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BLUE TEARS  作者: みゆか
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デートの約束

次の日、俺は久しぶりに哲希とあの喫茶店で待ち合わせをした。哲希には一言怒ってやりたかったし、もちろん月島さんにも会いたかったから。

「いらっしゃいませ、深水さん」

月島さんが俺の前に水を置いて微笑んだ。

「こんにちは、月島さん。今日はミルクなしの紅茶をお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」

月島さんのウェイトレス姿...しみじみ見ると可愛いな。

「可愛い!なんて思いながらいやらしい目で見てんじゃねーよ、咲夜」

哲希の声でハッと我に返った。

「哲希っ!お前あの子に余計なことを!」

俺の前に座った哲希を睨みつけた。

「ははっ...あの子が咲夜のことを気にしてたからさ。トイレに駆け込んだのを見てからずっと心配してたみてーで。俺1人の時に聞かれたんだ、だから丁寧に教えてあげたんだよ。本当に余計なことだったか?」

哲希はテーブルに頬杖をついてニッと笑った。

「うっ...話す手間は省けたけど俺の許可なく勝手に話すなよ、恥ずかしいだろ」

哲希を見て口を尖らせた。

「お待たせしました。あっ瀬戸さん、先日はどうもありがとうございました」

月島さんは俺の前に紅茶を置いてから哲希を見て頭を下げた。

「どういたしまして。心配事はなくなった?」

哲希は頬杖をついたまま月島さんを見上げた。

「おかげさまで深水さんに会いに行くことができました。瀬戸さんは何か飲みますか?」

「いや、今日はすぐに出かけるから」

「そうですか。ではゆっくりしていってくださいね」

月島さんは俺たちに微笑んで戻っていった。

「あの子の笑顔が見れて良かったじゃないか、咲夜」

「まぁね...俺がしばらく喫茶店に行かなかったことをそんなに心配してくれてたとは思わなかった」

そう言って俺は紅茶を飲んだ。

「完全に咲夜のことが気になってるって感じだよな。大学まで1人で会いに行ったんだろ?すごいよな、会えるかどうか分からないのにさ」

「そうだね...」

俺は月島さんの後ろ姿を見つめた。

「普通の高校生なのに好きな人とかいないのかな?まさか咲夜のことが気になっちゃうなんてさ」

「どういう意味だよ?」

俺は哲希を睨みつけた。

「何の取り柄もないただの大学生なのに、ってこと。気は弱いし牛乳嫌いで一口飲んだだけで吐いちゃうような男だし。カッコいいのは、顔だけじゃないか」

「悪かったな、何の取り柄もなくて」

「悔しいんだよ!俺なんて彼女が欲しくて愛想を振りまいてるのに誰1人引っかかってくれなくて。女の子にさほど興味のない咲夜にはちゃんと好きになってくれる子が現れてさ。俺もボーッとしてた方がいいのかな」

「下手な鉄砲数打ちゃ当たるって?愛想を振りまきすぎて本命だと思ってくれないんだよ、きっと。明るいけど軽いからなぁ、哲希は。でも俺は別にボーッとしてたわけじゃないけど」

俺は口を尖らせた。

「とにかく咲夜はせっかくのチャンスを逃すなよな!咲夜のことを好きになってくれる子なんてもう二度と現れないかもしれないんだからさ」

「その言葉そっくりそのまま哲希に返すよっ」

「ははっ、じゃまたな咲夜。俺は今からデートなんだ」

「遊んでばっかじゃなくてバイトもしろよな!」

「分かってるって、じゃーな」

その軽い返事がダメなんだよ…と思いながら哲希を見送り紅茶を飲んだ。

その時、月島さんと目が合って微笑んでくれた。

俺のことを気にしてくれてる...?そんなの哲希が勝手に言ってるだけだろ。俺なんて好きになってもらえる要素はないし喋ったのも昨日が初めてで。昨日の学園祭だって暗闇でつまづいたりジュースをこぼしたりドジなところばっかりでカッコいいところなんてひとつも見せられなかったのに。

精神的に胃が痛くなって今日喫茶店に行くのも本当はやめようかなと思ってたくらい。会いたくなかったって言ったら嘘になるけど。

本当に俺のことを気にしてくれてるの?俺は君の気持ちが知りたいよ...俺だって君のことが気になるから。

「お水のお代わりはいかがですか?」

「月島さん!ちょうど良かった。聞きたいことがあるんだけど」

俺は顔を上げて月島さんを見た。

「えっ...何ですか?」

「今週の日曜日は何か予定ある?」

今週の日曜日、実は俺の誕生日なんだ...別に月島さんに二十歳の誕生日を祝って欲しいわけじゃないけどその日は俺にとって特別だから一緒にいたいと思ったんだ。

「日曜日ですか?特に予定はないですけど」

「本当に?じゃどこかに遊びに行こう」

「あ、はい...いいですよ」

月島さんは俺を見てうなづいた。


日曜日を楽しみにして俺は喫茶店を出た。

俺の心の中は月島さんでいっぱいになりつつある。出会ってまだ1ヶ月でお互いのことはよく知らないけど会うたびに好きになっていく...こんな気持ち初めてだ。それにまさか俺が月島さんをデートに誘うなんて自分でもびっくりだ。

月島さんはまだ高校1年生なのに。

まだ俺のことが好きだと言われてないし、付き合ってもいないし、俺の気持ちも定かではない。

とにかく早く日曜日になって欲しい...この胸のモヤモヤをどうにかしたい。考えれば考えるほど胃が痛くなりそうだ...本当に俺って弱いなぁ。

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