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身体作り

 皆さんどうもガクーンです。

 3話目……。早く戦闘シーンに移りたいです。

 では、お楽しみください。

「よし! まずは体力作りからだ!」

 マインは朝早くから運動しやすい服装に着替え、家の庭で空を見上げていた。


 久しぶりに外に出たな……


 久しぶりの外の景色に見惚れたのか家の周りをぐるぐると歩き回り、肺いっぱいに深呼吸をする。ある程度満足したのか、両手で頬を叩くと、突然手を組んで前に後ろに体を倒したり、地面に座ってつま先を掴んだりと、色々な方法で体をほぐし始めた。


『何をするつもりだ?』

 パーシヴァルは剣としてではなくネックレスとしてマインに首から掛けられていた。


「まずは走り込み。村一周すると大体5㎞位あるから、どれだけ体力が持つか走ってみる」

 そう言って、その場で数度跳ねるとマインはゆっくりと走り始めた。



 はぁはぁはぁ……


 辛そうな息遣いが聞こえる。マインが走り始めて2㎞に達した所だろうか。初めは意気揚々としながら周りの景色を見る余裕もあったマインだったが、段々と表情に疲れが見え始め、今では肩で息をするほどにまでになっていた。


 きつい……。最初は余裕だと思ってたが徐々に脇腹が痛みを訴え始めるし、思うように足は動かないし、何と言っても左腕が邪魔だ。


 前世のマインは左腕を早くから戦争で無くし、同時期に左目も負傷して見えなくなった。そのことで大いに苦しんだマインだったが、不幸中の幸いにも両足と右腕は何ともなかったため、継続して傭兵稼業を続けた。

 最初の数年は隻眼の片腕無しというハンデを背負いながら死に物狂いで稼業をこなしていたが、人間と言うのは慣れるのも早いもので、いつの間にかハンデを感じさせない強さにまで成長を遂げていった。

 そのため前世では左腕が無い状態が普通だったマインとって、突然左腕が使えると言われても困惑するのは当たり前だろう。


 くそっ。左腕がある走りがここまで辛いものだとは夢にも思わなかったぜ。だが、両目が見えるってことを考えたらおつりが帰ってくるほどの有難い事なのかもな。


『主よ。流石に体力が無さすぎるのでは……』


「そんなの……はぁはぁ、俺が一番……はぁ、分かってるよ!」


 大体、記憶が戻ったのが昨日だぜ? それまではただの12歳の子供だったんだ。しかも、僕の体は他の子と比べてもふくよかで……。


 マインの体は他の子供と比べて一瞬で見分けがつく程に大きい。それは横にしてもそうだが、縦にしてもそうだ。現時点でのマインの身長は優に160cmを超え、もうそろそろ170cmに届きそうな所まで成長している。

 最近の子供達の間ではマインの事をオークと言って馬鹿にする者もいたが、マインは外に出ることはおろか、庭に出ることさえも怪しいような子供だったため、その事実を知りはしない。

 毎日寝て起きては家にある本を読み漁り、食事では大人以上の量を食べ、運動なんてもってのほか。そんな生活をしていればこんな体にもなる。


『デブの間違いでは……』

 二人に気まずい空気が流れる。


「あぁそうだよ! 僕はデブさ! 毎日……はぁ、ご飯を4杯……はぁはぁ、食べるほど……にはな!」

 本当は朝昼晩5杯以上、食べていたが誤魔化すマイン。


 だってしょうがないじゃんか! 母さんの飯がうますぎるんだもん! 


『ペースが落ちてるぞ主よ』


「ちょっ! くそー!」


 パーシヴァルに指摘されたマインは負けじとペースを上げ、歪なフォームで残りの距離を走り抜けていった。



 ぜはぁ、ぜはぁ、ぐぇっ。ぜはぁ……


 今までに聞いたことがないような荒げた呼吸音。途中途中に聞こえる嗚咽。


 ヤバイ! もう死ぬ! グレスコ要塞攻略の時に一晩中走り続けたが、あの時よりも辛い!


