせた。

「そういえば月島さんってどこの高校に行ってるの?」

俺は運転しながら月島さんを見た。

「隣の区の高校に行ってます。家から近いので自転車で」

「家は喫茶店の近くなの?」

「はい、自転車で5分くらいです。深水さんの家も喫茶店から近いんですか?」

月島さんは俺の顔を覗き込んできた。

「ああ、すぐ近くだよ。哲希とは中学の同級生で、今は大学が違うからあの喫茶店でよく待ち合わせして喋って帰るんだ。いつの間にかそれが当たり前になっちゃってて」

「大学が違うのに仲がいいんですね」

「中学の時にすごく仲が良かったからね。気が合うっていうか。だから今でも俺にとっては欠かせない存在なんだ。でも高校からは俺たちの進む道が違って、哲希はやりたいことを見つけたからそっちに進んだんだよ。俺は哲希と違って未だにやりたいことを見つけられないでいる…何のために大学に行ってるのか自分でも分からないままダラダラと生きてきて。2年後はバイト先のスーパーで正社員になるのかなって漠然と思ってるんだ。何も変わらない生活に嫌気がさすこともなく淡々と生きてきた。俺は何も取り柄がない男だから」

俺は軽く微笑んだ。

「だったら大学に行ってる間にやりたいことを見つけられるといいですね。大学に行ったのはやりたいことを見つける猶予を与えられたってことですよ?その間に深水さんが探す気になればきっと見つかると思います。大学を卒業するまでに見つからなくてもいつかきっと転機に遭遇すると思います。だから諦めないでくださいね」

「月島さん…」

「偉そうなことを言って実は私も深水さんと同じなんですけどね。生きてるうちにきっとやりたいことが見つかると思ってるんです。全身全霊を注ぐ何かに出会えると思ってるから毎日いいことを見つけようと努力してるんです。そのいいことの中に私が生涯自分自身を捧げられるような何かが隠れてると信じて。初めから諦めてたら何も変わりませんよ」

俺は月島さんの言葉に胸を打たれた。

今はやりたいことが見つからなくても諦めずにいつか見つかることを信じてるなんてすごいなと思った。

「待ってるだけじゃ何も変わらないよな。俺は待つって動作で既に諦めモードに入ってた気がする。だから今回は俺から動いたのかもしれないな…君の動きを待って諦めモードになるのが嫌だったから」

そう言って俺は月島さんをまっすぐ見つめた。

「えっ…?あ、深水さん、前見て前!」

月島さんに指をさされて俺は慌ててブレーキを踏んだ。

「はぁ、ダメだな俺…月島さんにカッコ悪いところを見せてばっかりで」

俺はため息をついた。また胃が痛くなりそうだ。

「そんなことないですよ!本当の自分を隠してカッコつけられるよりはずっとかいいです。素の深水さんが見たいです。深水さんのことを…もっと知りたいです。」

「月島さん…俺も月島さんのことをもっと知りたいから誘ったんだ。ゆっくり話がしたいなと思って」

「深水さん…。でも運転中はちょっと危なっかしいので動物園に着いてからゆっくり話しましょう」

月島さんは苦笑いした。

「ははっ…そうだね」

高1の女の子に気を遣ってもらうなんて情けないな、俺って。

俺たちは動物園に着くまでお互い動揺してしまうような話は避けた。俺の集中力が欠けて事故になりかねないので。

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