ミルクティーは…
「おーっす咲夜。今日もまた紅茶王子か?」
待ち合わせをしてた瀬戸哲希が俺の前に座ってきた。哲希とは同じ大学だ。
「あ、ああ...遅かったじゃないか」
俺は固まりながらも目だけ動かして哲希を見た。
「わりぃ、わりぃ。今日は珍しくミルクティーなのか?って咲夜はミルクティー飲めたっけ?」
俺は慌てて哲希の口を手で押さえた。
「よ、余計な事を言うなよ...今日からバイトに入った子が俺の注文を聞き間違えたんだ」
「聞き間違えたバイトの子って女の子だろ?優しいな、咲夜は」
哲希は俺の手を口から外してニッと笑った。
「うるさい!初日から怒られたらヘコむだろ?俺...ミルクティーも飲んでみたかったし」
「声がうわずってるぜ、咲夜。ミルクティーどころか牛乳を見ただけで逃げて行くくせに」
「今でも逃げ出したいよ。でも俺がこれでいいって言ったんだから仕方ない」
俺は震える手でティーカップに指をかけた。
「無理しなくてもいいのに。ホント女の子には優しいんだから、咲夜は。でもいまいちモテないのはその気の弱さかな」
哲希は俺の目の前でため息をついた。
「うるさい...俺の事はほっといてくれ」
俺は哲希から目を逸らして勇気を出してミルクティーをすすった。
「うっ...!」
「だ、大丈夫か?咲夜」
心配顔で俺を見つめる哲希を置いて、口を押さえたままトイレに駆け込んだ。
やっぱりダメだ...俺、牛乳だけは好きになれない。大好きな紅茶でも牛乳が入ってたらダメなんだ。
情けないなぁ、俺って。牛乳アレルギーの方が良かった。
そう思いながら俺は口をゆすぎ、蒼い顔をしてトイレから出た。
「咲夜!心配しなくてもミルクティーは俺が全部飲んでおいたから。そしたらオーダーを間違えたその子にも悪くないだろ?」
そう言って哲希は片目を閉じた。
「サンキュ...」
あれから俺は家に帰ってすぐに寝た。
次の日からは、またミルクティーが来るかもしれないと思うと怖くて俺はしばらく喫茶店に近寄らなかった。牛乳が嫌いだし飲むと腹を壊すという昔からの固定観念のせいで体調を崩していたのもあって。
全ては俺の気の弱さが原因かも。