 地面に寝そべり、全身で呼吸してるかのように全身を大きく収縮させ、至る所から汗を滝のように流していたのは紛れもない……マインであった。


『主よ。次は何を……』


 鬼かお前は! 少しは休憩させろ!


『むむ、何を言う。あんな低俗な者たちと一緒にするでない』


 別にお前を鬼と言ってる訳じゃ……いや、そう言ったんだけども……。


 皮肉が聞かない剣相手に、疲れさえも感じるマインであったが、この会話中にある事に気づく。


 そう言えば、俺の心の声……聞こえるんだな。


『当たり前だ』


 何だよ! 初めからそう言ってくれよ。


『別に聞かれなかったからな』


 そうだけど……。本当に融通が利かない奴だな。


 その時、マインにある不安が頭をよぎった。


 もしかして……心の声が丸聞こえってことは……俺とお前の間で隠し事出来ない?


『それは大丈夫だ。主が我に語り掛けている時は聞こえるが、そうでない時は聞こえない様になっている』


 それを聞けて安心したマインが大きく息を吐く。


「ふぅー、安心した」


 徐々に落ち着きを取り戻してきたマインはゆっくりと起き上がると、庭の端へと移動する。

 庭の端っこには小さな畑が広がっており、周囲には畑を囲うように大小様々な石が所狭しと並べられていた。そこへマインは目当ての物を見つけると、それを手に取る。


『そんな物を持ち上げてどうする気だ?』


「これは……こうするのさ」

 マインが手にしたのは片手で持ち上げられるほどの大きな石であった。

 

 その石を両手に持ったマインは、ゆっくりと石を自身の頭の上まで持ち上げると、次はゆっくりと腰まで石を下げる。それを何度も繰り返し始めた。


『なるほど。腕の鍛えるのだな』


 正解。本当はもっとちゃんとした奴があれば良かったんだが、生憎この家には無いからな。ならこの中で持ちやすそうで丁度いい重さのこの石でも十分だろう。


 他にも手を前に突き出し、地面と平行に真横まで移動させる運動や、石を持ってスクワットを行うなど様々なトレーニングをこなしていく。


「はぁー! ワンセット目終了」

 またもや地面へ倒れ込むマイン。

 

 腕の筋肉がピクッ、ピクッと痙攣しているのを横目に少しの休憩を挟み、もう一度同じメニューをこなしていく。


 初めは静かだったパーシヴァルだが……


『先ほどよりも腕が上がってないぞ!』『さあもう一度だ!』『まだまだこれからだ!』


 筋トレに熱が入った様で、口を挟み始める。

 我慢していたマインだったが……


『もっとだ! もっと上げろ!』


 とうとう我慢の限界が来たらしく。


「あーもう! うるさい! 少しは黙っていてくれ」

 そう言って、パーシヴァルのネックレスを外す。


 ふぅ。これでうるさい奴が消えたな。


 口を挟む奴がいなくなったことをいい事に、更に黙々とトレーニングを始めるマインであった。



「やっと終わった……」

 2セット目を終えたマインは体の疲れを取るように芝生へ寝ころんでいた。


 あっ、パーシヴァル……


 畑にある柵に掛けておいたパーシヴァルの存在に気が付くと慌てて取りに戻るマイン。


『我の事なんか……』

 

 声で分かるほど拗ねてた……


 分かりやすいほど拗ねているパーシヴァルを横目にどうしようか悩んでいると。


『むっ? 主よ。この村に似つかわしくない強さを持つ者が近づいてくるぞ』

 突然パーシヴァルが反応を見せる。


 その時、やけに村の入り口が騒がしくなってきたのを感じ取るマイン。

 何が起きているのかを確認する為、騒がしい方角を遠目で見る。


 あの場所は……


 村人が村の入口となっている正門へ集まり始めている事に気づく。


 あれは……武装した集団!?

 

 突然襲来した得体の知れない集団。


「パーシヴァル」


『分かっている』


 二人は無言で頷き合うと、村人が集まる場所へと移動を開始した。

 お読みいただきありがとうございました。

 この話が良いなと思っていただけたら、高評価等をしてもらえると嬉しいです。

 また次回にお会いしましょう。

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